「大丈夫です」という言葉は日常の様々な場面で使われています。でも目上の人と話すときの「大丈夫です」に違和感を覚える、という人も多いようです。今回は「大丈夫です」という言葉の敬語表現について解説します。「大丈夫です」の意味や使い方、間違いやすい注意点について、一緒に確認しておきましょう。
簡単で確実な「大丈夫です」の敬語表現
敬語表現①「復唱+かしこまりました」で確実に
「大丈夫です」の敬語表現は、「復唱+かしこまりました」です。
目上の人から「この予定で大丈夫?」などと問いかけられたときに「○月○日の○時ですね、かしこまりました」などと伝えるとスマートかつ確実です。「かしこまりました」を「承知いたしました」などに変えても良いでしょう。相手が指している「これ」「それ」などの指示語を一度ほどいて、明確に復唱した上で受け入れれば意思の行き違いが防げますし「大丈夫です」という曖昧な言葉を使う必要もありません。
敬語表現②「要約+よろしいでしょうか」で確認
もう一つの「大丈夫です」の敬語表現は、「要約+よろしいでしょうか」です。
目上の人やお客様へ「大丈夫ですか?」と問いかけたい場合は、何について大丈夫か聞いているという部分を明確にしましょう。「それではご注文商品は、ボールペン1箱、税込み3,000円、以上でよろしいでしょうか」「(体の)お加減はもうよろしいのでしょうか」「次回の打ち合わせについては追ってメールでご連絡いただけるとのことでよろしいでしょうか」など、曖昧にしないことが大切です。
「大丈夫です」を言い換えて適切な敬語表現に
「大丈夫」という言葉は受け取る人によって、解釈が異なることがあります。「何が大丈夫なのか」「何について大丈夫と言っているのか」ということを、会話の中で確認しておかないと、後々話しがずれてしまうこともあるでしょう。しかし、相手が目上の人だとなかなかその確認がしにくいものです。そのため「大丈夫です」の言い換えの言葉を知っておくと便利です。
「大丈夫です」の意味と使い方
「大丈夫です」は2つの相反する意味を持つ
「大丈夫です」には主に2つの意味があります。1つ目は「いいですよ」「問題ありませんよ」という受け止めの意味です。2つ目は「いいえ、要りません」「やめておきます」など拒否の意味です。つまりイエスもノーも「大丈夫」というひとつの言葉で表すことができます。そのため使い方によっては非常に曖昧で、どっちつかずの言葉として受け取られることがあります。
「大丈夫です」は前後の言葉が重要
「今日みんなで飲みに行くのだけど、良かったら一緒にどう?予定ある?」と誘われたとします。この返事が「大丈夫です」だけでは、飲みに行けるのか行けないのかが相手に伝わりません。「はい、大丈夫です、行けます」と言えば「大丈夫」は「予定ある?」の部分に向けられていて、予定がないので飲み会に参加ができる、という意味です。「申し訳ありません、今日は予定があるので大丈夫です」と言えば「せっかく誘ってもらったけど、今日はやめておきます」という断りの言葉です。つまり「大丈夫」はその前後にどんな言葉が来るのかによって意味が大きく変わってしまうのです。
「大丈夫です」を使う場合の注意点
「全然大丈夫です」は目上の人には×
友人や家族との会話で「全然大丈夫」という言葉を使ったことがあるという人は多いのではないでしょうか。「全然大丈夫」には「全く問題ない」「何の心配も要らない」というニュアンスが含まれていることが多いようです。しかし、日本語としては「全然大丈夫」という言葉は成立しません。日本語として成立しない言葉を目上の人へ使うことは避けた方が良いでしょう。
日本語では「全然」の後には、否定の意味を持った言葉が来ます。そのため「全然大丈夫ではありません」「全然安心できません」などネガティブな意味となります。友人同士で使う「全然大丈夫」と同じ意味を持たせたいのであれば「全く問題ありません」「全く心配は要りません」などと言うようにしましょう。
「結構です・可能です」は一方的表現
「大丈夫」という言葉を他の言葉に言い換えようとしたときに、つい使ってしまいがちなのが「結構です」「差し支えありません」「可能です」などでしょう。これらの言葉は確かに「大丈夫」という意味に繋がるものがあります。しかし、目上の人へ使うにはやや一方的な表現です。
「結構です」「差し支えありません」という言葉は、相手を許容する言葉です。通常の言葉に置き換えると「いいよ」「私は構わないよ」という意味です。この許容の言葉は、相手が自分と同等、または下の立場でなければ正しく使うことができません。「可能です」については、相手へ許可を出す意味合いが強くなります。「そうすることもできるよ」「そうしてあげてもいいけど」というニュアンスが強くなり、やはり目上の人への言葉として相応しくありません。
お客様との電話やメールは具体的に
電話やメールでの会話は、対面と違って相手の表情や仕草を確認することができません。その状態で「大丈夫です」を使うと意味の取り違えが起こりやすくなります。対面であれば、意味があやふやな場合はその場で確認できますが、電話やメールでは確認が難しいこともあるためです。その結果「きっとこういう意味だろう」「多分このことを大丈夫と言ってるのだろう」と不確かな予想をして解釈することになります。その予想が合っていれば問題ありませんが、間違っていた場合は確認やすり合わせに手間をかけることになります。
目上の人との会話は、相手に不要な手間をかけないための努力や工夫が大切です。「○○の件につきましては、仰るように資料2ページのA日程で承ります」など、相手が迷うことなく理解できる伝え方を意識しましょう。
まとめ
友人や家族と話すときの「大丈夫」という言葉には、温かさや安心感があります。そのほっとする気持ちを伝えたいと思うほど「大丈夫です」を使いたくなるものです。目上の人が相手だと、選ぶ言葉は変わりますが「安心してほしい」という気持ちはきっと伝えられます。言葉を丁寧に選んで、相手を想う気持ちをしっかり伝えられるように意識してみましょう。