プレゼンで「~については割愛します」と説明をカットすることがあります。この「割愛」は「省略」の類語ですが、厳密には異なるニュアンスを持ちます。「割愛」の詳しい意味と読み方、語源とその使い方を解説しましょう。また「省略」やその他の類語・言い換え表現、英語訳など関連用語も紹介します。
「割愛」の意味とは
「割愛」の意味とは「惜しいと思うものを手放すこと」
「割愛」とは「惜しく思うものを思い切って手放したり捨てたりすること」を意味します。「愛執を断ち切ること」という意味や、「大学や自治体が他の組織からの要請で人材を手放すこと」という意味もあります。
ビジネスシーンでは説明をカットする際にしばしば用いられるため、「不要なものを切り捨てる」という意味だと認識している人も多いですが、本来は「惜しいと思うものを手放すこと」を指して「割愛」と言います。
「割愛」の読み方は「かつあい」
「割愛」は「かつあい」と読みます。「割」の字は「わり」ではなく「かつ」と読むのがポイントです。「割」は一般に「わる、われる、わり」などの訓読みでよく知られ「別々に分ける」という意味を持ちます。
一方の「愛」は「あいする、かわいがる」という意味の他「おしむ」という意味もあります。このふたつの漢字を重ねることで「おしいものを別に分ける=手放したくないものを切り離す」というニュアンスになるのです。
「割愛」の語源には仏教や養蚕の説がある
仏教においては愛する人や家族、ふるさとを離れて仏門に入ること、すなわち出家することを「愛を割く=割愛」と呼びます。これが転じて、仏教以外でも「惜しみながらも手放す」という意味で「割愛」と使うようになったとするのが、「割愛」の語源のひとつです。
仏教以外では、養蚕(ようさん)が語源だという説もあります。養蚕では、蚕の交配を人為的に中断させることがあり、これを「割愛」と呼びます。この養蚕における「割愛」が一般化された、とする説もあるようです。
「割愛」の使い方と例文
「割愛する」と動詞にして使うのが一般的
「割愛」は「割愛する」と動詞で使うのが一般的です。たとえば「会議で割愛した内容は、メールで周知すべきだ」というと「惜しくも伝えなかった内容は~」という意味になります。
「惜しくも手放した」という意味に加え、その内容が「必要なものである」というニュアンスを暗に含む表現ということができます。
「~の都合上割愛します」の言い回しでよく使う
「割愛」は「~の都合上割愛します」「~の関係で割愛させていただきます」と理由とセットでよく用いられます。続けて「詳しくは資料にてご確認ください」「別途ご案内します」などと補足することが多いのも特徴です。
「割愛します」は元々不要な物には使わない
「割愛」は「惜しいものを手放す」という意味なので、不要な事柄を指して「割愛します」と使うのは誤りです。たとえば、「関係ないので説明しません」という意味で「以下は割愛します」と使うことはしません。同様に、「あまり重要ではないので割愛します」という使い方も誤りです。
「割愛」はあくまでも「惜しいものを手放す=必要なものを切り離す、切り捨てる」という意味で使用します。ただし、近年では「不要なものを手放す」と誤認している人が多いため、今後は許容範囲が変わるかもしれません。
「割愛職員」「割愛人事」は公務員の人事で使う
大学や自治体といった組織では、「他の組織からの要請で人材を手放す」という意味でも「割愛」が用いられます。本当は他に渡すのが惜しい人材だが、組織にとって有益になるよう行われる人事異動を「割愛人事」と呼び、主に公務員が他の自治体に移る際に使います。また、大学職員が他大学へ席を移すことを指す場合も同様です。この「割愛人事」によって異動する職員がまさに「割愛職員」です。
この他、人事における「割愛」では「割愛採用(手放すのは惜しいでしょうがうちにください、と転籍を頼み採用すること)」や「割愛願(主に大学で移籍先が”割愛してほしい”と申請すること)」などがあります。
「割愛」と類語「省略」の違いとは
「省略」とは「簡単にするために省くこと」
「割愛」と似た使い方をする単語には「省略(しょうりゃく)」が挙げられます。「省略」とは「簡単にするために省く(はぶく)こと」という意味です。
「省」の字には「はぶく」という読みがあるように、「不要なものを取り除く」という意味があります。一方の「略」は「簡単にする、正式な形を簡単にした」などの意味を持つ漢字です。この二つの漢字を重ねた「省略」は、「簡単にするために不要なものを取り除く」という意味になります。
「割愛」と「省略」の違いは「必要なものか」
「割愛」と「省略」の一番の違いはカットする内容が「必要なものかどうか」という点です。「割愛」は「惜しいもの=本来は必要なものを手放す」という意味であるように、必要なものを仕方なく手放す際に使用します。
一方、「省略」は「簡単にするために取り除く」という意味からも分かるように「不必要なものを除く」というニュアンスを持つのがポイントです。「省略」には「割愛」のもつ「仕方なくカットする、やむを得ず取り除く」といったニュアンスはありません。
たとえば「~は不要なので割愛しよう」とは言いませんが、「~は不要なので省略しよう」という表現は可能です。ただし、「内容の重複があるため(不要と判断し)省略します」「内容の重複があるため(重要だが)割愛します」のように、いずれの表現でも意味を成す場合もあります。
「割愛」の類語には「端折る」「除外する」も
「割愛する」の言い換えには「端折る(はしょる)」や「除外する」といった表現も使用できます。「端折る」とは「話を大きく省き、手短にまとめる」という意味です。「除外する」は「取り除く、範囲からはずす」という意味を持ちます。
また、英単語の「omit(省く、抜かすの意味)」をそのままカタカナ語として「オミットする」という表現もビジネスシーンでは耳にします。「オミットする」は「除外する、省く」などの意味で主に用いられます。
「割愛」の英語訳とは
英語では「skip」を使って表現する
「割愛する」を英語で表現する際には「skip」を使うことができます。「skip(スキップ)」はカタカナ語としても用いられますが、「省略する、抜かす」などの意味を持つ英単語です。
また、類語の「省略」を英訳した「omit」や「leave out」で表すこともできます。
「割愛」の英語例文
- Please let me skip our company profile.(会社概要は割愛させていただきます)
- I will omit this parts.(この部分は省略します)
- Please allow me to leave out the explanation.(その説明は割愛とさせてください)
まとめ
「割愛」とは「惜しいものを手放す、捨て去る」という意味です。ビジネスシーンでは「省略する」という意味でよく用いられます。「本来は必要なものを手放す」というニュアンスを持つのがポイントで、不要なものを指して「割愛する」と使うのは誤りです。
「簡単にするために省く」という意味では「省略」、何らかの事情で必要なものを除く際に「割愛」を使うと覚えておきましょう。
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詳細は各自目を通しておいてください。