人を雇ったら絶対に渡さなければならないのが「労働条件通知書」です。社員に渡さなかった場合、罰金を支払わなければならないこともありますので注意しましょう。今回は、「労働条件通知書」の記載事項や書き方などを紹介します。
「労働条件通知書」とは?
働く時間や給料などの労働条件を記載したもの
「労働条件通知書」は、働く時間や給料などの労働条件を書面に書いて社員に渡さなければならない書類です。つまり、労働条件を書面にまとめたものです。
労働基準法15条で、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」とされています。
「労働条件通知書」を渡さないと罰則もある
会社は「労働条件通知書」を渡す義務があります。渡さなかった場合には労働基準法120条により、30万円以下の罰金を支払わなければなりません。
アルバイトやパートでも必要
労働条件通知書は、正社員にのみ渡すものではなく、パートやアルバイトにも渡す必要があります。「労働契約の締結に際し」と書かれていますので、短期間のアルバイトでも、労働契約をしている人は全員必要です。
「労働条件通知書」の記載事項は?
「労働条件通知書」には、絶対に記載しなければならない「絶対的明示事項」と、会社に決まりがある場合などに伝えなければならない「相対的明示事項」があります。それぞれ紹介します。
「労働条件通知書」に必須の記載事項
「労働条件通知書」に絶対に記載しなければならない記載事項を「絶対的明示事項」と言います。絶対的明示事項には以下のものがあります。
- 契約期間
契約期間のない正社員の場合は「なし」と記載し、契約期間がある場合は期間を記載します。 - 就業場所
働く場所を記載します。基本的には会社や働く店舗などの住所を記載します。 - 従事する業務
業務内容を記載します。幅広い業務に従事する場合は、複数書いても問題ありません。 - 始業時刻と終業時刻
決まっている場合は、始業時刻と終業時刻を記載します。シフト制などで決まっていない場合は、ルールを記載しても問題ありません。 - 残業の有無
「所定労働時間」を超えて働く可能性があるかどうかを記載します。「所定労働時間」とは、会社で定めた労働時間です。 - 休憩・休日・休暇
休憩時間や休日、休暇について記載します。 - 賃金・計算方法・支払い方法
賃金を記載します。月給・日給・時給など、計算方法や、銀行振込などの支払い方法の記載も必要です。また、社会保険料や税金など、控除するものも記載しておきましょう。 - 賃金の締め日と支払日
いつからいつまでの賃金を何日に支払うかを記載します。例えば、「月末締め、翌月15日支払い」や「20日締め、当月末支払い」など、会社の決まりに合わせて記載しましょう。 - 昇給
昇給がない契約であっても、必ず明示しなければなりません。ない場合は、「無」と記載しましょう。ある場合は、昇給の時期や基準などを記載します。 - 退職
定年退職の年齢や、自己都合による退職の際に何日前に連絡が必要かなどを記載します。また、解雇になる自由なども記載しましょう。
該当するときに必要な記載事項
就業規則など、会社に規定がある場合に伝えなければならない事項です。書面に記載せずに口頭で説明しても構いませんが、トラブル防止のために記載したほうがよいでしょう。
- 退職手当
退職手当の制度がある場合に記載します。誰に、いつ、どのように計算した金額を、どうやって支払うのかを記載しましょう。 - 臨時の賃金・賞与
臨時の賃金・賞与とは、業績などによって支払われる報奨金や、ボーナスのことを言います。何を基準に、いつ、どのように支払うのかを記載しましょう。 - 労働者に負担させる食費や作業用品
従業員用の食堂などで食事を提供する場合に社員に支払ってもらう食費や、作業着や制服などの必要なものを購入させる場合には、明確に記載が必要です。 - 安全衛生
機械工具の点検や保護具の着用など、災害補償に関することや、喫煙場所や健康診断の時期や回数など、安全衛生に関する事項を記載します。 - 職業訓練
職業訓練の受講など、会社で定められたものがある場合には記載します。 - 災害補償・業務外の疾病扶助
働く人が怪我をしたり、病気になった場合の会社の補償について記載します。 - 表彰・制裁
会社に表彰や制裁の制度がある場合に記載します。 - 休職
産休など法律で定められたものではなく、会社に独自の制度がある場合には記載します。
「労働条件通知書」の書き方
労働条件通知書の記載例
契約期間 | 2018年9月1日~2019年8月31日 |
就業の場所 | 東京都〇〇区〇〇1-2-3 |
従事すべき業務 | 営業 |
始業・終業の時刻 | 始業 9:00 終業 18:00 |
休憩時間 | 60分 |
所定時間外労働の有無 | 有 1ヶ月10時間以内 |
休日労働 | 無 |
休日・休暇 | 当社カレンダーによる |
賃金 | 基本給 月給190,000円 |
通勤手当 8,000円/月 | |
家族手当 5,000円/月 | |
賃金締切日・支払日 | 毎月月末締め・翌月15日支払い |
賞与 | 7月と1月に業務成績に応じて支給 |
昇給 | 業務成績に応じて昇給することがある |
退職に関する事項 | 定年退職:65歳 |
自己都合退職の手続き:退職する30日以上前に届け出ること | |
解雇の事由及び手続き:就業規則第〇〇条のとおりとする | |
労働保険 | 労災保険・雇用保険・社会保険 |
労働条件通知書兼雇用契約書とは?
「雇用契約書」は同意したことがわかる書類
「雇用契約書」は、「労働条件通知書」と同じく、仕事内容や契約期間、賃金などの労働条件が書かれています。
「雇用契約書」は契約したことを証明する書類ですので、書かれている仕事内容や契約期間、賃金などにお互いが同意して、署名をし、印鑑を押します。
一方的に会社が作って渡す「労働条件通知書」と違い、「雇用契約書」は社員も同意したことがわかる書類です。
「労働条件通知書」と「雇用契約書」は兼用できる
会社にとっては、社員が同意したことがわかる「雇用契約書」を作成したほうが、後々のトラブル防止に有効です。「労働条件通知書」と「雇用契約書」は書かれている項目は、基本的に同じですので、兼用している会社も多くあります。
兼用している場合には、用紙の一番上に「雇用契約書兼労働条件通知書」と書かれています。
外国の人を雇う場合の「労働条件通知書」の書き方
英語と日本語で記載した「労働条件通知書」を用意
外国の人を雇う場合には、その社員の母国語に配慮した「労働条件通知書」を作るといいでしょう。多くの場合、英語と日本語の両方で記載した「労働条件通知書」が使われています。
例えば「Term of employment(契約期間)」のように、英語と日本語を並べて記載するとよいでしょう。
「労働条件通知書」はいつまでに渡す必要がある?
契約するときに渡す
「労働条件通知書」は、契約の締結時に渡す必要があります。また、新卒採用の社員については「労働条件通知書」を内定のときまでに渡しましょう。
まとめ
「労働条件通知書」は、会社が労働契約を結んだときに必ず社員に渡さなければなりません。契約期間や賃金など、記載事項が決まっていますので、本記事を参考に作成していただけると幸いです。