大変な状況下でも冷静な対応をするさまは「気丈に振る舞う」「気丈な振る舞い」と表現されることがあります。この「気丈」とは具体的にどういった意味を持つのでしょう。「気丈」の意味や読み方をはじめ、その使い方を例文で詳しく解説します。あわせて「気丈な性格(人)」の特徴や類語、英語訳についてもみていきましょう。
「気丈」の意味とは?
「気丈」の意味は「気持ちをしっかりと保つさま」
「気丈」とは「気持ちを強くしっかりと保つさま、心がしっかりしていること」を意味します。「気が強い」とは異なり、状況や感情に左右されない気持ちの強さや、大変な状況下でも気持ちをしっかりと保つさまを指して用いられます。
正しい読み方は「きじょう」、「きたけ」は誤り
「気丈」は「きじょう」と読みます。「気丈」の「気」は「きもち、感情」を意味し、「丈」には「強い、しっかりしている」という意味があります。
「丈」の字は「たけ」と読むこともできますが、「気丈」の場合は「きじょう」が正しい読み方です。「きたけ」とは読まないように注意しましょう。
「気丈」と同じ意味の言葉「気丈夫」
「気丈」と似た表現で「気丈夫」がありますが、「気丈夫」も「気丈」と同じ意味を持ちます。さらに、「気丈夫」には「頼りになる、心強い」という「気丈」とは異なる意味もあります。たとえば頼りになる人を挙げ、「彼がいてくれたら気丈夫だ(=心強い)」として使うことも可能です。
「気丈」の使い方と例文
「気丈な振る舞い」「気丈に振る舞う」はよく使う表現
「気丈」は「気丈な振る舞い」あるいは「気丈に振る舞う」という表現で使われることが多いです。「気丈」は気持ちを保てないような困難な状況、精神的につらい状況にあるにも関わらず「気持ちをしっかり保つさま」を意味するのがポイントです。たとえば、本当はつらいはずなのに明るく振る舞うさまや毅然とした態度で仕事をこなすさまを「気丈に振る舞う」ということができます。
- 理不尽なクレーマーを前にしても気丈に振る舞う姿は見習いたいものだ。
- 彼女の気丈な振る舞いは見ているこちらが辛い。
「気丈に~する」とは困難をものともしないさま
「気丈」は「気丈に~する」の言い回しでもしばしば用いられます。困難な状況にもかかわらず心を強く保ち対応するさまに対して、「気丈に対応する」「気丈にこなす」「気丈に相手をする」などの動詞と共に使うことができます。
彼は上司のパワハラにも気丈に受け答えをし、尚且つ会社にそれを告発する毅然とした対応を見せた。
「気丈」は「褒め言葉」として使われることが多い
「気丈」は、精神力の強さや冷静な対応力などを褒める意味合いで用いられる表現です。特にビジネスシーンでは私的な感情を挟まずに仕事をこなす姿は「気丈な振る舞い」と称賛されることも多いでしょう。
「気丈な振る舞い」を相手に求めるのは控える
「気丈な振る舞い」は、見習いたいと周囲に思わせることがありますが、辛いことがあった人に対して「気丈な振る舞い」を求めるのは控えましょう。ビジネスシーンで「気丈」が求められることは多いですが、そうするかどうかを決めるのは本人であり「気丈」を求めることは相手を追い詰める懸念もあります。
たとえば、葬儀で遺族の振る舞いを「気丈に対応していた」と表現することがあっても、遺族に対して「気丈」を求めることはないでしょう。本人に直接「気丈に…」と伝えるのも避けます。
「気丈さに欠ける」はネガティブな意味で使われる
「気丈さに欠ける」とは、「気丈さが足りない=気持ちが強く保てていない、精神的に弱い」というニュアンスで用いられる表現です。相手に対するネガティブな評価になるため、使い方には注意が必要です。特に、ビジネスシーンでの使用はパワハラ、モラハラにもつながりかねません。
「気丈な性格」や「気丈な人」の特徴
「気丈な性格」とは「精神的に強いこと」
