「ごちそうさま」は「心からのもてなし」を表す言葉です。相手に対し感謝を示し、すべての食べ物に対してありがたいという気持ちを表すためのマナーでもあります。
ここでは、普段は当たり前のように使っている「ごちそうさま」の意味や語源、使い方や返事の仕方、また英語フレーズなどについて紹介します。
「ごちそうさま」の意味と語源とは?
「ごちそうさま」の意味は「心からのもてなし」
「ごちそうさま」とは、心を込めたもてなしや、食事を作るために使用する作物や魚介類、野菜などの「食物への感謝の気持ち」を表す言葉です。また「ごちそうさま」を漢字で表すと「御馳走様」となります。
「ごちそうさま」の語源は漢語の「馬で走り回る」
「ごちそうさま」の意味と語源には深い関係があります。もともと「ごちそうさま」の「ちそう(馳走)」は、漢語で「奔走する」「馬で走り回る」という意味があり、「史記」などで使われていた古い言葉です。
この「馳走」が日本に渡り、のちに「世話をするために駆け回ること」「面倒を見るために奔走すること」という意味で使われるようになりました。
その後「食事などの準備で忙しくする」という意味に発展し、「心からのもてなし」や「美味しい食物」などの意味として使われるようになりました。
「ごちそうさま」は感謝の気持ちを表す挨拶言葉
「ごちそうさま」は漢字で「御馳走様」と表記します。上記の語源でご説明しましたが、「馳走」に丁寧語の「御」を付けるのは、相手に対して感謝の気持ちを表す意図があります。食事の準備をするために奔走し、忙しく走り回ってくれたことへの「謝意や有難さ」を表すためです。
また、最後に接尾語の「様」をつけるのは、日本固有の定型的な挨拶言葉として確立させるためだと考えられています。
「ごちそうさま」という表現自体が実際に使われるようになったのは、中世期末以降ですが、すでに1800年初頭に書かれた「浮世風呂」で「御馳走さま」という表現が使われています。
「ごちそうま」に対して「いただきます」がある
「ごちそうさま」は食後に言う挨拶言葉ですが、それに対して食前に言う言葉が「いただきます」です。こちらも、食べ物や作ってくれた人に対して「感謝の気持ちを表す」言葉となります。
魚介類や肉類などはもちろん、野菜や果物などの全ての食物には命が宿っているとされています。その食物一つ一つに対して「あなたの命を、私の命へと代えさせていただきます」という意味が込められています。
つまり、食事をいただくことで、生きていくためのエネルギーや栄養をいただきます、という感謝の気持ちを込めて放つ言葉でもあるのです。
そして、食べ物それぞれへの感謝の気持ちの他、食事を作ってくれた人、そのための食材を育ててくれた人に対し「時間や労力を使ってくれたこと」を感謝する意図も込められています。食事の前には「いただきます」の心も忘れずに、また言葉として相手に伝えるように心がけましょう。
「ごちそうさまでした」の使い方は?
「ごちそうさまでした」を食後のマナーとして使う
「ごちそうさまでした」は家族との食事だけではなく、職場の上司や同僚などと食事に行き、ごちそうになった時にも「お礼」の一言として忘れないようにしましょう。
また、当日に「ごちそうさま」を伝えることができなかった場合は、翌日に直接相手に伝えるように心がけるべきです。会えない場合はメールで伝えるようにしましょう。
食事をごちそうになった時「ごちそうさまでした」を、言うか言わないかで、相手に与える印象は大きく異なります。相手に失礼にならないということも当然ですが、社会人としてマナーを心得てないと解釈されてしいまい、場合によっては評価が下がってしまうこともあります。
「ごちそうさまでした」を「勉強になりました」という意味で使う
「ごちそうさまでした」の一風変わった使い方に「勉強になりました」という意味で用いる使い方があります。これには「色々と教えていただき、お腹がいっぱいです」という気持ちを「ごちそうさまでした」になぞらえた使い方です。
たとえば、先輩から苦労話を聞いたり、上司から仕事のコツなどを伝授してもらった時に、「勉強になりました」「参考になりました」というニュアンスで使います。
「ごちそうさまでした」を相手への皮肉を込めて使う
「ごちそうさまでした」は相手の自慢や自惚れなとに対し、皮肉めいたニュアンスで使うことがあります。これは「自慢話や思いあがった話を散々聞かされて、お腹がいっぱいになりました」ということを「ごちそうさま」にたとえた使い方です。
ただし、この使い方は相手に当てつけのように響くことがあるため、距離の近い相手に使うのが安全圏です。上司や目上の人でも使うことはできますが、ジョークが通じる相手のなのかを確認してからにしましょう。
「ごちそうさま」に対する返事の仕方とは?
