「ノブレスオブリージュ」とは「特権階級(権力・財力を持つ人)には義務がある」という、ヨーロッパでは一般的な精神・道徳観です。日本ではあまり広まっていないことから、マンガやゲームの用語だと勘違いしている人もいるかもしれません。ノブレスオブリージュの意味や使い方を説明しましょう。日本の「武士道」との関係も紹介します。
「ノブレスオブリージュ」の意味
「ノブレスオブリージュ」の意味とは「特権階級には義務がある」
「ノブレスオブリージュ」の意味とは「特権階級には果たすべき責任・義務がある」です。高潔な言動や、民衆への思いやり・施しが重視されます。かつては王族や貴族などの「高貴な生まれの人」が該当しました。現在では政治家や富豪などの「権力・財力がある人」にもノブレスオブリージュが求められています。
「ノブレスオブリージュ」は法律で定められたものではないため、守らなかったことによる刑罰はありません。しかし、周囲から強く非難され、社会的な罰を受けることもあり得ます。
「ノブレスオブリージュ」はフランス語が元になったカタカナ語
「ノブレスオブリージュ」は、フランス語の「noblesse oblige」が元になったカタカナ語です。「ノブレス・オブリージュ」や「ノーブレスオブリージュ」と表記することもあります。
ちなみに、英語では「noble obligation(カタカナ語表記:ノーブル・オブリゲーション)」です。
「ノブレスオブリージュ」はヨーロッパで生まれた精神
「ノブレスオブリージュ」は19世紀のヨーロッパで生まれた精神・道徳観です。フランスの「貴族は、身分に相応しい言動をしなければいけない」ということわざが元になったと考えられています。
「ノブレスオブリージュ」の使い方
「ノブレスオブリージュ」は寄付・ボランティアに使われる
現在、「ノブレスオブリージュ」の考えは寄付・ボランティアなどの慈善活動を行う形で実現されています。特に有名なのはイギリスです。現在も貴族・王族の制度が残っているため、ノブレスオブリージュの実現のためにさまざまな活動が行われています。
貴族・王族制度がない国でも、富裕層の慈善活動が「ノブレスオブリージュの精神で行われている」とされることがあります。
「ノブレスオブリージュ」を企業のリーダーに求める意見もある
「ノブレスオブリージュ」を企業のリーダーに求める意見もあります。労働者や顧客へ高潔・誠実であるべきという考えです。
例えば、産地偽装や労働基準法違反などが「ノブレスオブリージュが欠落している」と表現されることがあります。
「ノブレスオブリージュ」には格差社会を擁護する用法もある
「ノブレスオブリージュ」には格差社会を擁護する会話で使うこともあります。ノブレスオブリージュを認めるということは「特権階級とそれ以外の人々の間に格差があってもよい」と認めることになると言われることがあるためです。
反対に「ノブレスオブリージュのない平等な世界を目指すべきだ」と、格差社会を否定する使い方も可能です。
「ノブレスオブリージュ」と日本の武士道
「武士道」は日本のノブレスオブリージュとする意見も
「武士道(ぶしどう)」は「日本のノブレスオブリージュ」と考える人もいます。「武士道」とは、日本の武士の理想像を元にした道徳観です。時代や地域によって解釈が違うため明確な定義はありませんが、概ね「忠義や信義、礼儀」を重要視しています。
元々は戦う際の心得を意味していました。次第に主君や国家へ尽くすための心得に変化していきます。武士が廃止された明治時代以降は、身分を問わない道徳観として浸透しました。
現代日本に「ノブレスオブリージュ」はない?
現代日本には「ノブレスオブリージュ」が根付いていないという意見もあります。海外に比べて「特権階級の寄付やボランティア活動が活発ではない」ことが理由にされています。
理由は明確ではなく、諸説ある状態です。「貴族制度が廃止されて以降、ノブレスオブリージュの教育を受けている人がいないから」や「慈善活動を偽善だと批判する人が多いから」などです。
先述した武士道が理由だとする意見もあります。武士道が身分を問わない道徳観に変化して浸透したため「特権階級だけを対象にするノブレスオブリージュが根付かなかった」という考えです。
「ノブレスオブリージュ」の類語・対義語
「ノブレスオブリージュ」の類語は「騎士道」
「ノブレスオブリージュ」の類語は「騎士道(きしどう)」です。中世ヨーロッパで騎士の理想的な道徳として広まりました。勇敢さやキリスト教の教えの厳守、弱者(特に女性)の守護が重視されました。
武士道と同じく時代の中で変化してきた道徳観です。
「ノブレスオブリージュ」の言い換えは「〇〇の責任」
ノブレスオブリージュの言い換えに使える言葉は「責任」です。類語としての意味は「その立場の人が必ず負う義務や役割」です。
ノブレスオブリージュを政治家に求める場合は「政治家としての責任を果たしてほしい」のように言い換えます。
「ノブレスオブリージュ」の対義語に近いのは「特権意識」
厳密には「ノブレスオブリージュ」の対義語はありません。対義語に近いのは「特権意識」になります。「特権意識」とは「特権があることを理由にした優越感」です。一般的にはネガティブなニュアンスが強い言葉で、特権を理由に自己中心的に振舞う人を批判する意味で用いられます。
まとめ
「ノブレスオブリージュ」は19世紀にヨーロッパで生まれ、現在も用いられています。ビジネスシーンで求められることもあるため、「自分とは無関係な世界の考え」と遠ざけず、ニュアンスを把握しておきましょう。