「朝令暮改」の意味と使い方とは?間違えやすい類語についても解説

「朝令暮改」は、中国の古い書物に由来する四字熟語のひとつです。この「朝令暮改」の意味と使い方をはじめ、英語や類語、混同しやすい四字熟語まで詳しく解説します。一般にはネガティブなニュアンスでつかわれる「朝令暮改」ですが、そのデメリットについても触れてみました。

「朝令暮改」とは?

「朝令暮改」の意味は”絶えず変わり定まらないこと”

四字熟語「朝令暮改」の意味は、“絶えず変わってしまい、定まらないこと”です。「朝令暮改」を漢字で読み解くと、「朝に出された法令が、日が暮れるころには改められている」となり、「(法令などが)すぐに変わってしまいあてにならない」というニュアンスで使用されます。法令や国・自治体の施策などのほか、会社の体制などに対しても使うことができます。

「朝令暮改」の読み方は”ちょうれいぼかい”

「朝令暮改」の読み方は、“ちょうれいぼかい”です。すべて音読みで読むのが特徴です。読みは難しくないという人でも、気を付けたいのが誤字です。

その音の響きから「朝礼暮改」と記される例を時折見ますが、正しくは「朝令暮改」と書きます。「朝に出された法令が夕方には変わってしまう」という意味や由来を覚えておくと、「朝令暮改」の字も間違えにくくなります。

「朝令暮改」を訓読みにすると”朝に令し、暮に改む”

「朝令暮改」を訓読みで表現すると「朝に令し、暮れに改む」と読みます。ここで使われている「令し」とは、「令する」のことで命令する・言いつけるという意味です。

「朝に令し、暮れに改む」という訓読みは頻繁に使う表現ではありませんが、これを機に頭の隅においておくと、言葉の理解にも役立つかもしれません。

「朝令暮改」は中国の書物”漢書”に由来する言葉

「朝令暮改」という四字熟語は、中国の古い書物『漢書』にその由来があります。そこでは、農民の苦労をあらわす一節で、「朝に出された命令が夕方には変更されてしまい、生活が大変で苦しい」という文脈で使用されているようです。

「朝令暮改」の使い方と例文とは?

「朝令暮改」を実際に使う場合にはどういった文章表現になるのでしょう。使い方について、例文を交えて紹介します。

法律から会社の規則まで幅広く使える

「朝令暮改」は国の法令をはじめ、自治体の施策・条例などにも使うことができます。また、民間企業の規則・体制に対しても使うことのできる表現です。具体的には、以下のような使い方が挙げられます。

  • 「朝令暮改」な政策のせいで現場はいつも振り回される
  • 経営陣が一新してからは「朝令暮改」の指示が減った
  • 彼に頼まれる仕事はまさに「朝令暮改」で、とてもついてはいけない

いずれも、「内容がすぐに変わる」というニュアンスになり、それによって不都合を感じている・困っているというニュアンスで使うのが「朝令暮改」の特徴です。

「朝令暮改」の何が悪いの?デメリットとは?

「朝令暮改」は、「すぐに変わってしまうのであてにならない」というネガティブなニュアンスを含む表現です。そのデメリットが注目されがちですが、ビジネスにおいては「朝令暮改」が必ずしも悪いとは限らないようです。「朝令暮改」のデメリットとメリットについて紹介します。

信頼性に欠けるのがデメリット

これまでにも触れてきましたが、「朝令暮改」の一番のデメリットは「信用性に欠ける」という点です。法令が度々変わってしまうと、その先にある国民・住民をはじめとして多くの人が戸惑ったり、実際に困惑したりする様子は容易に想像できます。企業の経営陣が方針を度々変更していては、現場や部下が困る様子も目に見えています。

さらに、「またすぐに変わるかもしれない」という感情が蔓延してしまうと、その法令の拘束力、あるいは国や会社(上司)に対する信頼が弱まってしまうというのが大きなデメリットです。

「朝令暮改」にはスピード感というメリットも

「法令がすぐに変わってしまう」のはデメリットが多いと言えますが、常に変化が求められるビジネス界においては、「朝令暮改=スピード感のある対応」というメリットになることもあります。

ビジネスでは、とりまく状況の変化をいち早くキャッチし、その時々に見合う臨機応変な対応をとることが求められます。そのやり方は「朝令暮改」となることもしばしばです。「朝令暮改」という言葉そのものはネガティブなニュアンスで使用されますが、絶えず変化することは必ずしも悪いものではないというのは、ビジネスでは覚えておきたいポイントです。

「朝令暮改」の類語表現とは?

ビジネスシーンでも使用できる「朝令暮改」にはどういった類語があるのでしょう。言い換えにも便利な類語表現を紹介します。

「朝令暮改」の類語①”二転三転”

「朝令暮改」と似た意味の四字熟語では、「二転三転」があげられます。「二転三転」とは、状況が何度も変わってしまう様を指す言葉で、「話が二転三転している」などという風に使用することができます。

また、四字熟語以外では、「首尾一貫していない」も「朝令暮改」の類語表現です。「首尾一貫していない」とは、方針や考えが変わってしまい筋が通っていないことを指します。

「朝令暮改」の類語②”朝改暮変”

「朝令暮改」と似た意味の四字熟語には、「朝改暮変」というものもあります。「朝改暮変」は「ちょうかいぼへん」と読み、意味は「朝令暮改」と同じです。一見すると誤字のようですが、「朝令暮改」「朝改暮変」のどちらも存在する言葉ですので、どちらを使っても問題ありません。

「朝三暮四」はまったく異なる意味で「朝令暮改」の類語ではない

一方、漢字は似ているものの意味はまったく違う四字熟語が「朝三暮四」です。

「朝三暮四(ちょうさんぼし)」とは、「朝は3つで暮れ(夕方)は4つ」では腹を立てるのに、「朝4つ暮れ3つ」にしたら納得したというエピソードに由来する四字熟語です。そこから、「目先の利益に気を取られ、実際は同じなのに気が付かないこと」「うまい言葉・似たようなもので人をだますこと」という意味があります。

「朝」「暮」という似た感じを使ってはいますが、「朝令暮改」とは異なる意味の四字熟語ですので、混同しないように気を付けましょう。

「朝令暮改」の英語表現とは?

「朝令暮改」の英語表現を紹介しましょう。

英語では「一貫性がない」と表現するのがベター

「朝令暮改」を英語にする場合には、「一貫性がない」という表現がベターです。「一貫性がない」は、「inconsistent」で表します。たとえば、「My boss is inconsistent」とは、「私の上司は一貫性がない(度々指示が変わってあてにならない)」という意味になります。

ほかにも、「理不尽」という意味の「unreasonable」という言葉を使っても、「朝令暮改」に似たニュアンスの表現を作り出すことが可能です。

まとめ

「朝令暮改」とは、「法令や体制がすぐに変わってしまい、あてにならない」という意味の四字熟語です。ネガティブな印象で使われますが、ビジネスのスピード感を大事にする場合は、あえて「朝令暮改」が行われることもあります。言葉本来の意味とは異なりますが、時に「朝令暮改」のような対応が求められることもあると覚えておきたいものです。