扶養家族として認められれば健康保険料が安くなるかもしれないと思ったことはありませんか。ところが社会保険に扶養に入れても、国民健康保険には扶養に入れません。なぜなら国保には扶養という概念がないからです。そこで保険の扶養について、また扶養から外れて国保への切り替え手続きなどについて解説します。
「国民健康保険」では「扶養」に入れない?
「国民健康保険」に「扶養家族」という考え方はない
国民健康保険には、扶養家族という考え方がありません。家族なら世帯主がいてそれ以外の家族は扶養家族だという考え方がありますが、たとえ実子だとしても扶養家族ではなく、国民健康保険の場合は全員が被保険者となり、それぞれの保険料を支払います。
「社会保険」には「扶養」という考え方はある
国保に扶養家族という考え方がない一方、社会保険には扶養家族という考え方があります。
一世帯につき生計を立てている働き手が社会保険に加入すると、その家族はその働き手に扶養されていることになります。保険料はその働き手一名分の保険料を支払い、扶養家族全員の医療費も保険でまかわなれるという仕組みです。
「国民健康保険」の保険料と扶養家族の関係
「扶養家族も被保険者」=保険料は「一世帯全員分」
国保の保険料は一世帯ごとに算出されます。その算出方法は、「世帯の所得金額」、「その世帯の扶養家族の数」、「40歳~64歳の人の数」によって計算されます。つまり世帯全員が被保険者として換算されて、その人数分だけ保険料を支払います。この計算方法ですと、保険料の上限はありますが、家族の数が多いほど一世帯全体の保険料も増えていきます。
保険料は各自治体によっても違う
国保の保険料に全国統一の一律金額規定はなく、住む場所によっても保険料はかわります。そのため国保の一世帯ごとの保険料がいくらになるのかは、居住の市区町村の役場に尋ねない限り、はっきりとした金額はわかりません。
ただ国保の保険料については、社保から国保へ切り替えたときにその保険料の格差に驚かれる方が多いようです。
「扶養」から抜けるとどうなる?
「国民健康保険」には関係ない
国保(国民健康保険)に扶養という考えはありませんから、扶養から抜けるという想定も考えられません。その代わり、自分の父親または母親が世帯主名義であった国保から抜けて、自分が世帯主となり国保や別の健康保険に加入することは考えられます。
世帯主になるためには、世帯分離の手続きが必要です。世帯主になりたい本人かその世帯人が、各市区町村の役場で世帯分離届を提出して受理されれば世帯分離ができます。
「社会保険」の扶養から抜けると別の医療保険へ加入
社保の扶養から外れれば、別の医療保険に加入しなくてはいけません。職種によっては健康保険組合に加入できますが、該当する健康保険組合がなければ国保に加入します。
また退職者も、国保に加入することになります。
「社保の扶養」から抜けて「国保」へ切り替える手続き
社保から国保への切り替え手続きは、最初に「社保」の扶養から外れるための手続きを行い、そのあと「国保」への加入手続きを行います。
「社保」の扶養から抜ける手続き
扶養になっている社会保険の窓口に、「被扶養者(移動)届」を提出します。その際、保険証も返却します。
そして「健康保険資格喪失証明書」を受け取ります。保険から外れた日の日付が記載されていることを確認してください。その日付の翌日から「国保」の保険加入手続きが行えて、かつ保険料の支払いも開始される大切な日付だからです。
「国保」の加入手続きと必要なもの
居住の市区町村役場で、国保の加入手続きが行われます。加入手続きに必要なものは、下記のとおりです。
- 健康保険資格喪失証明書
- マイナンバーが確認できる個人番号カードや通知カード
- 運転免許証などの本人確認ができる書類
手続きは代理人でも可能
尚、国保の加入手続きは委任状があれば代理人でもできます。その際は、代理人は本人確認ができる書類もお持ちください。
「国保」から「社保の扶養」に入るための手続き
最初に扶養に入る「社保」に加入してから、「国保」の脱退手続きを行います。扶養に入ることが認定されるまえに国保の脱退手続きはできませんので、ご注意ください。
社保の扶養に入る手続き
扶養に入る社保の加入手続きを済ませて、「社保」の保険証を受け取ってください。
国保の脱退手続きは役場で行う
「国保」の脱退手続きは、お住いの市区町村の役場で行ないます。また手続きに必要なものは次の通りです。
- 加入した会社の社会保険証、または社会保険の資格取得証明書
- 扶養家族分の社会保険証と社会保険書類
- 当人の国民健康保険証
- 社会保険に切り替えた扶養家族の国民健康保険証
- 運転免許証などの本人確認のできる書類
- マイナンバー通知カードか個人番号カード
- 印鑑
国保の脱退手続きを忘れると保険料の二重払いになるため注意
社保の扶養に入るための手続きは会社でしてくれますが、国保の脱退手続きは世帯主か同一世帯の世帯人、もしくは委任状を持った代理人が行います。「国保」の脱退手続きは自動的にはできませんし、もしも脱退手続きを行わないと、そのまま国保に保険料を支払うことになり保険の二重払いになりますので、脱退手続きは忘れずに行うようにしてください。
まとめ
国保に扶養に入ることはありませんが、社保には扶養に入ることができます。社保に扶養に入るためには条件がありますが、それをクリアすれば一世帯分の保険料は国保に比べれば安くなる傾向があります。しかし社保に扶養に入れない場合や退職後には、国保への加入が必要です。ご自身に合った健康保険を見つけて、それぞれの手続きをスムースに進めましょう。