「ピーターの法則」とは?人材の無能化を回避・対策する方法を解説

世の中には研究に研究を重ねて生まれたさまざまな法則があります。ことにビジネスにおいては多くの法則が存在し、健全な企業存続への理念として取り入れる場合がありますが、中で「ピーターの法則」は、人事や経営者が理解しておきたい一つでもあります。

人材の能力がいかに企業に影響するのか、ここでは「ピーターの法則」に迫ってみたいと思います。おすすめの本・書籍3冊もご紹介しますので、参考にしてみてください。

「ピーターの法則」とは?

「ピーターの法則」とは「自己能力が進展しなければ企業は無能化すること」

「ピーターの法則」とは、米国の南カリフォルニア大学教授であるローレンス・J.・ピーターによって提唱された法則です。企業を始めとする組織構成員の労働や能力に関わる「階層社会学」の実態を説き、「自己能力が進展しなければ、企業や組織が結果的には無能化してしまう」という概念を持ちます。

有能な平社員は順調に昇格しますが、その後、能力に進展がなければ「その地位止まり」となり、無能な平社員は昇格もせずそのままとなります。

つまり、企業や組織で働く人材は、最終的に「無能レベル」で各階層における地位が止まるため、「無能な人材」で一杯になるという法則です。

有能な人材が「無能」に転じる悲しいプロセス

日本ではまだまだ出世プロセスにおいて「現場での叩き上げ」のケースが多く見られます。これらの人材は現場における厳しい状況を超えてやっとの思いで管理職になるも、ゴールへ到達への安心感にとうとう力が尽きてしまうのです。

通常なら現場を知り尽くすプロフェッショナルとして、部下にきめ細やかなアドバイスをすべきなのでしょうが、実際は能力を極めてしまったため、末路として「無能化」してしまうパターンです。

しかし、全ての人材が「全く能力のない人間である」といえば、表現に語弊があるでしょう。むしろ、究極まで能力を使い切ってしまったため、進展すべき能力が存在しないと行ったほうが適切かもしれません。

「ピーターの法則」を回避するための3つの対策とは?

中間管理職や管理職が「ピーターの法則」の代表的な例とならないように、心がけるべき点を3つ紹介します。

対策①ピーターの法則を回避するために能力進展を助ける提案

長い下積みを経て昇格した人は、ある程度納得できる役職についた途端に気持ちが「落ち着いてしまう」ことがほとんどでしょう。ハングリー精神や湧き出るようなモチベーションが薄れ、この程度で落ち着こうと自分にブレーキをかけてしまうのです。

「ピーターの法則」を回避するためには、出世による「落ち着く」という感覚を打ち砕く必要があります。管理職研修やさらなる資格取得など、常に能力進展を助ける提案を心がけましょう。

対策②勤続年数で昇格するシステムを排除する

企業によっては、一定の勤続年数を消化すると必然的に昇格するシステムを導入しているところがあります。能力の有無に関わらず「時が経てば出世する」というエレベーター式昇格システムが確立していれば、必死に努力をしなくても、ある程度の地位を手にすることができてしまうということです。

まず、企業勤続年数で昇格するシステムを排除し、さらに周囲のフィードバックや業務成果をベースに昇格する制度へとシフトするよう検討しましょう。

対策③日本でも多い「ハロー効果」だけで昇格させない

「ハロー効果」とは「後光効果」のことで「人が放つ目立ちやすい特徴で評価が変ること」を意味しています。

たとえば、ヨレヨレのスーツを着ていても、海外の名門大学を卒業し、MBAの資格を保持してると知れば周囲の見方は変わってくるはずです。このハロー効果によって昇格させる文化がある企業は「ピーターの法則」へまっしぐらな可能性があります。

真剣に企業の発展を望むなら、純粋に能力や成果で評価をする「相対評価制度」や「絶体評価制度」を導入するとよいでしょう。

■参考:「ハロー効果」の意味とは?人事やマーケティングの具体例も紹介

「ピーターの法則」を学ぶならこの本!おすすめ書籍3選

最後に「ピーターの法則」関連のおすすめ本を3つ紹介しましょう。企業に求められる社員でいるためのマニュアル本としてご活用下さい。

ピーターの法則 創造的無能のすすめ

「ピーターの法則 創造的無能のすすめ」は「ピーターの法則」を提唱したローレンス・J・ピーター著の一冊です。

皮肉たっぷりのタイトル名が意味するのは「企業で働く人材は無能レベルに達するまで昇進する」、そして「いずれ組織は崩壊を迎える」ということです。「ピーターの法則」を段階的に説明しながら「有能な人材として企業にとどまっておく知恵」をユーモアたっぷりにまとめています。

【新装版】ピーターの法則「階層社会学」が暴く会社に無能があふれる理由

社会人生活を送っていると、階層社会における口には出せない悲しい真実を目のあたりにするものです。たとえば「昇進した途端に無能と化した上司」や「空中に浮いてしまっている管理職」、また「親の七光りやコネの末路」など、組織をり巻く普遍的な状況はいくつも転がっています。

おそらく多くの人がこの本を読みながら「あるある!」と何度もうなづいてしまうでしょう。自己進展を怠らず、企業に「必要」とされる人材になることこそが、未来を安定へと導く鍵であることが理解できる本です。

10年後、君に仕事はあるのか?ー未来を生きるための「雇われる力」

「ピーターの法則」に陥らず、10年後も「雇われ続ける」方法、その力の付け方とコツが事細かに記されています。雇用に不安のある人や転職を考えている人へ、心の支えとなる一冊です。全編に渡り、企業に求められる「雇われる力」について熱く語っている点が特徴でしょう。

まとめ

「ピーターの法則」は、ユーモアの溢れる論理がぎっしり詰まった「階層社会学」の法則で、「無能レベル」で地位が止まり、最終的には組織や企業が無能な管理職や部下でいっぱいになるという理論で注目を浴びています。

今の仕事に満足している人もそうでない人も、数年後の自分の姿をす想像することはおそらく容易ででしょう。しかし、「無能な人材」と呼ばれないようにするにはどうすればよいか、「ピーターの法則」を理解した上で、改めて考えてみたいものです。