「勝てば官軍」の意味とは?「勝てば官軍負ければ賊軍」や類語も

「勝てば官軍」はスポーツや選挙戦などをはじめ、争いや競い合いの場面で用いられることわざです。この後に「負ければ賊軍」という表現が後につく場合もありますが、ニュアンス的にはどのように変わるのでしょうか?

ここでは「勝てば官軍」の由来や使い方の他、類語や英語表現についてわかりやすく解説します。

「勝てば官軍」の意味と由来とは?

「勝てば官軍」とは何事も強てば正義という意味

「勝てば官軍」とは「何事も勝てば正義である」という意味があります。この世の中は、とにかく強いものが正しいとされ、最終的に勝ちさえすればどうにでもなる、ということを表しています。

「勝てば官軍」は言葉のとおり「とにかく勝てば官軍となる」という意味です。そもそも「勝てば官軍」の「官軍」とは「君主に属する正規軍」のことで、日本では天皇に属する高位なる皇軍(こうぐん)を指します。つまり、国内において敵なしとされる天皇の軍隊を「官軍」と表現しているのです。

「手段を問わず勝つことが重要」という意味合いも

「勝てば官軍」は「手段を問わず、とにかく勝つことが重要である」というニュアンスを含むことわざでもあります。つまり、どんな卑劣な手段を使い道理に背いたとしても、戦いにおいては「勝つ」ことが大切でその後はどうにでもなる、といった意味合いもあります。

結果的に「勝利を収める」ことがよいとされ、突き詰めて言えば「勝つためには手段を選ばない」という意味でも使うことがあります。

「勝てば官軍」の由来は「戊辰戦争での幕府軍敗退」

「勝てば官軍」とは、明治時代に起こった「戊辰戦争における幕府軍敗退」が由来となります。

戊辰戦争とは、旧徳川幕府軍と明治新政府軍との政権争いで勃発した内戦のことです。旧徳川幕府軍は天皇から公式に認可されていた最強軍でしたが、戊辰戦争で明治新政府軍が旧徳川幕府軍を打ち破り、国家を統治することになりました。

当時、天皇は正規軍を抱えておらず、旧徳川幕府軍の負けを機に明治新政府軍を支持することになってしまいます。つまり「反逆的な立場にいた明治新政府軍が官軍」となったのです。

この背景をベースに、いくら天皇や朝廷に認められていても負ければ終わり、どんな手段を使っても勝つことが正義であり負ければ不正であるというように、状況を皮肉る意図でできた言葉が「勝てば官軍」です。

「勝てば官軍負ければ賊軍」との関連とは?

「勝てば官軍負ければ賊軍」で意味を強調する

「勝てば官軍」は単体で使われることもありますが、「負ければ賊軍」という別のことわざを後に付けて、一つのことわざとして用いることもあります。

「勝てば官軍負ければ賊軍」とは、「戦いに勝てば正義であり、負ければ不正である」という意味があります。とにかく勝負事の世界では勝利を獲得した者がよいとされ、負けた者は悪いとされる、という意味で使われます。

「勝てば官軍」の官軍は「天皇に属する正規軍」を意味しますが、その逆で天皇や朝廷を敵対する反逆的な位置にある軍を「賊軍(ぞくぐん)」と呼んでいます。つまり、「負ければ賊軍」という表現を加えることによって、「勝ちは官軍」より意味を強めたことわざとなります。

「勝てば官軍負ければ賊軍」とは勝敗で善悪が決まる

「勝てば官軍負ければ賊軍」とは「正邪善悪は争いの勝敗によって決まる」という意味もあります。つまり、正義とは勝つことで不正や悪は負けることである。また勝負の如何によって、よし悪しにおける黒白が決定するということを表しています。

物事のプロセスや過程、努力の成果や力量などは関係なく「とにかく勝つことが全てであり、勝たなければ不正の印を押される」といった断定的なニュアンスで用いられます。

「勝てば官軍」の使い方と例文

ビジネスでは「結果主義」を表す

「勝てば官軍」または「勝てば官軍負ければ賊軍」は、ビジネスシーンで「結果主義」を表す際に使われます。結果主義とは、プロセスや努力の糧などは考慮せず、あくまで「結果」だけで評価する姿勢や仕組みを意味します。

