「フッサール」の思想「現象学」とは?『イデーン』や名言も紹介

近代哲学に大きな影響を与えたエトムント・フッサールの「現象学」は、多くの哲学書で引用されることも多く、おさえておきたい思想です。この記事ではフッサールの思想である現象学について解説します。著書『論理学研究』『イデーン』と名言も紹介しています。

「フッサール」の思想「現象学」とは?

まずはじめにフッサールの思想である「現象学」について説明します。

フッサールは「現象学」の創始者

エトムント・フッサール(1859年~1938年)は、ユダヤ人を両親としてオーストリアに生まれました。はじめは数学の研究者でしたが、ウィーン大学でフランツ・ブレンターノに師事してから哲学に転向しました。ドイツの大学で長年教鞭をとり、引退してからも精力的に研究生活を続け、79歳で没しました。

フッサールは諸学問の基礎付けである「現象学」を創始しました。フッサールは、現象学によってはじめて、普遍的な学としての歩みをはじめることができるようになったと述べ、あらゆる学問の究極的な基礎を確立しました。

「現象学」は諸学問の基礎を構築する学問

フッサールの「現象学」は、哲学やその他の諸学問の基礎を与える学問です。フッサールは、現象学的な態度や方法で研究することによって、哲学は根本的な学になるとして、第一哲学として現象学を構築しました。現象学は、理論というよりは、事象を研究する態度、あるいは方法だといえます。

フッサールの現象学は、現象学運動ともいわれる流れを生み出し、ハイデガーやサルトル、メルロー=ポンティなどが批判的に継承しました。

「エポケー(判断停止)」して「還元」する「現象学的還元」

一般的に、そこにあるものを見る時、人間はそれらのものを「存在している」と思っていますが、フッサールはその主観を、「その存在を信じている」ということだと考えました。フッサール用語で「原信憑(げんしんぴょう)」といいます。

そのような見方の判断を中止しようとする考え方を「エポケー」といいます。そして「私にはそのように見えるので、私は確信する」という見方を「還元」と呼びます。

エポケーや還元は、純粋に内在的な領域を獲得するための方法で、それによってより普遍的な認識を得ることができ、意味や価値の本質を深く探求することができるとされています。

このような現象学的見方をするための操作を「現象学的還元」と呼びます。そして「私には~と思われる」という還元した意識は、何ものかが「現象すること」であり、すべてをその地点から考察しなおそうとする思考のことを現象学と呼びます。

現象学は「ハイデガー」に影響を与えた

マルティン・ハイデガー(1889年~1976年)は『存在と時間』において、「存在論は現象学としてのみ可能である」と述べ、存在がそれ自身を示すものを、それ自身から現れてくるとおりに、それ自身から見えるようにすることを現象学の定義だとしました。

ハイデガーは存在への思惟を現象学的存在論として展開しますが、やがて限界につきあたります。フッサールの現象学は現象を認識している意識の学であり、ハイデガーが追及している存在の根源とは異なっていたためです。

両者の方向性が異なることが露呈してからは、ハイデガーはフッサールとたもとを分かちますが、ハイデガーは『存在と時間』以降も、現象学の新たな道を追及し続けました。

フッサールの著書

次にフッサールの主著を紹介します。

『論理学研究』1900年-1901年

『論理学研究』の発表により「現象学」がはじめて展開されました。第1巻「純粋論理学序説」、第2巻「認識の現象学と理論のための諸研究」の2巻からなります。「純粋論理学序説」では、当時主流だった哲学の心理主義的な見方を批判し、新たな学問論を提起しました。本論である第2巻では、学問全体が持つ認識の問題を扱いました。

『イデーン』1913年

『純粋現象学と現象学的哲学のための諸考案』(ドイツ語原題:Ideen zu einer reinen Phänomenologie und phänomenologischen Philosophie)は、通称「イデーン」と呼ばれます。『論理学研究』の次の時期に発表された『イデーン』では学問の意図を体系的、実証的に展開しました。

『イデーン』第1巻において、先に説明した「現象学的還元」の構想が確立されました。本書では現象学的還元によって現象の本質があらわにされ、絶対的な認識を得ることができるという方法論が述べられています。

フッサールの名言

フッサールの著書から名言を紹介します。

真なるものは、絶対的に、それ自体として真である。真理はひとつだ。それ自体と同一なものだ、たとえその真理を知覚するものがなんであろうと、人間であろうと怪物であろうと、天使であろうと神々であろうと。

人は現象を、それが現れるがままに受け取らねばならない。すなわち、いま現に流れつつ意識しているこの意識として、この思念として、この現れ ーそれがそのまま現象であるー として、前景的にあるいは背景的に意識しているこの意識として、受け取らねばならない。

まとめ

フッサールは「現象学」によって、あらゆる学問の基礎を根本から考え直すことを目指し、その方法として「現象的還元」を導き出しました。

「現象的還元」とは、「主客一致」(主観と客観の一致)の問題をいったん停止して、どのような場合にそれがあると思うのか、という確信の条件を探る方法のことです。

唯一絶対の真理など存在しない、多数の真理があるだけだと主張する現象学の考え方は革新的なものであり、さまざまな論議を呼び、また多くの哲学者や思想家に影響を与えました。