「アウフヘーベン」の意味とは?使い方の例文や弁証法も解説

「アウフヘーベン」という言葉を知っていますか?哲学者ヘーゲルが使用した弁証法の概念を表す言葉ですが、実はこのアウフヘーベンはビジネスや身近な問題を解決するために取り入れたい優れた考え方なのです。

この記事ではアウフヘーベンの意味やその使い方を紹介します。ヘーゲルの「弁証法」についても説明しています。

「アウフヘーベン」の意味とは?

「アウフヘーベン」とは哲学者ヘーゲルの”弁証法”の概念

「アウフヘーベン」とは、“弁証法”という思考プロセスの最終段階を示す用語です。ドイツの哲学者ヘーゲル(1770年~1831年)が使用した哲学の概念を表す言葉です。「弁証法」とは、”テーゼ(命題)⇒アンチテーゼ(反命題)⇒ジンテーゼ(統合案)”の三段階のプロセスにより、より高次の思考段階に到達することを目指す対話の手法です。

弁証法は「正⇒反⇒合」、または「肯定⇒否定⇒否定の否定」とも表されます。対立や矛盾を包括しながら、高い段階の状態にとどまることを「アウフヘーベン」といいます。弁証法の過程を経て問題を解決することを「アウフヘーベンする」と動詞のように使われることが多いようです。

「アウフヘーベン」の日本語訳は”止揚(しよう)”

アウフヘーベンは日本語で「止揚(しよう)」と訳されます。「aufheben」の訳語として作られた語であるため、一般的にはあまり馴染みのない言葉です。さらに馴染みのない「揚棄(ようき)」という訳語もあります。

「止揚」の「揚」とは「高くひらめき、あがる」という意味であり、「抑揚」「浮揚」などに使われている語です。つまり「止揚(止めて揚げる)」という言葉で、高い次元に引き上げられて全体の中に組み込まれるという意味を表しています。

「アウフヘーベンする」は”二つのものを超越すること”を指す

「アウフヘーベンする」というときは、簡単にわかりやすくいえば、「二つのものを超越する」「昇華する」という意味だといえます。

「アウフヘーベン」の原語とは?

「アウフヘーベン」の原語はドイツ語の”aufheben”

アウフヘーベンの原語はドイツ語の「aufheben」です。「aufheben」には相反する二つの意味「否定する(捨てる)」「高める(持ち上げる)」があります。日常的には「持ち上げる」という意味で使われています。

「テーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ」はドイツ語で「These・Antithese・Synthese」と書きます。

「アウフヘーベン」の使い方とは?

「ビジネスの矛盾を調整する」ために使う

ビジネスを行う上で矛盾はつきものです。例えば短期的な利益を狙うと長期的利益が得られない、利益率を追及するとと品質が低下するなど、常に解決したい問題にさらされています。

矛盾のどちらかに傾きすぎてしまった時に「アウフヘーベンする」ことにより、一旦立ち止まり、よりよい方策を考えることができます。

「ビジネスの議論を深める」ために使う

ビジネスの議論の場で、Aという問題や提案について議論する時、あえて矛盾や対立するBという問題や提案を提示し、そのどちらも超越するCという結論を目指すことで議論に深みを与えることができます。

「身近な問題の解決」に使う

ビジネス以外でも、身近な問題を「アウフヘーベンする」ことにより解決することができます。例えば夫婦の意見が対立する時は、感情的になって機械的に相手の意見を否定してしまいがちです。そのような時は、両者の意見を尊重してよりよい第三の解決策を目指す「アウフヘーベン」の概念を知っているだけで、対話の質が全く違うものになるといえるでしょう。

「アウフヘーベン」を使った例文

「アウフヘーベン」を使った例文をご紹介しましょう。

  • アウフヘーベンすることで新たな価値を創造できる
  • 是か非かではなくアウフヘーベンを目指したいものだ
  • 原点の理念と未来の目標をアウフヘーベンして方針を決定する

弁証法の「アウフヘーベン」とはどのような議論?

「アウフヘーベン」は対立・矛盾する2つのものを統合する

弁証法は単なる討論や議論とは異なります。「討論」とはある事柄について意見を戦わせること、「議論」とはそれぞれの考えを批評し合いながら論じ合うことをいいます。

それに対して「弁証法」は、対立した意見について議論することにより、思考を深め、高い段階へと進んでいく思考方法のことをいいます。そこでのポイントは、互いに対立・矛盾する二つのものに対してどちらも否定せず、両者を包み、統合するということです。

まとめ

「アウフヘーベン」とは、ドイツの哲学者ヘーゲルが弁証法の思考プロセスとして提示した概念で、「二つのものを超越する」「昇華する」という意味です。

一人の意見に対して別の一人が違う意見を持つ時、それぞれの意見を否定するのではなく、お互いを尊重しながらあらゆる可能性を探るために深い対話を行うことで、二つのものを超越した、より高い次元の理解(結論)に至ることができます。この状態に至る過程、あるいはその結果を「アウフヘーベン」といいます。

アウフヘーベンの概念は、議論や対話を行う時の技術として取り入れることで、一方通行になりがちな対話の質を高めることができます。ぜひ活用してみてください。

■参考記事

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