物事が予定通りに進むときに使われる「予定調和」という言葉。一度は耳にしたことがある表現だと思いますが、「予定調和」には哲学的な意味があるのをご存知でしょうか。
そこで今回は「予定調和」が生まれたライプニッツ哲学のモナド論について触れながら、日常的に使われる「予定調和」の意味と正しい使い方を解説します。
「予定調和」の意味と使い方とは?
「予定調和」の意味は「予定通り」
「予定調和」の意味は、”予定通り”です。予想した流れの中で物事が進行して、その結果も予想と変わらないというときに使われています。読み方は、「よていちょうわ」です。
「前もって定められた行動や行事」という意味の「予定」と、「全体のつり合いが取れて整っている」という意味の「調和」が連結して、まるで一つの熟語のように扱われています。
物語や映画、演劇などの文化から政治や経済に至るまで、物事が予想通りに進んだときに「予定調和」は使われます。
「予定調和」は物事が予想通りに進行したときに使われる
日常的に「予定調和」は、物事が予想していた通りに進行したり、予測通りの結果が現れたときという意味で使われることがほとんどです。
例えばドラマでヒロインが危険な状態にあった時、「きっとこの話は次にヒーローが現れてヒロインを救うのだろうな」と典型的なヒーローものの展開を自分が想像したとします。そしてそのドラマが自分の想像通りに進行すると、「このドラマは予定調和だ」のように「予定調和」を使います。
「予定調和」を使った例文
「予定調和」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 「この小説は予定調和に展開する」
- 「日常生活は、昔のホームドラマのような予定調和にはいかない」
- 「国会審議の予定調和な流れに辟易した」
- 「会議は予定調和のうちに終了した」
- 「この小説はタイトルから推測したとおりの予定調和な内容で面白くなかった」
- 「予定調和のため面白みがないが、結構楽しめる映画だった」
- 「現在の株式の動向は予定調和と言える」
- 「予定調和の法案が成立した」
「予定調和」の類語と対義語とは?
「予定調和」の類語は「順調に進む」「はかどる」など
「予定通りに物事が進むこと」という日本の俗語として意味で「予定調和」を捉えるのならば、次のような類語が考えられます。
- 「順調に進む」
物事がすらすると調子よく進むこと。都合よくはかどること。
例文:
「経過は順調である」
「順調に売り上げを伸ばす」 - 「はかどる」
順調に物事が進み、仕上がっていくこと。
例文:
「仕事がはかどる」
「勉強がはかどる」 - 「進捗する」
物事が進みはかどること。
例文:
「工事の進捗状況を確認する」
「新事業の進捗を報告する」
「予定調和」の対義語は「予定外」「予想外」など
- 「予定外」
あらかじめ定めた行事や行動とは別のことが起こる状態のこと。
例文:
「予定外のことが起きて、現場は大慌てだ」 - 「予想外」
想像していた動きや結果とは違うことが起こること。
例文:
「予想外のことで、対応に追われる」 - 「想定外」
思い描いていた一定の状況や条件とは違うことが起こること。
例文:
「発火するのは想定外だった」
「想定外の株式の動向」 - 「突然」
不意に予期しないことが急に起こるさま。
例文:
「突然死」
「突然の雨でびしょ濡れだ」 - 「唐突」
不意すぎて、不自然すぎるさま。
例文:
「唐突の来客に慌てる」
「唐突な発言にみな絶句した」
(付録)「予定調和」はライプニッツの「モナド論」から派生
「モナド」は空間を構成する
「予定調和」は元々、17世紀から18世紀に哲学者・数学者・神学者として名を馳せたドイツの哲学者であるライプニッツが唱えた学説から生まれました。形而上学的にこの世界を捉えて、「予定調和」とは「異なる世界が神によって調和が取られていること」という意味です。
この「異なる世界」とは「モナド」と言います。「モナド」とは「単子」とも訳されますが、私たちの世界を構成するもの突き詰めていくと「力」や「作用」などの要素が実体化した、これ以上は分けることができないものになります。これを「モナド」と呼びます。
私たちの生きている全空間の成り立ちとは、このモナドが集まって空間が形成されたと言い換えることができます。
調和のとれたモナドの関係性を「予定調和」と呼ぶ
しかもその空間は、それぞれ独立した世界があるモナドなのに、まるで交互作用があるかのように見えます。その理由は何かと問われてライプニッツは、神が異なるモナド同士が調和するように定めているからだと説明します。
独立しているモナドが互いに影響を及ぼしているかのように見えつつ調整が取れているのは、神が予定したことであり、かつ結果でもあります。この神が予定して結果として調和が取れた状態を言い表したのが「予定調和」です。
ちなみに、このモナドを使った世界の説明方法を「モナド論(モナドロジー)」または「単子論」とも呼ばれています。
■参考:ライプニッツの哲学とは?「モナド」や「微積分」はじめ名言も
「予定調和」の英語表現とは?
ライプニッツの「予定調和」の英訳は「pre-established harmony」
ライプニッツが唱えた「予定調和」は「pre-established harmony」のように訳されます。哲学用語として使われる英訳です。
「予想通りに物事が進む」なら意訳する
「予想通りに物事が進む」という日本で使われている「予定調和」の意味を一語で表す英語表現はありません。
そのため、この文の意味を説明するような英訳にします。
「予想通りに」の部分を「予期する」や「予想する」という意味の「expect」を使って表して、「物事が進む」には「起こる」という意味の「happen」や「take place」を使います。
つまり「予想通りに物事が進む」の英訳は、次の通りです。
- “Things happen as expected.”
- “Things take place as if I expected.”
まとめ
「物事が思った通りに進む」という意味でよく使われる「予定調和」は、ライプニッツ哲学のモナド論から派生した言葉でした。「予定調和」はまるで一つの熟語のように一般的に用いられています。
ビジネスシーンでもよく使う言葉ですので、意味と使い方をしっかりと覚えておきましょう。