「粉飾決算」とは「経営状態が上手くいっているように会計を見せかけること」という意味です。会社の信用を落とす行為にもかかわらず、粉飾決算はなぜ繰り返されるのでしょうか。
この記事では、「粉飾決算」の意味と罰則のほかに、その手口と見抜き方と粉飾決算が行われる理由などを解説します。
「粉飾決算」の意味と罰則とは?
「粉飾決算」とは「決算をよく見せかけること」
「粉飾決算」とは「決算をよく見せかけること」という意味です。「粉飾」とは「飾り繕い、うわべだけよく見せかけること」という意味で、「粉飾決算」は「決算をよく見せかけること」という意味になります。
実際の経営状態は良くないのですが、それを隠し、不当な会計処理によって利益を出しているかのように示すことを指します。
「粉飾決算」の罰則は懲役または罰金
粉飾決算が行われるとその会社の経営状態を不明確になり、投資家などが与信などの判断を誤ることがあるため証券取引法によって禁止されています。
粉飾決算が発覚した場合には、次のような罪に問われます。
- 有価証券報告書の偽造を行った場合:
10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方を科せられる - 四半期報告書の虚偽報告:
5年以下の懲役か500万円以下の罰金、またはこれらの併科
さらに法人には、7億円以下の罰金などが科せられます。
「逆粉飾決算」とは利益を過小に少なく計上すること
「粉飾決算」とは反対に、利益を過小に評価し、実際の利益よりも少なく計上することは「逆粉飾決算」と言います。法人税の支払いを少なくする目的で行われることがあります。
粉飾決算の手口と見抜き方
粉飾決算の手口の代表例
粉飾決算の手口はいろいろあるのですが、よく使われる手口は、損益計算書や貸借対照表と呼ばれる決算書で、資産を過大に評価して、負債は過小に評価するものです。また、収益計上時期を繰り上げたり、借入金を不正に記載したりするなどの手口もあります。
グループ企業なら子会社を利用して、子会社に架空の受注をさせて取引があったように見せかける手口もあります。
粉飾決済は会計の原則と照らし合わせて見抜く
粉飾決済は実際には出ていない利益を出ているかのように決算書に記載しますから、会計の原則に照らし合わせれば粉飾決済を見抜けます。
例えば、粉飾決済の手口に、架空売上があります。実際には商品は売れていないのですが、売れたことにして、売掛金を計上します。しかし架空売上なので入金はありません。その点を突いて、銀行が売掛金の残高が不都合に大きすぎないかをチェックするなどすると、粉飾決済が見抜かれるのです。
税理士が粉飾決済の責任を問われることもある
粉飾決済が行われたと判断された時に、税理士が責任を負うケースもあります。不注意から引き起こされた粉飾決済なら過失と認められないこともありますが、その会計の詳細によっては税理士の責任が問われることもあります。
税理士が関与していなくても、顧問先の粉飾決済が税理士の責任とみなされることもあるので、税理士は常に注意しておく必要があります。
なぜ粉飾決算が行われるのか
粉飾決算には3つのメリットがある
粉飾決済が繰り返される理由は、そのメリットにあります。粉飾決算を行うことで考えられる主なメリットは3つあります。
- 資金調達がしやすくなる
- 株価や配当を維持できる
- 経営者の地位の保全できる
粉飾決算により偽りの黒字決算を報告して会社の業績がいいように見せかければ、銀行などから資金を調達しやすくなり、投資家からの信頼も得られて株価は維持できます。また、経営者の保身もできるため、粉飾決済はなかなかなくなりません。
最近の事例では管理職によるものが増えている
粉飾決済は、かつては経営者自らが粉飾決済を行うケースが多かったのですが、最近では、経営者が掲げる経営目的を達成するために管理職や役員が行うケースも増えてきています。会社への忠誠心ゆえに起こった粉飾決済で、経営者の保身のためだけに粉飾決済が行われているわけではありません。
粉飾決済を防止する会計監査
粉飾決済を防止するために、資本金が5億円以上の大企業では公認会計士か、監査法人によって会計監査が義務づけられています。会計監査によって、企業の会計に不正がないかをチェックします。
中小企業は会計監査を任意で行えるのですが、会計監査を受ければ会計面での社会的信用度が上がります。
「粉飾決算」の英語表現とは?
「粉飾決算」は英語で「window dressing」
「粉飾決算」は英語で「window dressing」です。直訳すると「店の窓を見栄えよくすること」となりますが、「うわべを飾ること」という意味が含まれています。そのため、「window dressing」は「粉飾決算」という意味以外にも、「見せかけの」や「飾り立てた」という意味もあります。
「粉飾決算」は英語例文
- “The company made a window dressing.”
「その会社は粉飾決算を行った」 - “Window dressing was used to make it look like the company was making a profit.”
「粉飾決算によって、会社は利益が出ているかのように見せかけた」
まとめ
「粉飾決算」とは「会計上の決算をごまかすこと」という意味で、実際に出ている利益よりも多く見せかけることで、経営が上手くいっていることをアピールします。粉飾決済が発覚すれば会社の信用が失われて、会社の存続そのものに大きく影響を与えますので、粉飾決算をしないことが大切です。
粉飾決算によって黒字ということにして、銀行から金を借りようとした