「まんじ(卍)」は寺の地図記号で馴染み深い人が多いかもしれません。「卍」が地図記号になったのは、仏教上の意味が関係しています。2016年頃の流行語「マジ卍(まじまんじ)」や、ナチスの卐(ハーケンクロイツ)、似た形の「卐」について解説しましょう。
「まんじ(卍)」の本当の意味とは
「まんじ(卍)」とは「めでたい印」を意味する
「まんじ(卍)」を流行語として認識している人もいますが、本来の意味は「めでたい印」です。仏教では釈迦の胸にあらわれる印で「和の元」と言われています。
ヨーロッパでも古くから良い意味で使われている古典的な文様です。十字架の元になったという説もあります。古代ギリシャでは、太陽の恵みが続くことを表すめでたいシンボルでした。20世紀初頭には幸運のシンボルとして流行しています。
詳細は後ほど説明しますが、近年のヨーロッパでは「卍」にネガティブな印象を受ける人もいます。
地図記号「卍」は「寺」を意味する
「卍」は地図記号で「寺」を表します。理由は、仏教で「めでたい印」を意味するためです。寺院では良い意味のある卍を彫刻してあることが多いため、地図記号に採用されました。
「卍」と「卐」の違い
「卍」を逆にしたような記号に「卐」があります。読み方は「逆まんじ」「右まんじ」です。「(逆)鉤十字」と呼ぶこともあります。
卐も「めでたい印」です。意味が似ていることから卐は「卍の異体字(読みや使い方は同じだが、形が違う字)」として扱われることもあります。違いがある印として使い分ける場合もあり、例えば仏教の場合は「力の元」とされています。
「卐」は「卍(まんじ)」以上に、ネガティブな印象を受ける人がいる記号です。こちらも、詳細は後ほど説明します。
「まんじ(卍)」の流行語としての意味・使い方
流行語「まんじ(卍)」の意味はあやふや
流行語「まんじ(卍)」は、意味があいまいな言葉です。気分が盛り上がった際に使われることが一般的でしたが「特に意味はなく、なんとなく使っていた」という意見もありました。気持ちを言語化できないときに使う人もいたようです。
例えば、楽しいライブが始まる時も「卍だわ」、浮かれている人を非難するときも「あの人、卍だよね」です。「はい、チーズ」のような写真をとる掛け声として「はい、卍」と使うこともありました。意味が広くて曖昧なため、適当に使っても誤用にならない万能語と言えるでしょう。
「マジ卍(まじまんじ)」「ガチ卍(がちまんじ)」
流行語の「卍」は、「マジ卍(まじまんじ)」や「ガチ卍(かちまんじ)」のように使われていました。「卍」を「マジ」「ガチ」で強調した語句です。特に多いのが「マジ卍」で、定型句のように使われることが多かったようです。
流行語「まんじ(卍)」の語源は「マジ」という説も
流行語「卍」の語源は明確ではなく、諸説ある状態です。有力な説は「マジ」です。音が似ていて、続けて使うと語呂が良いことから自然発生したと考えられます。
「マジ」とは「本気」や「真剣」の意味で使われます。1980年代に流行し若者言葉として定着していますが、江戸時代から同じ意味で使われていました。当時は芸人の業界用語として用いられ、歌舞伎の台詞に採用されることもあったそうです。
流行語「まんじ(卍)」は女子高生を中心に大流行
「卍」が流行したのは2016年頃です。流行の中心は女子高生でした。流行当時でも、大学生以降にはそこまで浸透していなかったようです。流行のきっかけは不明で、タレントや一般の動画配信者が広めた説があります。
現在でもSNSで使う人はいますが、かつてのような流行はしていません。死語だと思う人もいるため、親しくない相手に使うのは避けたほうが無難です。
「まんじ」と「ナチスのハーケンクロイツ」の関係とは
ナチスのハーケンクロイツは「卍」ではなく「卐」
「卍」の類語・異体字の「卐」は、ナチスのシンボルマークとして採用されました。ナチスは第二次世界大戦頃のドイツの政党のため、「卐」はドイツ語で鉤十字を意味する「ハーケンクロイツ」と呼ばれています。
「卐」が採用された理由は明確ではありません。ヨーロッパでは卍とあわせて古典的な文様で、遺跡からも発見されていたことが関係すると考えられています。(ルーン文字を重ねて作ったという説もあります)
「卐」に対する海外の反応はネガティブ
本来はめでたい印の卐ですが、現在ではネガティブな印象を持たれやすくなっています。シンボルマークに採用したナチスが、第二次世界大戦中に過激な侵略戦争や虐殺を行ったためです。
海外では「卐はナチスを思い出す忌まわしいマーク」だと受け取る人が多く、使用を自粛する国・企業もあります。日本では禁止されていませんが、使用するべきか慎重に判断しましょう。
「卐」と似た「卍」も使ってはいけない?
「卐」と似ている「卍」も「ナチスを連想するから使ってはいけない」という意見があります。かつては「地図記号も変えよう」という議論も起きたほどです。
地図記号は長年の宗教観や文化に関わるため、継続して使用されています。その他の場面でも、使用する理由があるのなら、無理に避ける必要はありません。ただし、由来を説明するなどの配慮を忘れないようにしましょう。
まとめ
「まんじ」「卍」は洋の東西を問わず古くから使われていて、基本的には良い意味のシンボルです。ただし、ハーケンクロイツを連想してネガティブな印象を持つ人もいるため、注意が必要な場面もあります。2010年代後半には女子高生の間で大流行していました。