「お口に合いましたか?」
「ごちそうさま」という食後の挨拶に対して、受け手としての適切なフレーズの一つに「お口に合いましたか?」があります。
そもそも「口に合う」とは、食べ物や飲み物の好みが趣向に合っていること、また美味しいと感じることを意味します。つまり「お口に合いましたか?」は「喜んで美味しく食べていただけましたか?」という意味です。
人によって食べ物や飲み物の好みは異なります。同じように、パスタ料理や魚料理、肉料理などを例に挙げても、味付けや使う具材などは、作り手によってさまざまです。
相手が「ごちそうさま」と、食事に使った食材や作り手に対し、感謝の気持ちを伝えてくれています。それに対して「喜んで美味しく食べてもらったか」を、「お口に合いましたか?」という丁寧な表現を用いて聞いてみましょう。
「喜んでいただいて光栄です」
「喜んでいただいて光栄です」も「ごちそうさま」に対して、食事の作り手が感謝の気持ちを持って返すフレーズです。「ごちそうさま、美味しかったです」と言ってくれた相手に対し「喜んでいただいて光栄です」という喜びの心を表現しましょう。
「喜んでいただいて光栄です」の「光栄」とは、「自分の行動や活動にに対し、良い評価をもらったり、褒めてもらうことを名誉に思う気持ち」を意味します。つまり「光栄です」という言葉を使うことで、相手に対しての敬意を表すこともできます。
「ごちそうさま」の外国語表現とは?
「ごちそうさま」の英語は「It was good」
「ごちそうさま」は日本語独特の挨拶言葉ですが、英語でも、それに代わるフレーズがいくつかあります。中でも最もポピュラーなのが「It was good(美味しかったです)」ですが「good」の部分を代えて「It was nice」「It was great」などにしても良いでしょう。
「ごちそうさま」のその他の言い回し
- It was awsome(本当に素晴らしかったです)
- It was appetizing(美味しかったです)
- It was mouth-watering(感動するくらい美味しかったです)
ちなみに、食事を作る側が「どうぞ、召し上がれ」という意味で使うフレーズは「dig in(召し上がれ)」や「enjoy(楽しんで下さい)」があります。
「ごちそうさま」の中国語は「我吃饱了」など
「ごちそうさま」を中国語で直接表す言葉はありませんが、それに代わる言葉と使うのが「お腹が一杯です」「もう、食べられません」という意味の「我吃饱了(ウォ チー バオ ラ)」や「我已经吃饱了(ウォ イー ジン チー バオ ラ)」です。
「ごちそうさま」の韓国語は「잘 먹었습니다」
「ごちそうさま」を韓国語で言うと「잘 먹었습니다(チャルモゴッスンミダ)」となります。こちらも「ごちそうさま」と同じようなニュアンスで、料理を作ってくれた人や、もてなしをほどこしてくれた相手に対して使う定型的な言い回しです。
その他、友人や同僚など、親しい人に対しては「チャルモゴッソ(잘 먹었어요)」、また年下や友達に対して「チャルモゴッソ(잘 먹었어)」なども使うことができます。
「ごちそうさま」のスペイン語は「Todo bien」など
スペイン語で「ごちそうさま」は「Todo bien」や「Gracias por cocinar」となります。家庭で使う他、レストランやカフェなどで食事の感想を聞かれた時に、食後のマナーとして使われる表現でもあります。
その他「Ha sido muy rico」なども、「食事を美味しくいただき、感謝します」というニュアンスで使われます。こちらも、食後に感謝の気持ちを込めて放つ定型的なフレーズです。
まとめ
「ごちそうさま」は、漢語で「馬で走り回る」「奔走する」という意味を持つ「馳走」が語源で、食事を作るための具材や材料、そして食事の作り手に対して感謝の意を込めて放たれる挨拶言葉の一つです。
いずれにしても、食事を介し「食事をいただく側」と「食事を作る側」のコミュニケーションは大切だと言えます。食材への有難みや、料理を作る側への感謝の気持ちを忘れず、「ごちそうさま」の心を伝えましょう。