「五里霧中」とは、中国の古い歴史書に由来する四字熟語です。「霧の中にあるようだ」という例えを用いた「五里霧中」の意味と使い方について解説します。言い換えにも便利な英語表現や、類語の「曖昧模糊」「暗中模索」との違いなどについても紹介します。
「五里霧中」の意味とは
「五里霧中」の意味は「迷ってしまい先の見通しが立たないこと」
「五里霧中」の読み方は「ごりむちゅう」です。「五里先まで霧の中に包まれている」という意味で、およそ20キロメートル四方を霧に包まれているというのが、本来の言葉の意味です。
そこから、「先の見通しが立たないこと」「迷ってしまい判断がつかないこと」という意味の四字熟語として使用されています。「やるべきことが分からない」という意味でも使用することのできる表現です。
「五里霧中」の由来は中国の歴史書
「五里霧中」は、中国の歴史書である『後漢書』に由来するとされています。その中にある、五里にわたる霧によって自らの姿をくらます術「五里霧」を得意とする人物のエピソードが、「五里霧中」の元となっているようです。そこから、五里四方の霧の中では周囲の様子が分からずに迷ってしまう、という意味に発展したと考えられています。
「五里霧中」が正、「五里夢中」は誤字
「五里霧中」は「五里夢中」という誤表記の多い四字熟語でもあります。先述したように、「五里にもわたる霧の中」というのが「五里霧中」の語源ですので、「夢中」という漢字は誤りです。
「五里霧中」の使い方と例文
「五里霧中」はやるべきことが分からないときに使う
「五里霧中」は、何をすべきかわからない・先の見通しが立たないことを表現するための四字熟語です。霧の中にいるような、先が見えずに困った状況を言いたいときに使います。
また、今現在の状況を表す際にも「五里霧中」は使うことができますが、「長らく霧の中にいたが抜け出せた」というように、過去を振り返って「五里霧中」と表現することもあります。
「五里霧中」を使った例文
- 転職後しばらく、わたしは五里霧中で大変だった
- リーダー不在の状況に、メンバー達は五里霧中に陥った
- 五里霧中の状況が続き困り果てていたが、ようやく光が見え始めた
- 長らく続く不況の影響で、当社は五里霧中の状況にある
「五里霧中」の類語
「五里霧中」の類語は「手詰まり」「立ち往生」「万事休す」
「五里霧中」の類語には、「手詰まり」「立往生」などが挙げられます。「手詰まり」は「打つべき手段がなく困っている様」を意味し、「立往生」は「物事に行き詰まり困る様」を表す言葉です。霧を使った表現ではありませんが、困っていることを表す意味では類語といえます。
また、「もはや施す手段がなく何をしてもだめな状況」を意味する「万事休す」も類語と言えるでしょう。
似た意味の四字熟語は「曖昧模糊」
「五里霧中」と似た意味の四字熟語のひとつが「曖昧模糊」です。「曖昧模糊(あいまいもこ)」とは、はっきりしない様・ぼんやりとしている様を指し、「五里霧中」の類義語といえるでしょう。
ほかにも、周囲が敵ばかりで助けがないという意味の「四面楚歌(しめんそか)」や頼るものもなく孤独なさまを意味する「孤立無援(こりつむえん)」なども、「五里霧中」と似た意味の四字熟語として紹介されることがあります。ニュアンスは少し違いますが、「先の見通しの立てようがない」という意味では、「五里霧中」の類義語といえる表現です。
「暗中模索」も類語だが、行動を伴うのが違い
「五里霧中」と似た意味の四字熟語には、「暗中模索」も挙げられます。「暗中模索(あんちゅうもさく)」とは、確信が持てないような暗がりの中を模索する・確信がないままでも手さぐりで行動する、という意味の四字熟語です。
先の見通しが立たない様は「五里霧中」と同じですが、「五里霧中」が単に状況を説明する言葉であるのに対し、「暗中模索」は実際に試す・行動するというニュアンスが入る点が大きな違いです。
「五里霧中」を英語にすると?
「五里霧中」の英語表現では「霧」ではなく「海」を用いる
英語にも「五里霧中」と同じような慣用表現がありますが、「霧」ではなく「海(sea)」を使うのがポイントです。
たとえば、「I was completely at sea」で「私は五里夢中の状態にあった[何をすべきか見当もつかなかった]」という意味になります。「be at sea」で「五里霧中」という意味として使うことができますので、ぜひ活用してみてください。
まとめ
「五里霧中」は「霧の中にいるように先の見通しが立たない」という意味の四字熟語です。「判断がつかない」「何をすべきかわからない」という意味でも使うことができます。「曖昧模糊」「暗中模索」など似た意味の四字熟語をいくつか紹介しましたが、微妙にニュアンスが異なる表現もあります。細かい意味の違いにも気を付けながら使ってみてください。