「沽券」の意味と語源とは?「沽券に関わる」の使い方や類語も紹介

「沽券」とは「人の品位や面目」という意味です。「沽券に関わる」という慣用句でよく用いられますが、使い方がわからないという方も多いかもしれません。

今回は、「沽券」の意味や語源とあわせて、「沽券に関わる」の使い方を解説します。「沽券」の類語や英語表現も紹介しましょう。

「沽券」の意味とは?

沽券とは「人の品位、品格、面目」を意味する

「沽券」とは「人の品位や面目」という意味です。「沽券」は人の値打ちを表す言葉で、その人の気高さや立派なことを表しています。

「沽券」を使った例文
  • 私の沽券にかけて、材料選びから真剣だ
  • 沽券を守るためなら、私はなんでもする
  • 普段は手を抜いているように見えても、私にだって沽券はある

沽券の読み方は「こけん」

沽券は「こけん」と読みます。かつては「うりけん」という読み方もされていましたが、現在では「こけん」という読み方が一般的です。

「沽」とは「売る」や「買う」、また「売り買いする」という意味のほかにも、「値打ち」という意味もあります。「券」は「手形」の意味で、切符や印紙などの金券の代わりとしての紙類を指しています。

「沽券」の語源と用語とは?

「沽券」はかつて「売買証文」だった

「沽券」とはもともと江戸時代の「売買証文」のことで、土地や家などの売買契約をしたときの証明書として売り主から買い主に渡されていたものです。「沽券状」や「沽券証文」とも呼ばれていたこの証文には、売り買いされたものの詳細として、家の広さや価格などが書かれていました。

この沽券が「売買」という意味で使われるようになり、さらに「人の値打ち」や「品位」という意味になったとされています。

「沽券地図」とは「沽券をもとにした地図」

「沽券地図」とは、沽券が土地や家の売買証書という意味で使われていたときの言葉です。売買証書をもとに描かれた地図のことで、「沽券絵図」とも言われます。

「沽券地」とは「売買を許された土地」

「沽券地」とは売買を許された土地のことです。江戸時代の町人は、土地を永代所持することが許されていたため、土地の売買も許されていました。そのような土地を「沽券地」と呼びます。

「沽券」の使い方と例文

「沽券に関わる」とは品位が保てないことを表す慣用句

「沽券に関わる」とは「品位が保てない」という意味の慣用句です。よく使われる言い回しで、人に誇りを傷けられたときや、仕事や試験に失敗して自分の誇りが損なわれた時に使われます。

自分の価値が下がったという意味合いが含まれるため、自分の誇りが傷き、それによって世間体が悪くなったと思えるようなときに使いましょう。

「沽券に関わる」の例文
  • 沽券に関わるので、あえて条件は下げないで交渉を進めたい
  • 上司の沽券に関わる問題なので、あえてその話題に触れないほうがいい

「沽券が下がる」とは品位が下がるという意味

「沽券が下がる」とは「品位が下がる」という意味の慣用句です。あることをした結果、その人の品位が落ちて面目がなくなることが予想されるときに使われます。

「沽券が下がる」の例文
  • 沽券が下がるような行動は慎んだ方がいい
  • 彼の同僚をバカにしたような発言で、彼の沽券が下がった

「沽券」と「沽券に関わる」の類語・言い換え

「沽券」の類語は「尊厳」「矜持」など

「尊厳(そんげん)」とは、「気高いことやその様子」という意味で、厳かな状態を指して使われます。「尊厳死」のように人の生命に関わるような大事なことに対して使われる言葉です。

「矜持(きょうじ)」とは「誇りやプライド」という意味で、特に自分が自分の能力で誇れる気持ちを指しています。

「尊厳」と「矜持」の両方とも「沽券」の類語ですが、「尊厳」と「矜持」は人の品位の高さを強調するときに用いられることが多いのに対して、「沽券」はその人の値打ちを強調するときに使われます。

「沽券」の類語には「プライド」も

「プライド」とは「誇り」や「自尊心」という意味の言葉で、英語の「pride」が語源です。

「プライド」と「沽券」は、「人の特徴として優れていると思っていること」という意味では類語ですが、「プライド」は態度や言動に表れ出る誇りを指して使われ、「沽券」は内省的な誇りを指していることが多いという違いがあります。

「沽券に関わる」の類語は「面目が立たない」

「面目(めんぼく)が立たない」とは「世間体が保たれない」という意味で、対義語である「面目が立つ」という慣用句を否定した形です。「沽券に関わる」とほぼ同じ意味になります。

「面目が立たない」の例文

失敗したままでは、私の面目が立たない

「立つ瀬がない」も「沽券に関わる」の類語

「立つ瀬がない」は「面目が立たない」という意味で、「沽券に関わる」の類語です。「立つ瀬」とは「立場」を意味していて、「立つ瀬がない」という言い回しで「自分の立場がないこと」を表しています。

「立つ瀬がない」の例文

断られては困ります。立つ瀬がなくなりますので、ぜひお受け取り下さい

「沽券に関わる」は「肩身が狭い」に言い換えも

「肩身が狭い」とは、「世間体が保たれない」という意味ですが、世間の目を気にしてひけめを感じているという意味も含まれています。世間体を保てなくて恐縮してしまったり恥ずかしくなったりしたときには、「肩身が狭い」と言い換えられます。

「肩身が狭い」の例文

仕事で失敗してしまったので、肩身が狭い思いがした

「沽券」の英語表現

「沽券」は英語で「dignity」

「沽券」は英語で「dignity」と表現します。「dignity」は「品位」や「尊厳」等とも訳される言葉で、威風で堂々とした人の様子を指して使われます。

「沽券」を使った英語例文

“It wan an unavoidable choice in order to save my dignity.”
「沽券を守るためには仕方のない選択だった」

「沽券に関わる」の英語表現も「dignity」を使う

「沽券に関わる」も「dignity」を使って表現します。「~に関わること」は問題を意味する「matter」を使うと上手に訳せるでしょう。

「沽券に関わる」の英語例文

“I can’t tell you any more, because it’s a matter of dignity for may boss.”
「上司の沽券に関わることなので、これ以上は話せません」

まとめ

「沽券」とは「品位」や「面目」の意味で、「沽券に関わる」という慣用句がよく使われます。江戸時代には「沽券」は土地などの売買証文のことで、その意味が転じて現代でも使われるようになりました。「沽券」の類語には「尊厳」や「矜持」などがあります。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。