「アンチ」とは「反対」「対抗」の意味を加える接頭語です。主な用法は「アンチエイジング」「アンチテーゼ」などです。しかし、近年はインターネットを中心に「特定の対象を嫌悪し誹謗中傷する人」という使い方が広まっています。「アンチ」の意味や例文、アンチ活動をする心理を解説しましょう。
「アンチ」の意味とは
「アンチ」とは「反対・対抗」を表す接頭語
「アンチ」は英語「anti」が元になったカタカナ語です。後ろに続く言葉に「反対」「対抗」や「排斥」の意味を加える接頭語になります。例えば「アンチウィルスソフト」は、コンピューターウィルスを防ぐソフトを意味します。
ネット用語では「〇〇を嫌い誹謗中傷する人」
ネット用語では「特定の対象を嫌い、誹謗中傷などの迷惑行為をする人」という意味です。嫌いな対象そのものだけでなく、対象のファンも憎んで嫌がらせをする人もいます。なお、誤用に近いのですが「改善を願って矛盾点を指摘する人」でも「悪口を言うからアンチだ」と言われることがあります。
本来の「アンチ」と違い、人を表す言葉になっていることに注意しましょう。
ネット用語定着のきっかけは野球ファン
現在の意味で広まったきっかけは野球ファンだと考えられています。1970年代頃から野球ファンの間で使われていた「アンチ〇〇」が、インターネット掲示板で流行したという説です。
野球ファンは球団名の前に「アンチ」をつけて「その球団へ対抗する人」を表現していました。1999年には、野球ファンが集まるインターネット掲示板で「アンチ〇〇」が使われ続けます。野球以外の話題の掲示板でも「アンチスレ(対象が嫌いな人のためのトピック)」などの「アンチ〇〇」が利用され始めました。
そこから少しずつ意味合いが過激になり、現在の「誹謗中傷する人」という意味になったようです。
ネット用語「アンチ」の使い方・心理
「〇〇のアンチ」は「〇〇が嫌いな人」
「〇〇のアンチ」とは「〇〇が嫌いな人」「〇〇やファンへ誹謗中傷・迷惑行為をする人」として使います。〇〇にはさまざまな物事や作品、人が入りますが、主に入るのはアニメ・マンガなどの作品名です。話の流れで対象が分かることが多いため、前半を省略して「アンチ」と表すことがよく見られます。
「アンチ活動」とは誹謗中傷や迷惑行為
「アンチ活動」とは、嫌う対象を貶めるための誹謗中傷や迷惑行為です。掲示板やSNSで誹謗中傷します。ファンが嫌な気分になるよう「作者がうざい」「クズ作品」などの過激な言葉を使うことも多くあります。
「アンチ」になる心理はさまざま
アンチになる心理はさまざまで、「対象が嫌い」だけではありません。例えば「楽しむため」です。みんなと一緒に悪口を言うこと自体が楽しいタイプや、激しく対立する様子を娯楽にするタイプがいます。アンチが有利になりすぎないよう、ファンのふりをして争いを長期化させる人もいるようです。
近年では、心理的な理由ではなく儲けのためにアンチ活動が行われることもあります。ファンとアンチの対立を過激化させ、そのやり取りをブログなどにまとめます。まとめ記事の閲覧数が伸びることで、広告費が増えることが狙いです。
「アンチ」の例文
- アンチとファンの対立が過激化しているので、作者が落ち込んでいないか心配だ。
- 気になる韓国ドラマがあったのでSNSで検索した。アンチがいないので、安心して楽しめそうだ。
- 「主人公は成績優秀者という設定なのに、こんなミスをするのはおかしいのでは?」「お前、アンチだな。アンチスレに行ってくれ」
ネット用語「アンチ」の類語・英語表現
「アンチ」の類語は「クレーマー」「ファンチ」
「アンチ」の類語は「クレーマー」です。一般的に使う用語で、店員へ(多くは自分勝手な)苦情を言う客を意味します。
「ファンチ」もアンチの類語になります。「ファンとアンチの要素を持つ人」という意味です。善意のファン活動が迷惑行為になってしまう「アンチのようなファン」や、批判するために誰よりも詳しくなってしまった「ファンのようなアンチ」を表す言葉です。
「アンチ」の英語表現は「hater」
アンチの英語表現は「hater(カタカナ表記:ヘイター)」です。特定の対象を嫌う人のことですが、近年では「インターネットで非難する人」の意味で用いられています。
アンチの元になった「anti」にも「反対論者」という意味もありますが、haterほど一般的ではありません。アメリカでは「反対を意味する接頭語」という意味しか掲載しない辞書もあるようです。
その他の「アンチ」の使い方
接頭語としての例「アンチエイジング」「アンチテーゼ」
よく用いられる「アンチ〇〇」は「アンチエイジング」や「アンチテーゼ」です。「アンチエイジング」は「エイジング(老化)」への対抗を意味する言葉です。老化が原因の病気を防ごうとするものや、化粧・マッサージ・美容外科などで外見の老化を改善するものがあります。
「アンチテーゼ」は「反対理論・主張」という意味です。議論の場で使う場合は「相手の主張をすべて否定するのではなく、一部認めた上で反対意見を述べる」ことを表します。
工事現場では「足場を組み立てる資材」
工事現場で使われる「アンチ」は、足場を組み立てる資材の1つです。通路や床板として使います。名前の由来は「アンチスリップ」で、由来の通り滑り止めが施されています。(スリップの意味は「滑ること」)
まとめ
「アンチ」は日常会話とインターネット上で使い方に差がある言葉です。今後はクレーマーの類語として一般にも浸透するかもしれません。しかし、現時点ではまだ俗語扱いですので、TPOに合わせて意味を使い分けましょう。