「意趣返し」とは、一般的に「仕返し」や「恨みをはらす」という意味で使われます。まれに「皮肉」といったようなニュアンスでも使われることもあるようですが、使い方としては正しいのでしょうか?ここでは「意趣返し」の意味と語源の他、使い方とその例文、類語と英語フレーズについて解説します。
「意趣返し」の意味と語源とは?
「意趣返し」の意味は「恨みを晴らすこと」
「意趣返し」とは「恨みを晴らすこと」を意味します。つまり、過去に起こった出来事に対する仕返しや、積年の恨みに対する復習を「意趣返し」といいます。
もともと「意趣」とは、人を恨むこと、そして人への憎悪を表す言葉です。その「意趣」に、思いや感情などを当て返す、叩きつけるという意味の「返し」が付いた言葉が「意趣返し」です。
「意趣返し」の語源は中国語「心の趣き」
「意趣返し」は中国語の「意」と「趣」それぞれの意味が語源とされています。そもそも中国語で「意」は「心の」、また「趣」には「おもむき」という意味があります。その後、日本に伝わり意味が転じ「心の中の不平や不満、恨みやつらみ」という意味で使われるようになりました。
現代の日本において、「意趣」は「心中の不満や恨み」という意味の他に、「心がおもむくところ」「考え」「言わんとすること」、また「理由」「事情」などの意味で使われています。しかし「意趣返し」で使われている意味は「恨みや遺恨」となりますので、誤って解釈をしてしまわないように気をつけましょう。
「意趣返し」の使い方と例文
「意趣返し」を「皮肉」の意味で使うのは誤用
「意趣返し」の誤用で最も多いのは、「皮肉」や「嫌味」という意味で使ってしまうことです。誤って「意趣返し」の意味を解釈してしまっている理由のひとつに、「意趣返し」をする主なシチュエーションが「皮肉的な状況である」ということが考えられます。
「意趣返し」とは「つもりに積もった恨みや怨念をはらすこと」ですが、その仕返しの仕方がネチネチとして、皮肉めいたものであることが原因だと言えます。たとえ皮肉の込められたものでも、あくまで「意趣返し」の軸となる意味は「仕返し」や「報復」です。
「意趣返し」は冷やかしという意味で使うことも
現代では「意趣返し」を「冷やかし」や「軽いお返し」といった意味合いで使うこともあります。本来は「恨みつらみをはらすこと」や「報復」という意味ですが、小突きまわす意図で「おちょくる」「からかう」といったニュアンスでも使われることがあります。
たとえば、職場で自分の足を引っ張ってばかりいる後輩がいるとします。いい加減、我慢の緒が切れ「社長が直々にお叱りの話があるそうだ」と作り話をしたとしましょう。もちろん、からかいやほんの冗談ですが、相手にとっては冷や汗ものの「軽いお返し」であるとも言えます。このような例も「意趣返し」のひとつです。
「意趣返し」を使った例文
- 近所の犬が吠えてうるさい。近所迷惑だが意趣返しが怖くて何も言えない。
- 意趣返しのごとく、やられたらやりかえすのが当然の心理であろう。
- 妻と喧嘩をしたが、意趣返しをされないためにも笑顔で接しようと思う。
「意趣返し」の類語・対義語とは?
「意趣返し」の類語は「仕返し/報復/敵討ち」など
「意趣返し」の類語には「仕返し」「報復」「敵討ち」などがあります。「仕返し」の意味は「自分に害を与えた相手に仕返すことや仕打ち・復讐」、「報復」とは「返報や仕返し」をさし、「敵討ち」は「恨みを晴らすこと、仇討」という意味です。その他「復讐」「お礼参り」「反撃」なども類語として言い換えに使えるでしょう。
「意趣返し」のカタカナ語の類語は「リベンジ/アベンジ」
「意趣返し」のカタカナ語の類語には「リベンジ(revenge)」や「アベンジ(avenge)」があります。「リベンジ」も「アベンジ」も、復讐や仕返しといった意味がありますが、「リベンジ」は仕返しをするという行動そのものを指し、「アベンジ」は「自分が誰かのために復讐をする」という意味があります。そのため「アベンジ」を使う場合は、非常に強い怨念や執念が伴うのが通常です。
ことわざ「目には目を歯には歯を」も類語のひとつ
「意趣返し」の意味に似たことわざの類語には「目には目を歯には歯を」があります。簡単に言うと「やられたら、やり返せ」という意味になります。しかし、本来の意味は「与えられた害に対し、相手に同等の仕打ちをしてもよい」であり、「それ以上の害を加えてはならない」という道徳的な意味が込められていることわざでもあります。
「意趣返し」は「恨みをはらすこと」や「仕返し」を意味するため、「相手に同等の仕打ちをする」という意味の「目には目を歯には歯を」は、類義的なことわざだと言えます。
「意趣返し」の対義語は「許容」「容赦」「堪忍」など
「意趣返し」の正式な対義語は見当たりませんが、意味の上で反対の意を持つ言葉は「許容」「容赦」「堪忍」などです。
「許容」は「大目に見たり、そこまでは良いと認めること」、「容赦」は「許すこと、大目に見ること」、また「堪忍」は「怒らず、相手の過ちを赦すこと」という意味があります。
「意趣返し」の英語表現とは?
「意趣返し」の英語1「get back at」
「意趣返し」は一般的に「get back at」という熟語表現を使います。「get back at」とは、「何かをされたことに対して、相手にお返しをする」という意味です。「get back at」には、さほど怨念のこもった強い意味合いはあまりなく、軽い仕返しや冷やかし、また八つ当たりのようなニュアンスでも使われることがあります。
たとえば「Don’t get back at me. It was just a joke.(意趣返ししないでくれる?ほんの冗談なんだから)」のように表現するとよいでしょう。
「意趣返し」の英語2「revenge on」
「意趣返し」を表す英語フレーズには「revenge on」もあります。「revenge」とは「復讐する」「仕返しをする」という意味です。「revenge on her」や「revenge on one of my old firend」などのように表します。
また、「誰かのために仕返しをする」という強い意味で使う場合は「avenge on」を使うとより感情が明確に表現できるため、「I have a reason to revenge on him.(彼に意趣返しをするには、わけがある)」のようになります。
「意趣返し」の英語3「retaliate against」
「意趣返し」の英語でより肉体的、身体的に復讐をする場合は「retaliate against」を使うとよいでしょう。
たとえば、仕返しや報復として相手を殴ったり、傷つけたりする場合は、より具体的に状況を表す「retaliate」という単語を使い「I had to retaliate against him because he did hurt my sister.(妹を傷つけたから、彼に意趣返しをしたまでだ)」とします。
まとめ
「意趣返し(いしゅがえし)」の意味は、「恨みを晴らすこと」また「仕返し」や「報復」です。語源は中国語の「意」と「趣」で、意味は「心のおもむき」となりますが、日本に伝わってから「心の中の不満や恨み」という意味に転じた経緯があります。
また「意趣返し」には、恨みつらみが存分にこもった積年の憎悪を晴らす、という意味で使われることもあれば、冷やかしや小突き、茶化すニュアンスでも使われます。