「虻蜂取らず」の意味と語源は?使い方の例文や似たことわざも紹介

「虻蜂取らず」とは、欲を出して2つのものを狙い失敗したときに使うことわざです。似た意味の表現では「二兎追う者は一兎も得ず」がよく使われています。

ここでは「虻蜂取らず」の意味と語源、使い方と例文、類語と対義語、また英語と中国での表現について紹介しています。さっそく解説していきましょう。

「虻蜂取らず」の意味・読み方・語源は?

「虻蜂取らず」は「欲張れば失敗する」の意味を持つことわざ

「虻蜂取らず」の意味は、「欲張れば失敗する」です。二つの虫「虻」と「蜂」が登場しますが、この二つの虫を同時に退治しようとしても、一つどころかどちらも捕まえることができない、ということです。

つまり「欲張って二つのもの得ようとしても、どちらも得られず失敗に終わること」を指す言葉なのです。

「虻蜂取らず」の読み方は「アブハチトラズ」

「虻蜂取らず」の「虻蜂」は読み方が難しいですが、「虻(あぶ)」と「蜂(はち)」で「アブハチ」となります。ことわざ全体の読み方は「アブハチトラズ」です。

「虻蜂取らず」の語源と由来は正式にはない

「虻蜂取らず」の語源と由来は正式にありませんが、人々の行動から学んだ教えの一つだとされています。

虻も蜂も両方とも退治しようする人が、どちらかの一つはおろか、両方とも取り逃がしてしまう、ということから来ているとされ、欲を出せば結局のところ何も捕まえられない、得られないということの教えとして広く使われるようになりました。

「虻蜂取らず」の使い方と例文

方向性を絞るよう戒めの意図で使われる

「虻蜂取らず」は、あれこれと欲張ってしまう状況で「それはやめたほうがよい」と戒めの意図で使われます。たとえば、ビジネスシーンでは業績を上げようとするあまりに、仕事への方向性や活動内容、ターゲットなどが曖昧になりがちです。そのような状況で「虻蜂取らずだ」と戒め、一つに絞るほうが良いという意図で使われます。

「虻蜂取らず」を使った例文

「虻蜂取らず」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • N社とM社、どちらとも取引をしたいが、虻蜂取らずでやっぱり一つに絞ろう。
  • 虻蜂取らずではないが、事業の方針が多すぎると一つも順守できない恐れがある。
  • トレンドに着目するか、元来のスタイルを通すか、虻蜂取らずになる前に決定すべきだ。
  • 虻蜂取らずで、別のマーケットに手を出し失敗をする企業は多いと言われている。

「虻蜂取らず」の短文

「虻蜂取らず」には「虻蜂取らず鷹の餌食」は「虻も蜂も取れず、なおかつ鷹のエサになる」、「虻も取らず蜂に刺される」は「虻さえ取れずに、さらに蜂に刺される」という、それぞれ痛い意味を持つ短文があります。併せて覚えておきましょう。

「虻蜂取らず」の類語

類語①「二兎を追うもの一兎も得ず」

「虻蜂取らず」の類語で最も知名度があり、日常的にもよく使われるのが「二兎を追うものは一兎も得ず」でしょう。二匹のウサギを追っても、一匹どころか何も捕まえることはできないという意味のことわざです。欲張ると返って失敗するということのたとえとして使われます。

類語②「欲は身を失う」「花も折らず実も取らず」

「虻蜂取らず」の類語には「欲は身を失う」「花も折らず実も取らず」「一も取らず二も取らず」「多欲は無欲に似たり」などがあります。どれも「2つ以上のことをしようとすると、得られるものは無である」ということを表すことわざです。

「虻蜂取らず」の対義語

「虻蜂取らず」の対義語は「一石二鳥」「一挙両得」

「虻蜂取らず」の対義語にあたるのは「一石二鳥」「一挙両得」などです。一つのことをして、二つを得るという意味があります。

「虻蜂取らず」の英語・中国語表現

英語では「fall between two stools」

英語で「虻蜂取らず」を表現するときは、「fall between two stools(2つの椅子の間に座ろうとして落ちる)」が適切でしょう。「stool」とは椅子の後ろ側に背もたれがついていない椅子のことで「欲張って2つの椅子に座ろうとしても、間に落ちてしりもちをつくだけである」というニュアンスで使われます。あえて「chair(通常の椅子)」を使っていないのは、もともと「落ちやすい椅子の代表」であるからだと考えられます。

  • You should pick one of them otherwise you just fall between two stools.
    どちらか選ぶべきだ。さもないと虻蜂取らずで失敗するぞ。

中国語では「鸡飞蛋打(jī fēi dàn dǎ)」

中国語で「虻蜂取らず」と同じ意味を表す言葉は「鸡飞蛋打(jī fēi dàn dǎ)」です。意味は「鶏には逃げられてしまうし、卵は割れてしまうし、両方を狙っても何も得られない」となります。

ちなみに同義語の「二兎を追う者は一兎をも得ず」の中国語表現は「追二兔者不得一兔(zhuī èr tù zhě bù dé yí tù)」です。併せて覚えておきましょう。

まとめ

「虻蜂取らず」は「欲を出して同時に二つを得ようとしても、一つどころかどちらも得られず失敗に終わること」を意味することわざです。類語には一般的によく知られる「二兎を追うものは一兎も得ず」があります。

職場では評価や成果を上げようと、仕事への方針や戦略を「あれもこれも」と増やしがちです。「虻蜂取らず」の教えに学び、曖昧な考えで行動しないように心がけるようにしましょう。