「デリダ」の思想とは?「脱構築」やエクリチュールも解説

「ジャック・デリダ」は「脱構築」の手法によって、西洋哲学の真理や普遍性を批判し、ポストモダン思想の代表として注目を集めました。この記事ではデリダの思想やキーワードについて紹介します。おすすめの入門書も紹介しています。

「デリダ」とは?

まずはじめにデリダについて紹介します。

デリダは西洋哲学を脱構築した

ジャック・デリダ(1930年~2004年)は、フランス領だったアルジェリアで生まれたユダヤ系フランス人の哲学者です。パリの高等師範学校で哲学を学び、哲学教授となります。

フッサールやハイデガーの現象学に影響を受け、哲学を批判的に発展させました。デリダは哲学の考え方自体を批判し、内側から解体してゆきました。その方法をデリダは「脱構築」と呼びました。

哲学以外の政治や建築などにも大きな影響を与えた

デリダの「脱構築」の思想は、構造主義以降の思想に大きな影響を与え、哲学のみならず、文学や芸術、政治や建築など幅広い分野にも影響をもたらしました。ビルバオ・グッゲンハイム美術館に代表される脱構築主義建築なども現れました。

「実存主義」から「構造主義」、そして「ポスト構造主義」へ

第二次世界大戦後にはサルトルの「実存主義」が広まりました。「実存は本質に先立つ」というスローガンのもと、人々は自分の人生の意味を考えたのです。1960年代になると、さまざまな要素から成り立つ構造が、自分の人生に影響を与えているとするレヴィ=ストロースの「構造主義」が実存主義にかわります。

60年代の終わり頃からデリダは「構造主義」の構造の概念を壊し、「ポスト構造主義」の思想を展開しました。

映画『デリダ、異境から』に出演

デリダは生前に映画に出演しています。エジプト出身の映画監督サファー・ファティによって製作され、1999年にフランスで公開された映画『D’Ailleurs, Derrida』(邦題『デリダ、異境から』)です。

デリダのユダヤ人としてのルーツや、思想形成に関わるさまざまな場所をめぐる作品で、その場所でデリダが語ったり、ナレーションがつけられたりしています。デリダとともにカミュの故郷でもあるアルジェリアも収められています。

2000年には、デリダとサファーが映画の製作過程や映画論について語った『言葉を撮る』が刊行され、日本では、青土社から映画のDVD付きで発売されています。

「デリダ」の思想とは?

次にデリダの思想とそのキーワードについて紹介します。

デリダは「ドゥルーズ」とともに「ポスト構造主義」の代表

デリダは構造主義の巨匠と呼ばれたレヴィ=ストロースを批判し、「ポスト構造主義者」として認知されることになりました。ジル・ドゥルーズも同時代のポスト構造主義の代表です。

ドゥルーズが、精神科医のフェリックス・ガタリとともに発表した『アンチ・オイディプス』をはじめとする著書は、フランスで1968年におきた五月革命以降の人々に生き方を示し、構造主義以後の新たな思想の潮流をデリダとともに生み出しました。

デリダの哲学のキーワード:「脱構築」

デリダは自分の議論の展開の手法を「脱構築」と呼びました。デリダの脱構築とは、伝統や秩序を解体し、隠ぺいされていたものを解き明かし、意味を解釈しなおすことでした。

デリダは脱構築の概念をハイデガーの「解体」から得たといっています。ハイデガーの解体とは、支配的な伝統の由来を解き明かし、伝統の系譜を明らかにすることでした。系譜をたどるためには、伝統の解体が必要だったのです。

デリダは、ギリシャ哲学以来の思想である、二項対立の構造を脱構築によって崩していきました。デリダは、ソクラテス、プラトンからカント、ルソー、ニーチェやマルクス、カフカなど、多くの過去の思想家を脱構築しました。

デリダの哲学のキーワード:「差延」

「脱構築」とともにデリダが使った独自の概念に「差延(さえん)」があります。ものを見る時、どれほど安定して見えていても、空間的な差異(ズレ)と時間的な遅延(ズレ)が生じるとし、この二つの意味をあわせもつ概念を「差延」と表現しました。

また、現実を言葉にしたときは、すでに別のものになっているのに、それを認めないことを「現前の形而上学」といって批判しました。

デリダの哲学のキーワード:「パロール」と「エクリチュール」

デリダは脱構築の手法で、西洋の伝統的な「ロゴス中心主義」を解体することを目指しました。その考えを理解するために「パロール」と「エクリチュール」の概念を理解する必要があります。

「パロール」とは音声言語のことで、「エクリチュール」とは文字言語のことです。デリダは、プラトン以来の西洋においては、パロールが優位にあり、エクリチュールは従属しているとして「音声中心主義」を批判しました。音声中心主義はロゴス中心主義でもあるとして、ロゴス中心主義の解体を提唱しました。

「デリダ」の著書を紹介

1967年に出版されたデリダ三部作と呼ばれる初期の著書は、当時のフランスで流行していた構造主義の思想への批判と受け止められ、のちにデリダを代表とする「ポスト構造主義」の流れを生み出しました。

デリダの初期の思想が著された三部作について紹介します。

『声と現象』

『声と現象』の正式なタイトルは『声と現象ーフッサール現象学における記号の問題への序論』です。本書では、フッサールの現象学や音声中心主義を批判しました。その読解を通して脱構築の手法が生み出されました。

『エクリチュールと差異』

『エクリチュールと差異』では、デカルトを批判し、「私は考える。ゆえに、私は存在する(コギト・エルゴ・スム)」に異を唱えました。デカルトの思索は自分の使った言語に制限されており、思索に枠をはめているといいます。デカルトの理論は、単に文法(グラマー)のおかげだという主張です。

また本書では、フーコー、フロイト、レヴィ=ストロースらの哲学を読解しながら、痕跡、差延、脱構築などのデリダ哲学の概念を展開しました。

『グラマトロジーについて』

『グラマトロジー』では書物の終焉とエクリチュールの学、すなわち新しい「グラマトロジー」が始まることを示しました。クロード・レヴィ=ストロースの構造主義を批判し、原エクリチュールの暴力について論じています。

「デリダ入門」おすすめの本を紹介

デリダの著書はその独特の概念や専門用語が多いため、現代思想の流れや全体を概観できる解説書から入門するのがおすすめです。

  • 『フランス現代思想史 構造主義からデリダ以後へ』

本書はサルトルの実存主義から構造主義へ、そしてポスト構造主義の展開という、フランス現代思想の歴史を一望できる解説書です。デリダを含むフランス現代思想史に興味のある方におすすめです。

 

  • 『デリダ 脱構築と正義 』

本書はデリダの思想や背景についてわかりやすく解説されたデリダの入門書です。形而上学の脱構築とは何か、脱構築的決定とは何か、などデリダの思想に触れる上での基本となる考え方について知ることができます。キーワード解説と読書案内もついています。

まとめ

現代思想の転換点といわれるデリダの思想は「脱構築は哲学を前進させたのか、それとも哲学の息の根を止めたのか」「脱構築の理論は無駄な言葉で物事をあいまいにする」などとも批評され、登場した当時から賛否両論があったようです。

デリダの脱構築は、二項対立からこぼれ落ちるものをすくい上げ、西洋哲学や西洋文化の真理を批判するものでした。紹介した初期の著書から2004年に没するまで、デリダは旺盛な執筆活動を続けましたが、その哲学の全貌は、まだ明らかになっているとはいえないようです。