「情状酌量」の意味とは?刑法の基準・使い方から類語まで解説

「情状酌量」という言葉は、ニュースをはじめ、テレビドラマなどで耳にする機会も多いものです。「情状酌量」の法律用語としての意味や、「情状酌量の余地あり」「情状酌量の余地なし」など使い方について解説します。似た意味の表現や日常会話での使用例も紹介しますので、参考にしてみてください。

「情状酌量」とは?

「情状酌量」の意味は”事情をくみ取り手加減すること”

「情状酌量」の意味は、”事情をくみ取り手加減すること”です。その事情を考慮し、処罰や処置を手加減することを表した四字熟語です。「情状」とは実際の事情のこと、「酌量」とは事情をくみ、手加減すること、という意味があります。

「情状酌量」は刑法に定められた法律用語

「情状酌量」とは本来、法律に関する用語のひとつで、その内容は刑法にも定めがあります。刑法では、「情状に酌量すべきものがあるとき」という表現で用いられており、その場合は刑を軽減することができるとされています。

このことから、「酌量」という言葉については、裁判官が量刑の確定において、「その背景をくんで減刑すること」の意味として紹介されることもあるようです。

「情状酌量」の基準は前科の有無や犯行の動機など

裁判において、「情状酌量」と判断されるケースには様々な理由がありますが、一般には以下のような点が基準となります。

  • 前科の有無
  • 犯行の動機
  • 犯行の様子
  • 犯行後の様子
  • 被告人に反省の色が見られるかどうか

他にも、被告人にとって有利となるような状況がある場合には、「情状酌量」と判断されることもあります。

「情状酌量」の使い方とは?


法律用語である「情状酌量」はニュースでもよく耳にすることがあります。ここでは、その使い方の例を紹介します。

「情状酌量の余地あり」とは有利な事情があること

まずはよく耳にする「情状酌量の余地あり」という表現から解説しましょう。「情状酌量の余地あり」とは、「被告人に有利な事情があるので減刑する必要がある」という意味です。

この場合の「余地あり」とは、「考慮するだけのゆとりがある」という意味で、精神的なゆとり・余裕という意味で使用されています。たとえば、被告人に反省の色が見られたり、自首しているなど犯行後の様子が悪質ではなかったりした場合には、「情状酌量の余地あり」とみなされることがあるようです。

「情状酌量を求める」という表現も

「情状酌量の余地あり」と判断するのは裁判所ですが、弁護側が「情状酌量を求める」という場合もあります。たとえば、「被告人にはこういった事情があるので、量刑を軽くしてください」「事情を勘案してください」と訴える場合に使われる表現です。

「情状酌量」によって執行猶予がつくことも

「情状酌量によって懲役3年執行猶予4年の判決が言い渡された」という表現もよく耳にします。

「執行猶予○年」とは、「その期間だけ、判決の執行を先送りにします」という意味です。つまり、「懲役3年執行猶予4年」の場合、「刑罰としては懲役3年の判決を言い渡すが、刑の執行までは4年間の余裕を与えます」という意味です。さらに、その4年の間に罪を犯さなければ刑罰はなかったことになります。

「情状酌量」を訴えるのには、この「執行猶予」を勝ち取るためという弁護側の意図も多いものです。

「情状酌量の余地なし」も当然ありうる

「情状酌量の余地あり」とされる一方で、「情状酌量の余地なし」というケースももちろんあります。たとえば、「非常に身勝手かつ計画的な犯行であり、情状酌量の余地はない」などという風に表現されます。

判例の枠を超え、日常会話で使われることも

「情状酌量」は本来、裁判に関する用語でしたが、近年では日常会話でも使用されるシーンが増えているようです。たとえば、仕事でミスをした人や誤った対応をした人に対して、寛容な姿勢を示す場合などにも「情状酌量」という言葉が用いられることがあります。詳しくは後ほど、例文を交えて紹介しましょう。

日常会話での「情状酌量」

「情状酌量」は裁判だけでなく、最近では日常的にも浸透している言葉です。日常での使用例を見ていきましょう。

日常会話では「相手の事情をくむ」の意味で使われる

通常の会話で「情状酌量」を使う場合には、過失に対して「考慮すべき事情である」「同情すべき点がある」という意味で使用されます。

たとえば、「2日連続、無断で遅刻するとは情状酌量の余地もない」という風な使用が可能です。この場合、「2度も無断遅刻とは同情もできない」「悪質だし叱責されて当然だ」というニュアンスになります。

「情状酌量=許す」ではない

日常会話では、「情状酌量して許してあげよう」という言い方がされることもあります。「事情もあるようだし許す」という意味合いで使用されているようですが、厳密にいうと、この例は誤りです。

そもそも、「情状酌量」とは「事情を考慮して減刑する」という意味の表現です。裁判では、事情を考慮して「減刑する」ことはあっても、犯罪の事実がある場合に「許す=無罪」とはなりません。あくまでも「寛容な姿勢を示す」というのが「情状酌量」です。本来の意味を忘れないようにしたいものです。

「情状酌量」の類語とは?

「情状酌量」と似た意味の言葉には次のようなものがあります。

情状酌量の類語①「寛容な判決」「温情ある裁定」

「情状酌量」された判決は、「寛容な判決」「温情ある裁定」などと表現することができます。被告人の事情を考慮し、それに配慮したという裁判所の判断は、「情けある判決」と言われることもあります。

情状酌量の類語②「忖度」「斟酌」

法律・裁判以外では、「忖度」「斟酌」などといった言葉が類語として挙げられます。

「忖度(そんたく)」とは、「相手の気持ちを推察すること」という意味の言葉です。「斟酌(しんしゃく)」とは、「相手の気持ちを推察した上で、物事の処理を進めること」を指します。

「忖度」と「斟酌」はいずれも似た意味の言葉ですが、「斟酌」は「行動に移す」というニュアンスを含む点が特徴的です。

「情状酌量」の英語表現とは?

「情状酌量」を英語で表現したい場合にはどうなるのでしょう。

英語では「extenuation」を使う

「情状酌量」を英訳すると、「extenuation」となります。文章表現としては、「情状酌量の余地はない」という意味で、以下のような表現が用いられることもあります。

  • There can be no extenuating circumstances.(情状酌量の余地はない)
  • Nothing can mitigate his misconduct(彼の非行を酌量できるものはない/情状酌量の余地はない)
  • plead mitigating circumstances(酌量すべき情状を嘆願する/情状酌量を願う)

ここで使われている「mitigate」とは、「刑罰を軽減する」という意味です。

まとめ

「情状酌量」には、「(被告人の)事情を考慮して、刑を軽くすること」という意味があります。最近では日常的にも、相手の事情を考慮したり、同情すべき点があると言ったりする場合にも、「情状酌量」は使われています。ただし、本来の意味としては、「情状酌量=許す・無罪」というわけではないというのは覚えておきたいポイントです。