近年、インターネット上で「スラング」として使われることも増えている「事案」という言葉を知っていますか?この「事案」の本来の意味や使い方について、詳しく解説します。ビジネスでよく耳にする類語「案件」との違いについても必見です。
「事案」の意味とは?
「事案」の意味は”問題になっている事柄”
「事案」の意味は、”問題になっている事柄・問題にすべき事柄”です。たとえば、「不適切とされるような事案はない」というと、「不適切と判断されるような問題はない」という意味です。
また、「事案」とは、本来はこれから事件や事故につながるような重大な事柄・問題に対して使われていた言葉です。現在でも、事件や事故とかかわる事柄に使われる一方で、その用途は多方面に広がっています。
「事案」の使い方とは?
代表的な例は、警察による注意喚起情報
「事案」という言葉の代表的な使用例は、警察による住民への注意喚起です。たとえば、不審者の子どもへの声かけを指す「声かけ事案」などがあります。
この場合、「今後事件に発展する可能性が極めて高く、周辺地域(環境)への影響も高い重要情報」という意味で「事案」という言葉が使用されています。地域の警察から「○○事案」として注意が促された場合には、警戒が必要です。
政治や法律に関係する事柄でよく使う
「事案」は本来、政治色・法律色の強い言葉でもあります。
たとえば、「党員の不正献金に関する事案」という風に、政治家の不祥事での使用はよく目にする例です。また、弁護士事務所では依頼者が抱える問題を「事案」とし、「事案の処理を行う」などという風に使うこともあります。
ネットスラングとして使われるシーンも増えている
冒頭でも少し触れましたが、「事案」という言葉は、最近ではネット上の「スラング(俗語)」として使われるシーンが増えています。たとえば、ある行動を「不審者のようだ」と揶揄したり、「不審者扱いされた」と自虐的に言う場合などに「事案」という表現が使われているようです。
また、動画サイトの投稿者の間では、事件性の有無とは全く関係ないものでも、注目すべき事柄・珍しいもの・衝撃的な事などに対して「事案」として紹介する例も見られます。本来の使用法とは異なりますが、特定の年齢層では日常的な使用が広がっているといえるでしょう。
「事案」の類語とは?
類語は「事柄」「問題」など
「事案」の類語には、「事柄」「問題」「事件」などが挙げられます。簡単にいうと、「問題になっている事柄」を指すような表現に置き換えることができ、「事件」「一件」なども類語のひとつです。
また、状況は限られますが、特に政治的な使用では、「不祥事」を指して「事案」とすることがあります。先述した「不正献金に関する事案」は、「不正献金という不祥事」と言い換えることも可能です。
「案件」との違いは対応が必要かどうか
「事案」とよく似た言葉に「案件」があります。両者の違いは、対応(処理)の必要性です。
「事案」は「これから事件や事故となるような問題」という意味の言葉で、現段階で対応が必要かどうかはは問われません。「対応の検討段階」というニュアンスにとどまるのが特徴です。
一方の「案件」は、すでに何らかの問題が生じている状況で、「解決すべき事柄」に対して使います。つまり、具体的な行動(処理)が必要、もしくはすでに対応を行っている事柄が「案件」というわけです。また、「案件」という言葉には、「解決するために話し合う」というニュアンスも含みます。
「事案」の英語表現とは?
英語では「case」や「concern」を使う
「事案」という意味の英単語には「case」や「concern」があります。
「case」は、事案という意味の他に、状況・場合・事例などという意味も持つ言葉で、「magnitude of the case(事案の重要性)」などという使い方ができます。
同じく「事案」という意味で使われる単語「concern」は、重要な事・関係・懸念・配慮など、幅広い意味を持つ単語です。「事案」という意味では、「 a pressing concern(緊急性の高い事案)」などといった使用ができます。
まとめ
「事案」とは、端的にいうと「問題となっている事柄」という意味ですが、主に、これから事件や事故につながるような重大な事柄に対して使う言葉です。一方で、近年ではネットスラングとして頻繁に使われているという側面もあるため、聞きなれた表現に感じる人も増えているかもしれません。スラングとして使うことが悪いわけではありませんが、本来の深刻なニュアンスも忘れないようにしたいものです。