「ともすれば」は「可能性がある」「場合によっては」などの意味があり、古語としても昔から使われている表現です。文法的には接続の副詞で、現代でもビジネスから日常生活まで幅広く使われています。
ここでは「ともすれば」の意味の他、使い方と例文、類語、英語フレーズをわかりやすく解説します。また似た表現の「ややもすると」の違いも紹介しましょう。
「ともすれば」の意味とは?
「ともすれば」は「可能性」を示唆する言葉
「ともすれば」は「かもしれない」「ひょっとすると」といった「可能性」を示唆する言葉です。主に前文と後続する文章をつなぐための「接続の副詞」として使われます。本来の意味は「とかくそのような状況になる傾向がある」「場合によってはそのようなことになる」となります。
「ともすれば」は古語・大和言葉の一つ
「ともすれば」は「竹取物語」をはじめ「源氏物語」や「山家集」などで使われている「古語」または「大和言葉」の一つです。「ともすれば」が古めかしい響きを持つのは、平安時代から使われている古語だからでしょう。下記で古文の引用を2つ紹介します。
「おくと見るほどぞはかなきともすれば風にみだるる萩のうは露」
紫式部「源氏物語」より
「ともすれば月すむ空にあくがるる心の果てを知るよしもがな」
西行「山家集」より
「ともすれば」をやわらかくした表現が「ともすると」
「ともすると」は「ともすれば」と同じ意味を持つ言い回しです。語尾を「すれば」から「すると」に代えた表現ですが、「ともすると」の方が、聞き手にとってやわらかく響くことがあります。
「ともすれば」と「ともすると」は基本的に同義語ですので、聞き手の立場や状況などによって上手に使い分けをしてみてください。
「ともすれば」の使い方と例文
「ともすれば…になる」が文法上の基本的な使い方
「ともすれば」は、基本的に「ともすれば…になる」「ともすれば…という結果になりかねない」といように、物事に対する可能性を述べる文章の前に置きます。つまり、もともと状況や事柄を表す文章があり、それに対して考えられる予想を表現する時に、その前に、接続の副詞として用いるのが通常です。
- 不参加者がすでに出ている。ともすれば、イベントが中止になることも考えらえる。
文法的には、事柄を示す文章の次に接続語「ともすれば」を置き、最後に見解や可能性を示す文章がくる、といった流れです。そのため、いきなり頭から「ともすれば」を使うことは文法的には適切ではありません。
「ともすれば」は根拠と見解をつなぐ意図で使われる
「ともすれば」は、過去や現在の動向や状況から予想できる「可能性」を意味する言葉です。そのため、トラブル回避や解決策などを練るシーンなどで、自分なりの見解や予想などについて「ともすれば」を使って説明することもできます。
たとえば、社内ミーティングの際に、過去6か月の売り上げ動向を引き合いに出した上で「ともすれば」を使って、今月の売り上げ予想を語ることもできるでしょう。このように「ともすれば」は、根拠と見解をつなげる意図で使われます。
- 過去6か月の売り上げは下降線をたどる一方だ。ともすれば、打開策が必要となる。
「ともすれば」はネガティブなニュアンスでも使われる
「ともすれば」は、ポジティブな内容に対してだけでなく、場合によってはネガティブなニュアンスで使われることも多くあります。
「ともすれば」には「場合によっては」や「状況によっては」という意味もあるため、「…という結果になりかねない」「…してしまいがちである」といった、良くないことへの可能性を示すときに用いられることがあります。
- 彼は今日も無断欠勤をした。ともすれば、この先解雇という結果にもなりかねない。
「ともすれば」と「ややもすれば」の違い
「ややもすれば」は「何もしないでいると、別の状況になる」
「ややもすれば」はとかくある状況になりがちなことを表し、意味の上では「どうかすると」「ともすると」といったニュアンスで使われます。
「ややもすれば」は漢字で「動もすれば」となります。もともと「何もしないでそのままでいると、ある別の状況になる」という意味があり、物事を放置することによって、ある状態へと動いていくという言ったニュアンスを持つ言葉です。
「悪いことが起きる」と危惧する気持ちが深い
「ともすれば」より「ややもすれば」の方が、起こってほしくない事柄や、悪いことが起きてしまうと危惧する気持ちがより深いと言えます。また、そうなる傾向がより強く、起こりうる可能性が高いのも「ともすれば」ではなく「ややもすれば」となります。
- 社会人になったばかりの頃は、ややもすれば必要以上に無理をしがちでなる。
「ともすれば」の類語とは?
「ともすれば」の類語1「そうなると」
「そうなると」は、前述した内容を受けて「結果としてこうなるだろう」といった意味合いで用いられる副詞です。「そうなると」は、前述した内容を根拠として、どのような事が起こるのか、また結果的にどのような状況になるのかを述べるときに使われます。
「ともすれば」と似たようなニュアンスがあるため、言い換えができる類語として幅広く活用できます。
- 昨年家を購入したばかりだ。そうなると、家計も頻拍しているはずだ。
「ともすれば」の類語2「もしかしたら」
「もしかしたら」は、ある事柄に対して疑いの念を含む推定の言葉です。そのため、内容に対して、可能性はありながらも疑わしい気持ちを強調したい時に使われます。
「もしかしたら」は「疑念」が強い言葉であるため、ネガティブな内容に対して用いられることもありますが「可能性」を全体的な意味とする「ともすれば」とはニュアンスや使い方がやや異なります。「ひょっとしたら」も「もしかしたら」と同じような意味を持つ言葉です。
「ともすれば」を英語で表すと?
「ともすれば」を表す副詞は「maybe」「probably」
「ともすれば」を厳密に表す単語はありませんが、「可能性」を意味する副詞としては「maybe」や「probably」などが挙げられます。「maybe」と「probably」には「おそらく」「たぶん」といった意味がありますが、実現への可能性が確率的に高いのは「probably」より「maybe」の方です。
- My plane is delayed due to typhoon. It will probably be called off.
台風で飛行機の出発が遅れているが、ともすれば飛ばないかもしれない。
「ともすれば」を表す動詞は「might」「may」
可能性を示す英語の動詞は「maight」や「may」です。「おそらく…だろう」「たぶん…である」という意味で広く使われます。
- My boss left the company. I may be getting promoted then.
上司が突然会社を辞めた。ともすれば、私が昇格する可能性もあるだろう。
まとめ
「ともすれば」は「可能性」を表す言葉で「ひょっとして」「かもしれない」「場合によっては」と言った意味を持つ言葉です。源氏物語や山家集などの名作で使われている古語であるせいか、語勢に古めかしい印象があるのが特徴です。
「ともすれば」は良いことや肯定的な内容に対してだけではなく、ネガティブな内容に対しても使われます。そのため、ビジネスでトラブル回避や解決策を検討するシーンで活用できます。