「融通」の意味とは?「融通が利く」「融通が利かない」や類語も

「融通が利く」「融通が利かない」「融通する」といった表現を何気なく使用することも多いでしょう。「融通」の意味とは何か、しっかりと理解して正しく使いこなせるよう、例文も用いて説明します。語源の「融通無碍」や類語についても解説します。

「融通」の意味とは?

「融通」の意味は「とどこおらずに通ずること」

「融通」の意味は「とどこおらずに通ずること」「うまく運ぶようにすること」です。「表裏の関係にあるものが実は一体である」という意味もあります。

詳細は後述しますが、意味が転じて、「金銭の流通」を表す言葉としても使われることがあります。

流通では「持っている人が必要な向きに金銭・物資を貸借し合うこと」

「融通」には「滞りなく通ずる」という意味から、金銭のやりくりや流通を表す言葉にも用いられているのです。

流通の意味としては「持っている人が、必要な向きに金銭・物資を貸借し合うこと」となります。借金をする時の「いくらか融通してもらえませんか」という表現や、「資金の融通を図る」という時の「融通」はこちらの意味になります。資金の融通を得るために一時的に振り出す「融通手形」というものもあります。

読み方は「ゆうずう」

「融通」は「ゆうずう」と読みます。「通」は「通路(つうろ)」「通行(つうこう)」など「つう」とも読みますが、「融通」の場合は「ずう」が正しい読み方です。間違って「ゆうつう」とは読まないようにしましょう。

「融通」の語源とは?

「融通」は仏教用語

「融通」はもともと仏教用語であり、「融ける」「通る」という液体が流れるようなイメージの言葉が合わさってできています。「融通」には「異なるものが融けあい、あらゆるものの対立や境目が無く一体となる」という本来の意味があるのです。

もともとは「融通無碍」が語源

もともとは、「何ものにも邪魔されない状態」という意味の「無碍」と合わせた「融通無碍(ゆうずうむげ)」という熟語として用いられた言葉でした。

「融通無碍」の意味は「考え方や行動が何物にも束縛されず、どのような事態にも自由自在に対応できること」であり、「融通無碍な考え」「融通無碍に対処する」のように用います。例えば「彼女の融通無碍な発想により、そのヒット商品が開発された」というように使います。

「融通」のみで表す場合には、「融通が利く」「融通する」などと表現します。

「融通」の3つの使い方と例文

使い方①「融通が利く」

「融通が利く」と表現する場合の意味は、「臨機応変にその場にふさわしい対処ができること」です。つまり「融通が利く人」とは、「臨機応変にその場にふさわしい柔軟な対処ができる人」というとてもポジティブな意味なのです。

例文
  • 彼はとても融通が利く人で、どんな困難な場面でも頼もしいよ。

使い方②「融通が利かない」

その逆の否定的な表現である「融通が利かない」とは、「態度や考え方が一辺倒で細かいところまで注意が及ばないさま」を表します。「融通が利かない人」とは、当然ながらそのような人を表すため、人物の評価としてはかなりいただけない評価と言えるでしょう。

例文
  • 私の短所は、融通が利かないことだ。

「君は融通が利かないね」などと上司から言われてしまったら、要注意かもしれません。この場合も、その評価の原因となった事柄を把握し、「融通が利く人」を目指したいものです。

使い方③「融通する」

「融通」には他との調整をするという意味もあります。「予定を融通する」「融通をつける」と使われます。「急のミーティングを行いたいのですが、融通をつけていただけませんか?」などと用います。

「融通」の類語【使い方別】

「融通が利く」の類語は「機転が利く」「柔軟な」

「融通が利く」の類語としては「機転が利く」「柔軟な」「物分かりが良い」などがあります。「君は融通が利くね」と上司に言われたら、お褒めの言葉をいただいたことになりますので、お礼を言いましょう。さらにどのようなことについて融通が利くと評価されたのか、うまく質問して具体的なフィードバックを得られるとよいですね。

「融通が利かない」の類語は「機転が利かない」「頑固な」

「融通が利かない」の類語には、「機転が利かない」「杓子定規の」「頑固な」などがあります。言い換えれば「一途な」とも言えますが、臨機応変さが求められる場面ではネガティブなニュアンスとして使われまs。

「融通する」の類語は「都合をつける」「取り計らう」

「急なミーティングを行いたいのですが、融通をつけていただけませんか?」などと用いた場合の類語としては、「都合をつける」「取り計らう」となります。

「融通」を敬語として使う場合

「融通をお願い致します」「融通いただき、ありがとうございます」

それでは取引先や上司になんらかの融通を依頼したい場合や、融通してもらったことへのお礼を述べたい場合などは、どのように敬語表現をするのが適当なのでしょうか?

依頼する場合は「融通をお願い致します」のようにお願い表現とし、お礼の場合は「融通いただき、ありがとうございます」のように「もらう」の謙譲語である「いただく」を付けて敬語表現とするのが一般的です。

「融通」を「ご融通」とはしない

敬語を使うときに、謙譲語の「ご」をつけた方がよいのかどうか迷う方もいるでしょう。「ご融通」は正しい表現でしょうか?

実は自分のためにする行為には「ご」をつけない、という使い分けのルールがあります。そのため、調整してもらうことを意味する「融通」を「ご融通」とするのはそぐわないので注意してください。

まとめ

もともとは仏教用語であった「融通無碍」から派生した「融通」という言葉。「融通が利く」や「融通する」など、状況に応じて意味が少しずつ異なっています。「融通」という漢字から「融けて通る」というような、水が融けあい流れる様子をイメージしてみると、それぞれの言葉に含まれる意味合いをつかみやすいかもしれません。言葉の成り立ちを知ることでビジネスシーンでも自信を持って使いこなすことができます。