「行かせていただきます」は「会いに行く」という意味で使われているのですが、間違った敬語表現だということをご存知ですか。では、正しくはどのような言い換え表現があるのでしょうか。
この記事では「行かせていただきます」の意味や使い方のほかに、使うときの注意点や言い換え表現を紹介します。
「行かせていただきます」の意味とは?
「行かせていただきます」とは「会いに行く」という意味
「行かせていただきます」の意味は「会いに行く」です。「行かせていただきます」の「行かせる」は「行く」の使役表現で、「人を行くように仕向ける」という意味です。
また「いただく」は補助動詞として使われていて、相手に自分の動作を許してもらうという意味の謙譲語になります。補助動詞の「いただく」は、「させていただく」「読ませていただく」のように使われます。
「行かせていただきます」は正しい敬語ではない
「行かせていただきます」という言い回しは尊敬表現として間違っています。「会いに行く」という意味で敬語表現にするなら、「行く」を自分がへりくだることで相手に敬意を見せる謙譲語を使うべきで、「参る」や「うかがう」を使います。
しかし「行かせていただきます」は、ビジネスシーンや日常的にもよく使われています。つまり、慣用的に使われているので、間違った敬語だと自覚なく使われていることも多いでしょう。とはいえ、「行かせていただきます」尊敬表現としては間違っているので、あまり多用しないのがおすすめです。
「行かせていただきます」の使い方と例文
「行かせていただきます」はあまり使わないほうがいい
「行かせていただきます」は間違った敬語表現になりますから、使わないことに越したことはないいいでしょう。しかし慣用的に使われていることから、相手に対して1回程度は使ってもいいことにして、それ以上は使わないようにしましょう。
「一緒に行かせていただきます」ではなく「ご一緒させていただく」を使う
「ご一緒させていただきます」とは「同行する」という意味の敬語表現として使われています。「ご一緒させていただきます」も敬語として正しくはないのですが、慣用的に使われています。
「ご一緒させていただきます」が誤用である理由は、「一緒」が「一緒する」という動詞として使われていることです。「一緒する」という動詞はないことから間違った表現になります。
しかし「一緒に行かせていただきます」よりは「ご一緒させていただきます」のほうが敬語表現としても違和感なく使われているので、「一緒に行く」という意味なら「ご一緒させていただきます」を使いましょう。
「行かさせていただきます」は間違った言い回し
最近よく「行かさせていただきます」という言い回しが聞かれますが、「行かさせる」は「行かせる」のさ入れ言葉となり正しくありません。「さ入れ言葉」とは、必要のない「さ」が入る表現のことで、文法として誤りだとされています。
「行かさせていただきます」は間違った日本語表現ですので、使わないようにしましょう。
「行かせていただきます」の言い換え表現
「伺います」は「会いに行く」という意味の正しい謙譲表現
「伺います」は「会いに行く」という意味の謙譲表現です。短い言い回しですが、相手に敬意を表した正しい敬語で、「行かせていただきます」の言い換え表現です。
「伺わせていただきます」という言い回しも聞かれますが、これは「伺う」と「させていただく」の両方が敬語となる二重敬語となり、日本語として間違った表現ですので使わないほうがいいでしょう。
- 明日の14時に伺います
- 明日の14時に伺ってもよろしいでしょうか
- 明日の14時に伺いたいと存じます
「参ります」も「行かせていただきます」の言い換え表現
「参ります」も「行く」という意味の正しい敬語表現で、「行かせていただきます」の言い換え表現です。「参る」が「行く」の謙譲語で、自分がへりくだることで丁重な表現になります。
- 明日の10時に参ります
- 明日10時にお宅に参りますが、ご都合よろしいでしょうか
「行かせていただきます」の返答の仕方と例文
「行かせていただきます」と言われたら丁寧に対応する
「行かせていただきます」と言われたら、相手には丁寧に対応しましょう。間違っても、「行かせていただきます」が敬語として間違っているなどのように指摘はしないほうが無難です。相手は自分のところに来ることを伝えてくれているのですから、感謝の気持ちをもって対応しましょう。
「行かせていただきます」への返答例文
- かしこまりました。では、お役のお時間にお待ちしております。
- 承知いたしました。気を付けておいでください。
「行かせていただきます」の英語表現
「行かせていただきます」は英語で「will be there」
「行かせていただきます」は英語で「will be there」という表現が使えます。「行く」は英語で「go」ですが、「行く」を「そこにいる」と解釈して未来形を使った「will be there」の方が自然な英語表現になります。「will be there」では尊敬表現が使われていませんが、目上に人にも使えます。
“I will be there tomorrow at 2pm.”
「明日の午後2時に行かせていただきます」
「ぜひ行かせていただきます」は「happy」を使う
もしも「ぜひ行かせていただきます」のように「行かせていただきます」を丁寧な表現にしたいのなら、行きたいという気持ちを強調します。「行くことができて嬉しい」という言い回しになり、そのうれしいという感情を伝えために「happy」を使って英訳するといいでしょう。
“I would be happy to go.”
「ぜひ行かせていただきます」
まとめ
「行かせていただきます」は「会いに行く」という意味です。尊敬表現としては間違っているのですが、慣用的に使われています。正しい敬語表現として言い換えるなら、「伺います」や「参ります」があります。