「鎧袖一触(がいしゅういっしょく)」という四字熟語は、勝ち負けを話題にする際に使う表現です。アニメでの使用で注目を集めたこともある「鎧袖一触」の意味や使い方について、解説します。あわせておさえておきたい、類語や英語表現も参考にしてみてください。
「鎧袖一触」とは?
「鎧袖一触」の意味は”簡単に相手を負かすこと”
四字熟語「鎧袖一触」の意味は、“簡単に相手を打ち負かすこと”です。文字通りに解釈すると、「鎧(よろい)」の袖がちょっと触れるという意味で、”たったそれだけのことで相手が倒れた”という例えとして使われています。
そこから、「鎧袖一触」は「相手にたやすく勝った」「一撃でしとめた」というように、圧倒的な力の差を誇示するような表現となっています。
「鎧袖一触」の読み方は”がいしゅういっしょく”
「鎧袖一触」は“がいしゅういっしょく”と読みます。先にも少し触れましたが、「鎧」の訓読みは「よろい」です。四字熟語にした場合は音読みし、「がい」と読みます。
「一触(いっしょく)」とは、「ひとたび触ると」「ほんのちょっとでも触ると」という意味で使用されます。「一触即発」のようにほかの四字熟語でも使われる表現です。
語源・由来は日本の歴史書『日本外史』の一節にあり
「鎧袖一触」は、日本の古い歴史書である『日本外史』にあるとされています。そこに記載された、源為朝という人物が、敵方である平清盛の軍勢について「私の鎧がちょっと触れただけでも倒れてしまう」と豪語したというエピソードが「鎧袖一触」の語源となっているようです。
そこから、「簡単に勝てる」「たやすく打ち負かす」というような意味で使用されるようになったとされています。
「鎧袖一触」の使い方と例文とは?
「鎧袖一触」はどういったシーンで使用できるのでしょう。使用例を紹介します。
「鎧袖一触」は勝敗を述べる際に使う表現
「簡単に打ち負かす」「圧倒的な力の差で勝つ」という意味のある「鎧袖一触」は勝負事に対して使う表現で、スポーツなどでの使用が一般的です。以下に例文を記載します。
- チャンピオンの「鎧袖一触」の強さに、観客は度肝を抜かれた
- 史上初の連覇を成し遂げたその強さは、「鎧袖一触」とも報じられた
- 「鎧袖一触」で打ち勝ってやる!
また、スポーツだけでなく、ビジネスでも、企業間・スタッフ間での競争に対して使うこともあります。たとえば、
- 業界最大手のA社は今期も「鎧袖一触」の状況だ
というと、「A社の業績が他の追随を許さない独走状態」といったニュアンスになります。また、
- 自信があるのはよいが、おごっていると「鎧袖一触」の目に遭う
と、「相手を軽く見ていると圧倒的な差をつけて打ち負かされる」といったニュアンスでの使用も可能です。
「相手にされない」の意味で”鎧袖一触”を使うことも
「圧倒的な勝利」という意味合いを含む「鎧袖一触」は、「相手にされない」「話を聞いてもらえない」という意味でも使用されることがあります。たとえば、
- 社長に進言したが「鎧袖一触」された
とすると、「耳を貸してもらえなかった」というニュアンスです。「聞いてさえももらえない」というやや強いニュアンスとして使うことができます。
「鎧袖一触」の類語とは?
「鎧袖一触」はやや難しい四字熟語ですが、言い換えるとすればどういった表現があるのでしょう。類語を紹介します。
鎧袖一触の類語は「楽勝」「瞬殺」
「いともたやすく打ち負かす」という意味の「鎧袖一触」は、「楽勝」「瞬殺」といった単語が類語です。
「楽勝(らくしょう)」は日常会話でもよく使う表現で、文字通り「楽に勝つ」ことを意味します。一方、「瞬殺(しゅんさつ)」とは、「一瞬で相手を倒す」という意味でつかわれる言葉です。
他にも、「一撃でしとめる」や「あっという間に勝負をつける」などといった表現も、「鎧袖一触」と似た意味の言葉といえるでしょう。
「赤子の手をひねる」「朝飯前」も似た意味の表現
「鎧袖一触」の「簡単に」「たやすい」という意味を切り取ると、「赤子の手をひねる」や「朝飯前」といった表現も類語として挙げられます。
「赤子の手をひねる」とは、か弱い赤ちゃん(赤子)を例えとして用いた表現で、「実力が違いすぎて簡単に負かすことができる」という意味で使用されます。「赤子の手をひねるようだ」という表現が一般的です。
一方、「朝飯前」とは、文字通り「朝食をとる前のわずかな時間でもできるようなたやすいこと」という意味の表現です。
「鎧袖一触」の英語表現とは?
「鎧袖一触」は日本で生まれた四字熟語ですが、英語で表現するとどうなるのでしょう。
英語では「簡単に勝つ」「一撃で勝つ」という表現を使う
英語で「鎧袖一触」と表現する場合には、「簡単に勝つ」や「一撃で勝つ」という言い方をします。
たとえば、「We were able to win the team very easily(私はそのチームを簡単に打ち負かすことができた〔簡単に勝つことができた〕)」となります。「楽に」は、「easily」のほか「handily」という単語も可能です。また、「一撃で勝つ」は、「beat with a single blow」と表現します。
「鎧袖一触」の持つ「圧倒的勝利」の意味を英語で表現する場合には、次のような表現が可能です。
- overwhelming victory(圧倒的な勝利)
- crushing victory(圧倒的な、驚愕させるような勝利)
- convincing victory(説得力のある、納得のいく勝利)
- to win a great victory(圧倒的に勝利する〔great victory:大勝利〕)
まとめ
「鎧袖一触」は「鎧の袖が触れただけでも倒れてしまう」という力の差を示す表現で、そこから「いとも簡単に打ち負かす」「圧倒的な差を見せつけて勝つ」といったニュアンスで使用される表現です。主に勝ち負けに対して使いますが、ビジネスで競争関係にある間柄で使うこともあります。また、「耳を貸さない」「相手にしない」という意味もあるので、あわせて押さえておくと便利です。