「レゾンデートル」の意味と使い方!アイデンティティとの違いも

「レゾンデートル」という言葉を小説や経済記事などで目にすることがあります。哲学の背景を持つ言葉であるため、文脈を理解するためには背後の哲学を知っておく必要があります。ここではレゾンデートルの言葉の意味と哲学的な背景について解説します。



「レゾンデートル」の意味とは?

まずはじめに「レゾンデートル」の意味と背景について説明します。

「レゾンデートル」はフランス語で「存在理由」という意味

「レゾンデートル」とは、フランス語の「raison d’etre」が由来のカタカナ語です。「存在理由」や「存在価値」という意味です。

「レゾンデートル」は哲学や文学のテーマとして用いられる

「レゾンデートル」が意味する「存在理由」や「存在価値」は、哲学や文学のテーマの中心であるため、その核心をつく言葉として用いられます。

フランスの「実存主義哲学」の流行とともに日本に流入した言葉

特にフランス哲学の「実存主義」が流行した時の議論などで「存在理由」という意味の「レゾンデートル」の言葉がよく使われました。日本でもあえて翻訳語を使わず、フランス語由来のカタカナ語で「レゾンデートル」と言ったり書いたりすることが流行しました。

「レゾンデートル」の哲学的な意味とは?

先に説明したように、「レゾンデートル」の言葉を使う時は、哲学的な意味を含んで使われます。そのため、レゾンデートルを正しく使うためには実存主義哲学の理解が不可欠です。次に実存主義哲学の流れを紹介します。

「実存」はキルケゴールからスタートした

デンマークに生まれたキルケゴール(1813年~1855年)は、「人間は個人として現実に存在している」という「実存」から哲学をスタートしました。キルケゴールの「実存」とは、他人とは取り換えることのできない「私」のありようを示したもので、かけがえのない人間存在を追及し、自分の実存と向き合い続けました。

またキルケゴールは実存を追及する中で「絶望」について論じ、絶望をごまかさずに認めたうえで「自分の人生を自分で作り上げる」と決めることで倫理的に生きられるとしました。

■参考記事

「キルケゴール」の思想とは?実存主義と著書や名言も紹介

「実存主義」の定義を初めて明らかにしたのはサルトル

「実存主義」の定義を明らかにし、宣言したのはフランスの哲学者であるジャン・ポール・サルトル(1905年~1980年)です。「実存主義」とは「現実存在(実存)が本質に先立つ」という考え方のことで、第二次世界大戦後にフランスを中心に発展しました。

サルトルは「人間は本質に先立つ実存である」として、人間は自分が行動することによってなにものかになってゆく存在であり、本質は持っていないということを表現しました。つまり、現実世界に拘束される中で、どのように行動するかを選択することが大切であるとしました。

サルトルに影響を与えたのはハイデガーの「実存哲学」

サルトルの実存主義に影響を与えたのはドイツのマルティン・ハイデガー(1889年~1976年)の実存哲学です。ハイデガーは時代の不安な気分を哲学的に取り扱い、主著『存在と時間』は発売と同時にフランスやドイツの若者たちに熱狂的に受け入れられ、キルケゴールの哲学とともに実存主義哲学の大きな流れを生みました。

ハイデガーは、人間存在は過去・現在・未来という時間の流れの中に存在しており、その中で未来の可能性である「死」に向き合いながら現在を生きる生き方を「実存的生き方」としました。

■参考記事

「ハイデガー」の『存在と時間』とは?存在論や思想・名言も紹介

「レゾンデートル」とは取り換えのできない自分について考えること

以上のことから、レゾンデートルの哲学的意味とは、「死」の可能性や逃れられない世界に向き合いながら、取り換えのできない自分について考えること、という含みを持った「存在理由」への問いであるといえます。

「アイデンティティ」と「レゾンデートル」の違いとは?

「レゾンデートル」はいかに生きるかという哲学的問いを背景に持つ「存在理由」という意味の言葉ですが、自己の確立を確かめる時などに使われる「アイデンティティ」という言葉との違いはどのようなものなのでしょうか。

アイデンティティの意味は「自己同一性」

アイデンティティは英語の「identity」を語源とするカタカナ語で、「自己同一性」と訳されます。

自己同一性とは、「自己」が環境の変化や時間の経過にかかわらず、連続する同一のものであるという意味です。アイデンティティはさまざまに解釈される概念ですが、「私は何者か」「自分に抱く自己像」「自分を構成する基盤」「自己を確立する要素」などの意味合いを持ちます。

しばしば「アイデンティティの喪失」「アイデンティティの確立」などと心理学用語として用いられます。前者は「自分は何者なのかわからない状態」、後者は「自分はこういう人間であるという確立」という意味です。

レゾンデートルは「存在の理由」・アイデンティティは「存在の要素や基盤」

レゾンデートルが「存在の理由」という意味であるのに対し、アイデンティティは「存在の要素や基盤」という意味となります。

レゾンデートルが存在への問いであるのに対し、アイデンティティは存在の確認であるというベクトルの違いがあるともいえます。

レゾンデートルの使い方と例文

レゾンデートルの使い方

日常会話でレゾンデートルの言葉を使う機会はあまりないかもしれませんが、「存在意義」をあえて問いたい時などに「レゾンデートル」の言葉を用いて思索を深める使い方ができるといえます。

「レゾンデートル」は人間だけでなく、企業や手法などに対してもその存在理由や存在価値を説明する時に使うことができます。日本語を用いず、あえて「レゾンデートル」の語を使う時は、哲学的背景を含んでいることを示唆した使い方となります。

レゾンデートルの例文

  • 我が社のレゾンデートルを明確にする必要がある。
  • 企業のレゾンデートルは価値を生み出し続けることにある。
  • あきらめないことが彼のレゾンデートルだ。
  • 自分は一体何者なのかというレゾンデートルへの問いに即答できる人はいないだろう。

まとめ

「レゾンデートル」は戦後フランスでの存主義哲学の流行とともに日本にその概念と言葉が輸入されました。一般的な言葉として使われることは少ないですが、哲学的な存在の問いの文脈で存在意義を語るような時に使われることがあります。「レゾンデートル」の背景にある実存主義を理解するためには、サルトルなどの著書を読んでみることをお勧めします。