「モラリスト」の意味とは?モンテーニュなど思想家や名言も紹介

「モラリスト」と呼ばれる思想家がいます。哲学者や文学者が引用することも多いモラリストの思想とはどのようなものなのでしょうか?ここではモンテーニュやパスカルなど代表的なモラリストと、モラリスト文学の思想や名言を紹介します。

あわせて道徳家という意味のモラリストと、ヒューマニストとの意味の比較も紹介しています。



「モラリスト」の意味とは?

まずはじめにモラリストとは何かを解説します。

「モラリスト」とは人間の生き方を探求する思想家のこと

「モラリスト」とは「moraliste」というフランス語が原語のカタカナ語で、人間はいかに生きるべきか、人間とは何か、という問いを探求する思想家のことを指します。一般的には主に16世紀から18世紀にかけて活躍したフランス語圏の思想家を指して使われますが、人間性の現実を観察しながら人間の生き方を考えようとする作家を指して、時代を問わず使われることもあります。

「モラル(morale)」 は道徳という意味で使われますが、もともとは人間の日常的なあり方を意味しており、モラリストはそのような日常を観察することが思想の基盤にあります。

そしてその思索はあくまでも人生の現実に着眼しており、形而上的な議論や理論体系の構築とは離れて人間の真実を認識し、普遍的な人間像を描き出すことがその特徴です。このような人間性探究の姿勢は、フランス文学の中の一つの伝統であり、独特な系譜ともなっています。

「モラリスト」の文学スタイルは随筆やアフォリズム

「モラリスト」の文学や文章スタイルには特徴があり、随筆やアフォリズムのような非連続的な文章や自由な形式で書かれた散文として綴られます。そのタイトル自体が表現のスタイルを表しているものも多く、あとで紹介するモンテーニュの『エセー』はフランス語で「随筆」という意味です。エセーはカタカナ語の「エッセー」のもとになった言葉です。

「モラリスト」を紹介

モラリストと呼ばれる代表的な思想家を紹介します。

モンテーニュ

ミシェル・ド・モンテーニュ(1533年~1592年)は、16世紀のフランスを代表する思想家で、モラリストの始祖ともいわれます。人間性の深い洞察から生まれた主著『エセー』は、フランスのみならず、各国に影響を与えました。「われ何を知る (ク・セ・ジュ) 」を座右の銘とし、新しい文学形式であるエッセイ (随筆) を創始しました。

モンテーニュは判断力を精神の能力のなかで重要なものと考えており、倫理的な主題を通して自分自身の批判や考察を加えた随筆を著しました。「エセー」という言葉は「判断力を試し(エッセイユ)た結果」という意味で使われています。

パスカル

ブレーズ・パスカル(1623~1662年)は、17世紀のフランスの哲学者、思想家、数学者、キリスト教神学者です。「人間は考える葦である」の名文句が書かれた遺稿集『パンセ』がよく知られています。『パンセ』は、批判精神によって人間性にひそむ矛盾や欲望を考察し、真の幸福とは何かを追求したもので、その普遍的なテーマによって現代まで読み継がれています。

パスカルは、パスカルの定理やパスカルの三角形などの発見でも知られていますが、30代で逝去した短命の天才でした。

ラ・ロシュフコー

ラ・ロシュフコー(1613年~1680年)は、17世紀のフランスの貴族で文学者です。文芸作品としてはただ1冊の『道徳的省察または格言および箴言』を残しただけでした。『箴言集』や『格言集』とも呼ばれるその1冊は200ページほどの小冊子ですが、フランス文学および世界文学においても高い評価を受けています。

箴言(しんげん=アフォリズム)はフランス語で「マクシム」といい、文学のジャンルでもあります。短い格言的な言葉で人間の精神の多様性や人間の普遍的な真実を著すのが特徴です。マクシムにおいての主語は「私」「彼」などは用いられず、「われわれ」「人」など一般化されて表現されます。

ラ・ロシュフコーのマクシムは、その的確さと短い言葉での凝縮の秀逸さから、究極のアフォリズムとも呼ばれ、ニーチェやショーペンハウアー、芥川龍之介などが愛読したことでも知られています。

「モラリスト」の名言を主著から紹介

最後にモラリストの主著から名言を紹介します。

モンテーニュ『エセー』

たしかに、人間というものは、驚くほど空虚な、多様な、変動する存在だ。

生はそれ自体は善でも悪でもない。きみたちの仕方によって善の場とも悪の場ともなる。

自分の存在を正しく楽しむことができるということこそ、これ以上はない、神のようなと言ってもいいほどの、完成の状態だ。

パスカル『パンセ』

人間は自然の中で最もかよわい一本の葦(あし)にすぎない。しかしそれは、考える葦である。

人は精神が豊かになればなるほど、独特な人間がいっそう多くいることに気がつく。普通の人達は、人々の間に違いのあることに気づかない。

人間は明らかに考えるために作られている。それが彼のすべての尊厳、彼のすべての価値である。そして彼のすべての義務は、正しく考えることである。

人間は、死と不幸と無知とを癒すことができなかったので、幸福になるために、それらのことについて考えないようにした。

ラ・ロシュフコー『マクシム』

われわれの美徳は、ほとんどの場合、偽装した悪徳に過ぎない。

自己愛は、この世で最もずるい奴よりもっとずるい。

われわれに、全く欠点がなかったら、他人の欠点をみつけて、こうも嬉しくはならないのだが。

われわれは、期待があって約束をし、心配があってこれを守る。

肉体の労苦は、精神の苦痛を解き放つ。これが、貧しい人を幸せにする。

誰をも気にいらぬ人は、誰にも気にいられぬ人より、はるかに不幸である。

「ヒューマニスト」と「モラリスト」の比較

ヒューマニストとモラリストが比較されることがありますが、両者の違いはどのようなものなのでしょうか?

「モラリスト」は「道徳家」という意味もある

「モラリスト」はフランス文学の系譜としてのモラリストの意味の他に、「道徳家」「道徳的な人」という意味もあります。「良識・道徳(モラル)のある人」を指す言葉です。

「ヒューマニスト」は「心情の暖かい人」という意味

「ヒューマニスト」は英語「humanist」が語源のカタカナ語で、心情の暖かい人という意味や人道主義者のことを意味します。人道主義とは、人間尊重を基本とした平和や平等を推進する立場のことです。

モラリストは良識のある人、ヒューマニストは心の温かい人

文学ジャンルの意味とは別にモラリストとヒューマニストの意味を比較すると、モラリストは良識や道徳のある人のことを指し、ヒューマニストは心の温かい人のことを指すため、両者の意味は異なります。

まとめ

一般的にモラリストという時は、普遍的な人間像をエッセイや箴言(アフォリズム)で著す思想家のことを指します。モラリストとしてフランスの代表的な思想家を3人紹介しましたが、他にもフランスのデカルトやラ・ブリュイエール、近代ではアランなどもモラリストとされます。

モンテーニュの『エセー』をデカルトやパスカルは熱心に読み、大きな影響を受けたとされます。さらに、懐疑の態度で世界や人間についての確実な認識を発見しようとするモラリストの思索態度は、フランス文学全体にも影響を与えたと考えられています。

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趣味は読書とヨーロッパ旅行です。ドイツには5年余り滞在経験があります。某大学の人間科学部とデザイン学部を卒業。人生が豊かになる知識の探索を人生の糧にしています。