「仕事という大義名分のもと」というと、何か良くないニュアンスを感じるという人もいるのではないでしょうか。「大義名分」はビジネスシーンでよく使用される四字熟語のひとつです。その詳しい意味と合わせて、「大義名分が立つ」「大義名分を掲げる」などの使い方を例文とともに解説します。
「大義名分」の意味とは?
「大義名分」とは行動の根拠や口実を意味する
四字熟語「大義名分」の意味は、”行動の根拠・口実”です。ある行動における正当な理由や、相手に正当だと感じさせる理由を示す際に使います。たとえば、「社会勉強という大義名分のもと、連日飲み歩いている」というと、「社会勉強という口実」で正当化しているようなニュアンスを含みます。
「口実」というと良くないイメージですが、広い意味では人としての道義(正しい道)・節度という意味もあります。いずれの場合も、人として正しい・間違っていないというための理由を主張する際に使用すると覚えておきましょう。
「大義名分」の由来と歴史とは?
四字熟語にはそれぞれ様々な由来がありますが、「大義名分」は古くは中国にその起源があります。その由来と歴史について簡単に紹介しましょう。
儒教に由来する言葉
「大義名分」という言葉は、孔子(こうし)による教え「儒教」に由来します。本来は王に使える臣下が守るべき節度やふるまいなどのあり方を指した言葉だったようです。
江戸で重んじられた朱子学と「大義名分論」
儒教はのちに朱熹(しゅき)によって再構築され、「朱子学」として江戸時代には政府が認める学問として広まります。特に君主と臣下の支配服従の関係は、儒教や朱子学の「大義名分」の思想が基本であり、日本国内で唱えられた様々な「大義名分論」に発展していったようです。
その後、「大義名分」の正しい道を歩むという思想は、幕府から朝廷へと主従関係がゆがむきっかけともなったとされています。
「大義名分」のビジネスでの使い方と例文とは?
「大義名分」の歴史的な背景はさておき、現代のビジネスシーンではどういった使われ方をしているのでしょう。使い方を例文とともに解説します。
建前や言い訳として使われることも多い
根拠や口実を示す際に使われる「大義名分」は、建前や言い訳を示す際に使われる例も多いものです。先述した「社会勉強という大義名分のもと、連日飲み歩いている」もその一例で、飲み歩くことに対する言い訳や口実として「社会勉強」という言葉を出しているような意味合いになります。
また、「家族の体調不良を大義名分に仕事を早退する」というと、「家族の体調不良」とは建前でほかに何か本当の理由がある、という風にも取ることができます。
「大義名分が立つ」は「成り立つ」の意味
「大義名分が立つ」という言い方もよく用いられる表現です。この場合、「根拠として成り立つ」「やましくない口実になる」という意味になります。
たとえば、「家業を継ぐといえば退職の大義名分が立つ」というと、「家業を継ぐ」ということで正当な理由が成り立つという意味です。
「大義名分を掲げる」は主張として押し出すこと
ただ口実や根拠として述べるのではなく、それを全面に押し出して主張するような場合には「大義名分を掲げる」という言い方をします。たとえば、「仕事を教えるという大義名分を掲げ、部長が若手社員に雑務をやらせている」とすると、部長が押し通したというニュアンスの強い表現です。
同様の表現では、「大義名分を振りかざす」という言い方もあります。
「大義名分が必要」という言い方も
「大義名分」には、正しいこと・間違っていないことの理由や根拠といった意味があることは先述しましたが、何か提案をする際に用いられることがあります。
たとえば、新しいルールを作り、そのルールを浸透させるためには周囲を納得させるための理由が必要です。そういった場合には、「この提案には大義名分が必要だ」という風に使うことがあります。
「大義名分」の類語とは?
根拠や理由といった意味を持つ「大義名分」の類語には、口実・名目が挙げられます。それぞれ解説しましょう。
類語①「口実」は言い訳という意味
「口実にする」「口実を探す」という表現はよく用いられますが、この「口実」には、言い逃れ・言いがかりの材料といった意味があります。簡単にいうと「言い訳」の事で、「大義名分」を簡単な言葉で言い換える際におすすめの言葉です。
ただし、「都合のいい口実」というように、あまり良い意味で使われることはありません。
類語②「名目」は表向きの理由
「名目」もまた、「大義名分」の類語のひとつで、「表向きの理由」という意味の言葉です。「名目」には、名称・呼称という意味もあり、「名目だけの監査役」という風に「表向きの名称」という意味で使われることもあります。
「大義名分」の英語表現とは?
英文で「大義名分」という場合には、以下のようになります。例文とともに紹介します。
on the pretext of /in the cause ofを使う
「~という大義名分で」という場合には、on the pretext of~を使います。たとえば、on the pretext of illnessで「病気を口実に」という意味です。
また、「大義名分」を英語にする場合には、単に「~のために」という表現を使い、in the cause of ~とすることもあります。たとえば、「in the cause of peace」とすると「平和のために」という意味ですが、「平和という大義名分のもと」という意味にもなります。
まとめ
「大義名分」は行動の根拠・理由という意味で、特に、「正当な理由」「正当だと感じさせる理由」という意味で使用されています。「言い訳」「口実」という意味で使われることも多い四字熟語ですが、元々は孔子による言葉で、江戸時代は主君への忠誠を重んじる言葉だったという歴史も頭の隅に置いておくと、少し見方が変わってくるかもしれませんね。