たとえば、いくらマナーが良好で人当たりのよい人でも、仕事で成果を出すことができなければ評価が悪くなってしまいます。これは「勝てば官軍負ければ賊軍」の代表的な例です。逆を言えば、業務態度は著しくなくても、営業成績が優れていれば「勝ち」ということでもあります。

「勝てば官軍」をビジネスシーンで使う時は「とにかく手段を選ばず結果を出せ」というニュアンスが強いです。上司が部下に「何事も勝たなくては仕方がない」というニュアンスで意気込みを吹かけたり、仲間同士で「評価は勝敗による」と現実に対する冷酷さを表す意図で使われます。

「勝てば官軍」を使った例文

  • 水泳の大会でフライングしたがバレていない。勝てば官軍だし黙っておこう
  • 勝てば官軍とはいうものの、努力ややる気が評価されないのは不公平ではないか
  • 汚い手段を使っても勝ちは勝ちだ。勝てば官軍というだろう

「勝てば官軍」の類語とは?

「勝てば官軍」の類語は「小股取っても勝つが本」

「小股取っても勝つが本(こまたとってもかつがほん)」とは、大相撲で使われる言葉の一つで「いくら汚い手を使っても勝つことが何より大切」という意味があります。相撲界だけではなく、あらゆる環境で、いくらみっともない手段を使っても勝利を収めればそれでよい、というニュアンスで使われます。

大相撲は勝ち星を挙げなければ名声を獲得することはできません。勝つことだけがよいという概念に対して、道理や体裁など気にせず形振り構わず戦うようなことを「小股取っても勝つが本」と言います。

「力は正義なり」も類語として使えることわざ

「力は正義なり」とは「何においても力を持った人が正しい」という意味があります。結局のところ、権力や能力などの「力」がある人が正しい、ということを表すことわざです。

裏を返せば「力のない者は正しくない」となりますが、むしろ「力のあるもの」にフォーカスしたことわざであるため、力のない者を否定するニュアンスは薄いと言えます。

「勝てば官軍」の対義語とは?

「勝てば官軍」の対義語は「昨日の敵は今日の友」

「昨日の敵は今日の友」とは、言葉通り「昨日は敵同士でも、今日は友達のように味方同士になる」という意味のことわざです。つまり、人の運命や心の状態はうつろいやすく、あてになるものではないという意味を持ちます。

また、広く「運命や結果はその日よって変わる」という意味で比喩的に使われます。

対義語に使えることわざは「勝負は時の運」も

「勝負は時の運」とは、「争いでの勝ち負けは、その時の運で決定する」という意味があります。勝負の世界でも、力の強い者や実力のある人が必ず勝つとは限らないことを表すことわざです。力の弱い人に対して「運が微笑んでくれるかもしれない」と励ます意図で使われることもあります。

「勝てば官軍」の英語表現とは?

「勝てば官軍」の英語訳は「Winner take all」

「勝てば官軍」は「Winner take all(勝者がすべてを持っていく)」というフレーズで言い表すことができます。勝たなければ意味がない、勝てば全てを手に入れることができるといったニュアンスで使われます。

「Might is right」という英語フレーズも

「Might is right」は「力とは正義である」という意味の英語フレーズです。「力が強いものだけが勝ち残ることができる」という考え方において、「弱くては生きていけない」「強くあれ」という意図を含んで使われる表現です。

まとめ

「勝てば官軍(かてばかんぐん)」とは「勝ちは勝ち」という意味で、「負ければ賊軍」と続けて一つのことわざとして使うこともあります。

語源は「戊辰戦争」で天皇に認められていた旧徳川幕府軍が明治新政府軍に負けた際、明治新政府軍を支持することになったことから、「勝つことが正義」とニュアンスでできた言葉でもあります。