「いぶし銀」の意味と語源とは?使い方の例文や特徴・類語も解説

「いぶし銀」というとどんな色や人をイメージしますか?もともとは「いぶす(燻す)」ことで曇りをつけた銀の意味ですが、「あの人はいぶし銀の活躍だ」といったように野球選手や芸能人などにも幅広く使われる表現です。

その「いぶし銀」の意味や使い方、キャラクターの特徴などについて解説します。例文もあわせて記載しましたので、会話の参考にしてみてください。

「いぶし銀」の意味や語源とは?

「いぶし銀」の意味は”華やかさはないが魅力的なもの”

「いぶし銀」の意味は、”華やかさはないものの魅力的なもの“です。

「いぶし銀」には文字通り“いぶしをかけた銀”という意味もあります。「いぶしをかける」とは、銀などの金属に硫黄のすすで曇りをつけることを言います。

「いぶし銀」は「いぶしをかけた銀」そのものを指すこともあれば、その光沢のない灰色を指すこともあります。銀の素材、色合いのどちらにも使える表現です。

語源は「銀」ならではの味わい

「いぶし銀」という言葉の語源は、「銀」の持つ性質にあります。金属の中には錆びていくものもありますが、「銀」の場合は、化学反応によって硫化し、表面が硫黄銀で覆われるのが特徴です。その色は、黄味がかった色からやがて黒へと変化し、時間をかけて作られる色合い・風合いは、敢えて燻をかけることもある程の魅力を備えます。

そこから、見た目にパッと目を惹くような華やかさはないものの、「いぶし銀」の持つ渋さや奥行きになぞらえて、「魅力的な人」というニュアンスで使われるようになったようです。

「いぶし銀」な人・キャラクターの特徴とは?

目立たなくても実力のある人

「いぶし銀」と呼ばれる人の最大の特徴は、「目立たなくても確かな実力がある」という点です。「華やかさはないものの魅力的」という意味にもあるように、華やかなポジションにある人には使いません。縁の下の力持ちと呼ばれるように、陰ながら支えるような人が「いぶし銀」に該当します。

同時に、確かな実力を備えているのもポイントです。しっかりと支えてくれる人、確実に「仕事」をする人のことを「いぶし銀」と言います。

ベテランな人を指す

実力を備えていることが前提の「いぶし銀」という表現は、しばしばベテランの人に使われます。また、ベテランと呼べるだけのスキル・能力や確かなキャリアを称賛したい場合などにも使うことがあります。

自慢する人は「いぶし銀」ではない

確かな実力や実績を持つ人でも、自らその能力をひけらかしたり、自慢したりするような人には使いません。「いぶし銀」と呼ばれる人は、落ち着いた銀の風合いのイメージが特徴です。どちらかというと謙虚で物静かなイメージが近いといえるでしょう。

「いぶし銀」の使い方と例文とは?

野球選手では堅実な選手に使う

「いぶし銀」が使われることの多い分野に野球界があります。野球選手で「いぶし銀」というと、確かな実力を備えた堅実な選手を指します。とりわけ、守備の名手や犠牲フライを得意とする選手が「いぶし銀」と称されやすいものです。たとえば、「○○選手はもはやチームには欠かせないいぶし銀の選手だ」「○○選手の活躍はまさにいぶし銀だ」などいった表現が可能です。

他にも、10年以上のベテラン選手を指すこともあります。いずれの場合も、4番などの花形ではないものの、重要な局面でしっかりとした成果を発揮してくれるような選手を指します。

スポーツでは「いぶし銀の活躍」ということも

前述の野球選手の例に関連しますが、スポーツでは「いぶし銀の活躍によって勝利に貢献した」という風な表現を耳にすることがあります。

「活躍」というと見た目に目立つような印象を受けますが、元々は「大いに活動する」という意味です。つまり、「いぶし銀の活躍」とは、「目立たないながらも堅実で確かなプレイ(行動)で貢献した」というような意味になります。

将棋では「銀将」の活躍を指すことも

将棋でも「いぶし銀」という表現が使われることがあります。巧みな技で相手を惑わせるような技を持つ人のことを「いぶし銀」と称賛することもあれば、将棋ならではの使用として「銀将」を巧みに操る人・「銀将」を使った将棋を得意とする人を「いぶし銀」と称する例も見られます。

俳優には「いぶし銀の演技」

「いぶし銀」を芸能人や俳優にも使用可能です。この場合、「いぶし銀の俳優」ということもあれば、「いぶし銀の演技をする俳優」ということもあります。たとえば、「日本の映画界に欠かせないいぶし銀の俳優と言えば○○○○だ」などという表現が可能です。

「いぶし銀」の意味にもあるように、目立つような主役級の俳優には使わない表現で、目立たないながらも重要な役どころを演じるような俳優に使う表現です。いわゆる「名脇役」と似た意味の表現です。

「職人」ではベテランの洗練された技巧を指す

伝統工芸をはじめ、金属加工や木工など、日本には様々な職人がいます。こうした「職人」に「いぶし銀」というと、洗練された技巧や芸術性の高さを評価する表現になります。

たとえば、「伝統継承者の名にふさわしいいぶし銀の技」というと、ベテランの洗練された工芸品・技術という意味です。

「いぶし銀」の類語とは?

「いぶし銀」の類語は”円熟味のある”や”渋い”など

「いぶし銀」の類語として、「華やかさはないものの魅力的な物」という意味については「円熟味がある」「味わい深い」「奥深さがある」などがあげられます。

また人の特徴としての「いぶし銀」という意味については、「渋い」「趣がある」「いい味がでている」などが類語となります。

「いぶし銀」の英語表現とは?

「いぶし銀」をそのまま英訳すると「Oxidized silver」

「いぶし銀」をそのまま英訳すると「Oxidized silver」となりますが、これは日本語の「華やかさはないが魅力的な物」や「目立たないけれど実力のある人」という意味が伝わりません。そこで英語で同様の意味として使用できる表現を紹介します。

「渋い・洗練された」の意味ならば「sophisticated」や「refined」

「いぶし銀」という表現をもう少し分かりやすい日本語で言い換えると、渋い・洗練された・うまい・巧みな、などといった言葉に言い換えることができます。これらの意味から探っていくと、「いぶし銀」は「洗練された」という意味の「sophisticated」や「refined」とすることがでるでしょう。

他にも、「restrained(落ち着いた)」や「quiet(静かな)」といった言葉に置き換えることも可能です。

まとめ

「いぶし銀」とは、いぶした銀の持つ風合いなどから、目立たないけれども実力のある人・魅力的な物、という意味で使用される表現です。確かなスキルを指して使うことも多く、「ベテラン」という意味で使用されることもあります。いぶした銀の持つ味わい深さに由来する表現で、渋みや深みなどその風貌を称える表現としても覚えておきましょう。