「ひとえに」の意味と使い方!謝罪や礼状に使えるビジネス例文も

「これもひとえに皆様方のおかげでございます」とはスピーチでよく耳にする表現です。この「ひとえに」という言葉は、平家物語でも使用されていた古語でもありますが、現代でもビジネスシーンでよく使われます。詳しい意味と使い方を例文とともに紹介します。



「ひとえに」の意味

「ひとえに皆様のおかげ」という風な使い方が一般的ですが、どういった意味があるのでしょう。まずはその意味から解説します。

そのことだけで他に理由がないこと

「ひとえに」とは、そのこと以外に理由がないこと・もっぱら、という意味の言葉です。ただそれだけが理由であることを強調するようなニュアンスを持ちます。

そのことだけをする様、ひたすらに

「ひとえに」にはもうひとつ、そのことだけをする様・ひたすらに、という意味もあります。たとえば、「ひとえによろしくお願いします」といった場合は、ひたすらにお願いをする、という意味になります。

文法の話をすると、「ひとえに」は副詞です。副詞はすぐ後に続く言葉を修飾するものなので、後ろに続く言葉によって意味を考えると分かりやすくなります。

漢字では「一重に」ではなく「偏に」

「ひとえに」という単語は通常、ひらがな表記で使用しますが、漢字で書いた場合には「偏に」となります。「一重に」という表記は誤りです。「一重」という名詞はありますが、副詞で使用する場合には「偏に」という表記が正解です。メールや書面で使用することも多い言葉ですので、誤字にはくれぐれも気をつけましょう。

「偏に風の前の塵に同じ」は平家物語の一節

「ひとえに」という言葉の歴史は深く、古くは平家物語でも使われていました。中でも「偏に(ひとえに)風の前の塵に同じ」という表現は有名です。

「偏に(ひとえに)風の前の塵に同じ」を直訳すると、ただただ風の前に落ちている塵と同じである、という意味になります。これは、はかなきもの・いつかは終わるものの例えで、風で吹き飛ぶ塵のようにあっという間に力・勢いはなくなってしまうものだ、という一節で使用されたものです。

「ひとえに」のビジネスでの使い方

歴史の深い言葉「ひとえに」は現代のビジネスシーンではどのように用いられているのでしょう。例文とともに紹介します。

「これもひとえに皆様方のおかげ」が一般的

「ひとえに」は感謝を述べる際に用いられることの多い表現です。顧客や取引先などに感謝を述べる際に、「ひとえに~のおかげ」という言い方を良くします。

たとえば、「これもひとえに皆様方のおかげでございます。心より感謝申し上げます」という表現はよく耳にします。この場合、「皆様のおかげ」以外の理由は見当たらない・もっぱら皆様のおかげで、というニュアンスです。

お力添え・賜物という言葉とセットも多い

「これもひとえにお力添えのおかげ」や「ひとえにご愛顧の賜物と感謝申し上げます」もよくある表現です。

「お力添えのおかげ」とは、手助け・協力のおかげという意味です。また、「ご愛顧」とは目をかけること、「賜物」とは「結果として生じたよいこと」という意味の言葉で、ひいきにしていただいたからこそ得られた結果、というような意味です。いずれも、「ひとえに」とともに用いることの多い、感謝を述べる際の常套句になっています。

「ひとえに感謝いたします」はただただ感謝

「ひとえに皆様方のおかげ」ではなく、「皆様方のおかげと、ひとえに感謝いたします」とする場合では、少し意味合いが異なってきます。

先にも少し触れましたが、「ひとえに」は副詞なので、後ろについた言葉を修飾するという性質があります。そのため、「皆様方のおかげと、ひとえに感謝いたします。」とした場合は、ただただ感謝しています、という意味になるのです。

感謝していることに変わりはありませんが、感謝する対象を強調したいのであれば、「ひとえに~のおかげ」という表現がおすすめです。

お詫びの言葉では「ひとえに~の過失」

感謝を述べる場合によく使われる一方で、謝罪やお詫びの文面でも「ひとえに」を使用することがあります。たとえば、「今回の不祥事は、ひとえに本部長である私の監督責任でございます」などという言い方も可能です。ほかにも、「これはひとえに弊社のミスであり、心よりお詫び申し上げます」という表現もあります。

「ひとえに」の類語

「ひとえに」にはどういった類語があるのでしょう。比較的フォーマルな場で用いられる「ひとえに」に対し、ややカジュアルな場でも使える表現とあわせて紹介します。

類語は、主に・もっぱら

「ひとえに~のおかげ」という場合のように、ほかに理由がない、という意味では、もっぱら・主に、といった言葉が類語に当たります。いちずに、と言い換えられることもあります。

感謝を述べる場合には、「どれもこれも皆様のおかげです」という言い方や「お陰さまで」もよく使用される表現です。

ひたすらに・まったくもって、という表現も

「ただそのことだけをする」という意味での「ひとえに」は、

  • ひたすらに
  • まったくもって
  • ただただ
  • すべて

などの類語があります。また、「ひとえによろしくお願いいたします」の言い換えでは、「何卒よろしくお願いいたします」などという表現も可能です。

「ひとえに」を英語にすると?

「ひとえに」を英語にすると、どういった表現があるのでしょう。感謝やお詫びで使うことの多い表現だけに、英語表現もしっかりとおさえておきたいものです。

英語では「~がないと無理だった」と表現

日本語の「ひとえに」を英語で表現する際には、「ほかに理由がない」「協力(手助け)がないと不可能だった」という言い方をします。たとえば、

  • I couldn’t deal with this task without your cooperation.(直訳:あなたの協力なしにこの仕事は対処できなかった)

とすると、「この仕事を成しえたのは、ひとえにあなたのおかげです」という日本語訳になります。

「ひとえに皆様のおかげ」はall owing to you

日本語でよく使う「ひとえに皆様のおかげ」を英語で表現すると、

  • This is all owing to you.

となります。oweは、借りている・負っている・おかげである、といった意味の単語です。

「ひとえによろしくお願いします」はbeseech

「ぜひとも」「ひたすらに」というように、強調のニュアンスでの「ひとえに」を使うこともあります。たとえば、「ひたすらによろしくお願いします」という場合は、「懇願する」という意味のbeseechを使い、

  • I beseech this favor of you(この件につきまして、ひとえによろしくお願いいたします)

とすることが可能です。このように、意味に応じて適した単語に言い換えるようにすると、「ひとえに」を使った日本語文と同じようなニュアンスの表現となります。

まとめ

「ひとえに」には2つの意味がありますが、ビジネスシーンでよく用いられるのは「それ以外に理由がない」という意味です。「他ならぬ貴社のおかげ」と感謝を述べる場合や「もっぱら弊社のミスです」とお詫びする場合などに「ひとえに」は使われています。やや堅い表現ですので、社内の話し言葉には不向きですが、感謝や謝罪など改まった場に重宝します。