「気丈さに欠ける」が精神的に弱いという意味で用いられるのに対し、「気丈な性格」や「気丈な人」は気持ちのしっかりした人、精神的に強い人を指すことが多いです。「メンタルが強い人」といった意味合いです。
「気丈な振る舞い」の例で示したように、本来であれば落ち込みたくなるような状況でも気持ちを強く保つさまが「気丈」という単語の特徴です。そのため、「気丈な性格」「気丈な人」といった表現も特に困難な状況に強い人に対して用いられます。
「気丈な性格」の特徴は「物怖じしない態度」
「気丈」とされる人の特徴に、何事にも物怖じしない態度があります。精神的に落ち込みたくなる状況でもやるべきことに毅然とした態度で取り組み、威圧的な相手にも言うべきことを正しく主張するさまは「気丈」と表現できるでしょう。
気持ちの切り替えが早いことも特徴の一つ
「気丈な振る舞い」を見せる人は、実際に傷ついていないというわけではありません。悲しみや悔しさなどの感情がありながらも普段通りの姿でいるのは、その人なりに気持ちを切り替えているからです。その気持ちの切り替えの早さもまた「気丈」とされる人の特徴だということができます。
「気丈」の類語とは
似た意味は「打たれ強い」「我慢強い」など
「気丈」と似た意味の表現では「打たれ強い」があります。「打たれ強い」とは敵の攻撃に堪える力があること、多少の困難ではへこたれないさまを指します。精神的な強さがあるという点では「気丈」に通じる意味があると言えるしょう。
また、似た表現では「我慢強い」「忍耐強い」も挙げられます。よく耐えること、耐え忍ぶ強さという意味は「気丈」のニュアンスと似ています。
「芯が強い」も類語のひとつ
「芯」とは「物事の中央、中心」という意味の他に「本性、本心」という意味でも用いられます。そこから「芯が強い」は、苦しみなどに屈しない強さやゆるぎない信念を持つさまを言い表します。特に、見た目の頼りない印象に対して強い意志を持つさまを指すことが多いのが特徴です。
たとえば、「彼女は芯が強い」というと「(見た目にはわからないが)メンタルが強い」といったニュアンスでも用いられます。
カタカナ語の「タフ」に言い換えも
「タフ」とは英語「tough(タフ)」に由来する表現です。日本語では特に、英単語の持つ「精神的にたくましい、不屈の」という意味や体力的な強さを意味するカタカナ語として用いられることが多いです。
「居丈高」は「気丈」の類語ではない
「気丈」と語感が似た言葉に「居丈高(いたけだか)」がありますが、「居丈高」と「気丈」は全く異なる意味です。「居丈高」とは「人を威圧するような態度、威圧的な態度をとるさま」を意味します。
「丈」の読み方も「気丈」とは異なりますので、区別して覚えておきましょう。また「気丈高」という表現もありません。
「気丈」の英語訳
英語訳には「brave」を使う
「気丈」を英訳する際には、「brave」という英単語が使用できます。「brave」には「強い、勇敢」などの意味があります。また、「brave」を使った「put on a brave face」も「気丈」の和訳で使用できる表現です。
直訳すると「勇敢な顔をする」という意味合いですが、日本語の「何食わぬ顔をする」「気丈に振る舞う」と近いニュアンスになります。
「気丈」の英語例文
He was accused falsely, but acted brave.
(彼は濡れ衣を着せられたが気丈に振る舞った)
She’s putting on a brave face in front of everyone.
(彼女はみんなの前では平気な顔をしている=気丈に振舞っている)
まとめ
「気丈」とは「気持ちを強くしっかりと保つこと」という意味です。主に困難な状況下にあるにもかかわらず気持ちを強くもち、毅然とした対応するさまに対して用いられます。「気丈に振る舞う」のほか「気丈な性格」の表現でも使用されます。
一方で「気丈」を相手に求めたり、「気丈さに欠ける」と相手を評価することは控えましょう。