「怪我の功名」は、間違いや過ちが思いがけずよい結果につながることを表現することわざです。実際に体験したエピソードを話すときも「怪我の功名でした」と表現することでそのニュアンスが伝わります。
ここでは「怪我の功名」の意味と由来、使い方の例文のほか、類語との違いや英語フレーズについて紹介します。
「怪我の功名」の意味や由来とは?
「怪我の功名」の意味は過ちがよい結果につながること
「怪我の功名(けがのこうみょう)」とは、間違いや過ちが思いがけずよい結果につながること。うっかりと間違いや過ちをおかしてしまったが、そのことが偶然にもよい結果をもたらしたというニュアンスのことわざです。
「怪我の功名」の由来は「過失」と「手柄」
「怪我の功名」の「怪我」は、実際に傷を負うことではなく「過ち」や「思わぬ過失」をさしています。また「功名」とは「手柄を立て名をあげる」ことです。
思いがけない過失や過ちが手柄、つまりよい結果をもたらすという意味につながります。
「怪我の功名」の使い方と例文
失敗したことが偶然よい結果になったときに使う
「怪我の功名」は、うっかり失敗してしまったことが、偶然にもよい結果につながったときに使えることわざです。
たとえば、道に迷ってしまい友人との待ち合わせに遅れてしまったが、迷っている途中で以前から探していたお店を発見したとき。「うっかり道に迷ってしまったけど、怪我の功名で気になっていたお店が見つかったよ」と表現することで、うっかり道を間違えたことが、よい結果につながったというニュアンスが伝わります。
「怪我の功名」で相手を励ますことも
「怪我の功名」は、過失やあやまちをおかしてしまった人を慰めたり励ましたりするときにも使えます。
仕事でうっかりとミスをしてしまって落ち込んでいる友人に対して「大変だったけど、怪我の功名で他の間違いも発見できたから、結果的には大丈夫だよ」などと声をかけることで、慰めや励ましの気持ちを伝えられます。うっかりした過失から、思いがけずよい結果につながったシーンで使える表現です。
「怪我の功名」を使ってエピソードを要約する
「怪我の功名」は、過失からよい結果につながったというエピソードを話すときに、要約として使える言葉です。過去に実際にあったことを「あの成功は怪我の功名だったんだよ」と表現することで、実は過失やあやまちのおかげで思いがけずよい結果になったというニュアンスが伝わります。
「怪我の功名」を使った例文
- うっかり道を間違えたが、怪我の功名でかわいいケーキ屋さんを発見できました
- 開発中の失敗からこのヒット商品がうまれました。まさに怪我の功名です
- 大きなミスをしてしまったが、怪我の功名で他のミスも発見できたから結果的には良かった
「怪我の功名」と「不幸中の幸い」の違いとは?
「不幸中の幸い」とは不幸の中に少しの救いがある
「不幸中の幸い(ふこうちゅうのさいわい)」とは、不幸なできごとの中に少しだけ救いがあるという意味。不幸なできごとが起きたけれど、致命的なことは避けられたり最悪の事態には至らなかったりする場合。また、救いとなることがあった場合に使うことわざです。
たとえば交通事故を起こしてしまったが、車は大破したけれど誰もケガはしなかったときに「不幸中の幸いだね」などと表現します。
「思わぬ幸運」と「少しの救い」の違い
「怪我の功名」は、うっかりした過ちや過失が結果として「思わぬ幸運」になったという意味です。対して「不幸中の幸い」は、不幸なできごとがあった中で「少しの救い」があるという意味。似たような意味ですが、使い方や使えるシチュエーションが違います。
「怪我の功名」は結果的に幸運につながっていますが、「不幸中の幸い」はあくまでも不幸であることが前提です。
「怪我の功名」の類語や対義語とは?
「怪我の功名」の類語は「災い転じて福となす」
「災い転じて福となす(わざわいてんじてふくとなす)」とは、災難や失敗などをうまく利用し自分の有利になるよう努力や工夫をすることという意味のことわざ。会社をリストラされたが、そこから一念発起し独立して成功をおさめた場合に「災い転じて福となす」で表現できます。
思いがけず幸運になったという「怪我の功名」に対し、「災い転じて福となす」は、災難にあったが努力や工夫をすることでよい結果につなげたというニュアンスです。
「怪我の功名」と似たことわざ「棚から牡丹餅」
「棚から牡丹餅(たなからぼたもち)」とは、思いがけない幸運にあうこと。棚の上から牡丹餅が落ちて寝ている人の口に入るようすから、大きな努力をしないで幸運を手に入れるという意味のことわざです。昔は砂糖が貴重品であったため、甘い牡丹餅が期せずして手に入ることは大変幸運なことでしょう。
「怪我の功名」は過失や間違いなどが起きたことが前提ですが、「棚から牡丹餅」は特に悪いことは起きていないが思いがけず幸運を手にするというニュアンスです。
「怪我の功名」の対義語は「藪をつついて蛇を出す」
「藪をつついて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)」とは、藪の中をつついて蛇をだそうとしたら蛇に噛まれてしまうこと。転じて、余計なことをわざわしたことでかえって災難にあったり状況を悪化させたりすることという意味のことわざです。
言わなくてもよいことまで報告したことで、かえって相手を怒らせてしまったときなどに「藪をつついて蛇を出してしまった」などと表現します。
「怪我の功名」の英語表現とは?
「怪我の功名」は英語で「lucky break」「by a fluke」
「怪我の功名」を英語で表現するには「lucky break」がよいでしょう。「lucky break」は「思わぬ幸運」や「突然の幸運」というニュアンス。過失や災難が起きたという前提はありませんが、思いがけない幸運という意味を伝えるには適しています。
また、「まぐれ当たり」というニュアンスの「by a fluke」も「怪我の功名」の英語表現として使えるフレーズです。
「comes out smelling like a rose」という英語訳も
「怪我の功名」は「comes out smelling like a rose」というフレーズでも、その意味を表現できます。「comes out」は「抜け出す」という意味で「smelling like a rose」は「バラのような香り」という意味。直訳すると「抜け出したらバラのような香り」となります。
ゴミの中に落ちた人が無傷で無臭のまま抜け出せたようすを表した言葉で「うまく切り抜ける」「見事に立ち直る」といったニュアンスで使われるフレーズです。ゴミの中に落ちるという災難が、バラの香りという幸運へ変わることから「怪我の功名」の英語表現として使えるフレーズと言えます。
まとめ
「怪我の功名(けがのこうみょう)」とは、失敗や間違いなどが、偶然に思いもよらない幸運をもたらすという意味のことわざ。「怪我」は「過ち」や「思わぬ過失」をさし、「功名」は「手柄を立て名をあげる」こと、つまりは「幸運」をさしています。うっかり間違いをしてしまっても、結果的には幸運であったというニュアンスです。
「怪我の功名」
道を間違えて遅刻したが、怪我の功名で以前から探していたレストランを見つけることができた。
「不幸中の幸い」
道を間違えて遅刻してしまい、大事な顧客を激怒させてしまった。迷っているときに以前から探していたレストランを見つけたのは、不幸中の幸いと言えるかもしれない。