「フロイト」はどんな人物?心理学の特徴や精神分析・夢について

「フロイト」は「夢」を分析した心理学者として知られています。フロイトの夢分析とはどのようなものなのでしょうか?ここではフロイトの概要と、フロイトの精神分析や心理学について解説します。

「フロイト」とは?

まずはじめにジークムント・フロイト(1856年~1939年)について説明します。

フロイトは「精神分析学」の創始者

フロイトとは、精神分析学の創始者です。現在のチェコにある小さな村でユダヤ人の両親のもとに生まれました。フロイトは精神医学者、精神分析学者であり精神科医です。神経症や心的外傷(PTSD)の研究、さらに無意識の研究などを行っていました。

さらに精神分析を基調とする哲学の創始者でもあります。また、人間の無意識を初めて体系的に扱ったのはフロイトであり、フロイトの「無意識の哲学」は精神分析学や哲学思想に大きな影響を及ぼしました。

フロイトは「精神分析療法」をヒステリーの治療法から生み出した

フロイトはウィーン大学に学び、1885年、29歳の時にパリに留学します。パリでは神経学者のマルタン・シャルコーから催眠によるヒステリー症状の治療法を学びました。シャルコーは催眠術によってヒステリーと同じ症状を引き起こすことに成功していました。

30歳でウィーンへ戻ると、催眠によるヒステリーの治療法を実践に移し、治療経験を重ねます。フロイトのもとには女性のヒステリー患者が多く通い、その患者の治療を通じて精神分析法が構築されてゆきました。

フロイトは「自由連想法」をもちいて治療した

フロイトは当初、催眠療法を用いていましたが、最終的に「自由連想法」による治療を行うようになりました。寝椅子に横になった患者に、思いつくまま自由に語ってもらう方法です。自由連想法は当時の精神分析療法の基本となりました。

フロイトの「性理論」は評価されなかった

フロイトは幼児期に性欲があるとする独自の性理論を展開しますが、発表してから激しく非難されました。フロイトは「欲動論」の中で性理論の修正を繰り返し、「性の欲動」の一元論から最終的には「死の欲動」と「生の欲動」の二元論に到達します。

「死の欲動」とは人間にはもともと死を望む欲動があるとするもので、「生の欲動」とは性の欲動と自己保存欲動を含んだ、生きようとする欲動のことです。

フロイトと「ユング」「アドラー」の違い

ユングカール・グスタフ・ユング(1875年~1961年)はフロイトから精神分析学を学んでいましたが、さまざまな考え方の違いから袂を分かちます。最も大きな考え方の相違は「無意識」の考え方で、フロイトは無意識を自分で意識できない自分の知らない部分としたのに対し、ユングは無意識を「集合的無意識」として、人間の無意識の奧底には個人の経験を越えた先天的な領域があると主張したことです。

アルフレッド・アドラー(1870年~1937年)はフロイトの共同研究者でしたが、結果としてフロイトとは完全に決別しました。フロイトが問題の「原因」を過去に求めることによって解決しようとしたのに対し、アドラーは問題の解決のためには過去にさかのぼるのではなく、生きる「目的」によって解決するとしたためです。

■参考記事
「ユング心理学」と名言を紹介!無意識やフロイトやとの違いも

「フロイト」の「夢」の意味とは?

次にフロイトが研究した「夢」の意味について説明します。

フロイトは「夢は願望の充足」であると考えた

フロイトは、物事にはすべて原因があると考え、人間が夢をみるのは「願望の充足」のためだと考えました。

また、子どもの夢がわかりやすくて大人の夢がわかりにくいのは、大人は夢を検閲して願望を違うイメージに置き換えるからだとして、フロイトは夢を分析することでその人の隠された願望や不安を読み取れると考え「夢判断」の手法を生み出しました。

フロイトは夢の象徴を判断して願望や不安を読み取った

夢に出てくる事象について、一定の要素は一定の意味を表すパターンがあるとフロイトは考え、これを「夢の象徴」と呼びました。具体的には両親は敬意を払われる人物として現れ、死は旅立ちや汽車旅行のシーンで現れるといったものです。

つまり、夢に顕在された内容から象徴を読み解き、潜在している思想を探るという作業を行うのです。フロイトは、これらの夢に関する精神分析学の研究をまとめた『夢判断』を1900年に刊行しました。

「フロイト」心理学のキーワード(名言)を紹介

次にフロイトの心理学のキーワードについて説明します。

意識は氷山の一角

フロイトは人間の意識を「意識」と「無意識」に分け、さらに無意識を、まったく意識できない「無意識」と、何かのきっかけがあれば意識できる「前意識(ぜんいしき)」に分けました。

心に3つの層があるとするフロイトの考えは「局所論」と呼ばれ、そのうちの意識は氷山の一角で、意識の大半を無意識が占めていると説明しました。

エディプスコンプレックス

エディプスコンプレックスとは、幼児期にだれもが通過するとされる普遍的なコンプレックスのことで、父親や母親に対する葛藤を表します。エディプスとは、父を殺し自分の母親と知らずに結婚したギリシャ悲劇からとられています。

リビドー

人間の無意識に根を持つ心的エネルギーを意味する「リビドー」について、フロイトは「性的衝動を発動させるエネルギー」の解釈を用いました。それに対してユングは、リビドーを「全ての本能のエネルギー」であると定義しています。

無意識・自我・超自我

フロイトは「局所論」とは別に、心を「無意識(エスまたはイド)」「自我(エゴ)」「超自我」に分けて整理しました。「無意識(エスまたはイド)」とは、本能衝動である性衝動(リビドー)や攻撃衝動を指しており、「自我(エゴ)」とは、「無意識(エスまたはイド)」と道徳的規範の遵守を要求する良心である「超自我」の間に立って、人格全体を統合する働きをするものだとされます。

まとめ

フロイトはヒステリーの症例を研究することによって無意識の存在を明らかにし、心理療法の理論を構築しました。フロイト以前には、精神の病は魂の自由を失った状態であると考えられていたといいます。

また「精神分析」というときはフロイトの学説を指し、アドラーは「個人心理学」、ユングは「分析心理学」として区別されています。いずれにしても人間の行動を理解するためには「無意識」の概念の理解が必要です。