「餞別」の意味とは?餞別品の金額やのしの書き方・お礼のマナーも

転職や退職、あるいは旅行に際して、「餞別(せんべつ)」を贈ることがあります。そもそも、「餞別」にはどのような意味があるのでしょう。「餞別」という言葉の意味から、会社や個人で「餞別」を贈る場合の金品の相場やマナーまで詳しく解説します。

「餞別」の意味とは

「餞別」の意味は「別れの際に贈る金品のこと」

「餞別」は「せんべつ」と読み、「別れの際に贈る金品」という意味の言葉です。

たとえば、退職する社員や異動する社員などに対する「餞別」は代表的な例といえるでしょう。また、引越しする人や旅行に出かける際にも「餞別」として金品を贈る例もあります。

「餞別」は旅立つ人の安全を祈る風習に由来

「餞別」の「餞」は、「はなむけ」とも読み、「餞別」は「はなむけ」と言うこともあります。実はこの「はなむけ」という言葉に、「餞別」の由来があります。

その昔、道中の安全を祈り、馬の「鼻」を目的地に向ける風習があったそうです。この「鼻を向ける」という習わしが、今の「はなむけ(餞別)」の語源とされています。

この由来からも分かるように、「餞別」は旅立つ人に対して行うものであり、到着した人を歓迎する意味合いで行うのは誤りです。

「餞別を贈る」「餞別を渡す」が一般的

「餞別」という言葉は、「餞別を贈る」「餞別を渡す」という使い方が一般的です。「餞別」はプレゼントやお金を贈ることが多いのですが、その「餞別品」を渡す際にかける言葉を「餞別の言葉」ということもあります。「餞別の言葉」では、目上の人には感謝の言葉を、同僚や目下の人には感謝や激励の言葉をかけるのが一般的です。

「餞別品」の選び方のポイント

「餞別」はお金以外にお花やお菓子を選ぶことも

退職する人に贈るものと言えば、花束のイメージが強いでしょうか。「餞別」として選ばれるのは、現金からビジネス用品、花束・お菓子など実に様々です。

たとえば、旅行の「餞別」としては、旅費の足しにと現金を渡す例も多いですが、退職となると記念となるようなもの、新天地で役立ちそうなものを選ぶことも多いでしょう。相手の好みに合わせて選ぶことはもちろん、「自分ではなかなか買わないもの」が喜ばれるギフト選びのポイントです。

「餞別」として注意したいのはハンカチ

仕事で付き合いのある人に贈りやすいギフトのひとつに「ハンカチ」がありますが、実はハンカチは「餞別品」には不向きです。ハンカチは漢字で「手巾(てぎれ)」と書くため、縁切り(手切れ)を連想させるからです。同様の理由で刃物(ペーパーナイフなど)も好ましくありません。

他にも、香典返しを連想する日本茶をはじめ、目上の人には敷物や文具類も「見下す」との連想から不釣り合いとされています。避けた方が無難です。

目上の人に個人的に現金を贈るのはマナー違反

ビジネスシーンでもう一つ注意したい餞別のマナーとしては、目上の人に対して個人的にお金を贈ることはしない、という点です。

会社名義や部署名義でお金を包むことはあっても、一個人として目上の人に対してお金を贈るのは好ましくありません。現金を包むのは避け、何か喜ばれるような品物を選びましょう。

「餞別品」の金額・相場

餞別でお金を贈る場合の相場は「三千円~五千円」

転退職などに際し「餞別」を贈る場合は、まず部署で取りまとめて贈る場合と個人で渡す場合に分けられます。

同僚などと連名で「餞別」を用意する場合、転勤や退職では各個人の負担額が500~3,000円が相場です。定年退職となるとやや相場が高くなり、1,000~5,000円となります。一方、個人で渡す場合は、転勤・退職では3,000~5,000円程度、定年退職の場合は5,000~10,000円程度が相場と言われています。

これはあくまでも相場で、相手の勤続年数や企業の慣習によっても金額は増減します。また、目下の者が目上の人に個人的に金銭を贈ることはあまりありません。目上の人に「餞別」としてお金を包むのであれば、他の同僚と連名にするのが一般的です。

餞別でプレゼントを贈る場合の相場は現金と同じ

「餞別」は、物を贈る場合でも現金を渡す場合でも、相場はさほど変わりません。どちらも同程度のものを用意するのが通例です。

また、品物を用意する場合でも、記念となるような高価なものを用意することもあれば、花束と併せていくつか用意するというケースもあります。企業によってやり方は異なるので、同僚などに確認しながら進めることをおすすめします。

「餞別」を贈る際の注意点

「餞別」の書き方は上司や部下で異なる

「餞別」を贈る場合の「のし」は、状況と相手によって書き方を変えるのが通例です。

まず、一般的な退職の場合は、会社・個人名義のいずれも「御餞別」とします。目上の人に一個人名で「餞別」を渡す場合には「おはなむけ」と書くのがマナーです。転勤や異動に際した「餞別」の場合も、同様です。

一方、定年退職の場合には、「御餞別」とはせずに「御祝」「御礼」とします。個人として贈る場合には、「おはなむけ」を使うこともあるようです。

転居や引っ越しをする人に対して、個人として「餞別」を渡すことがありますが、その場合は、相手が目上の場合は「おはなむけ」を、そうでない場合は「御餞別」を使います。なお、住宅購入による引越では、「新築祝い」や「御引越御祝」を使うこともあります。

餞別の「のし袋」は蝶結びを使用する

「餞別」としてお金を贈る場合、のし袋は「蝶結び(花結び)」を使用します。

何度も結びなおせる「蝶結び」は、人生に繰り返し起こってもよいお祝い事に対して使用するものです。「餞別」を贈るような退職・転職などのほかにも、出産祝いなどにも用いられます。一般的なお中元やお歳暮ののしにも、この「蝶結び」を使用しますので、覚えておきましょう。

「餞別」は新札を使用

「餞別」は、一種のお祝い事です。お祝いとしてお金を包む場合には、新札を用意するのが一般的なマナーです。最近では、「餞別に新札をわざわざ用意する必要はない」と考える人も増えているようですが、受け取る相手によってとらえ方は異なります。新しい門出を祝う気持ちで、新札を用意した方が望ましいでしょう。

「餞別」をもらった後のお返しはどうするの?

「餞別」はお返し・お礼状は不要

「餞別」をもらった場合に気になるのが、そのお返しです。一般に、「餞別」に対するお礼・お返しは必要ありません。その場でお礼を述べ、ありがたく受け取りましょう。

一般には不要とされてはいますが、何かお返しをしたいという場合は、頂いた額の3分の1~半額がお返しの相場です。「御礼状だけでも」という方も多いですが、その場合は、ぜひ新天地での近況報告を混ぜると喜ばれます。

「餞別」を英語にすると?

「餞別」の英訳は「a farewell gift」

「餞別」を英語にすると、「a farewell gift」となります。「farewell」とは「別れ」という意味です。同じく「別れ」を意味する「parting」を使って「a parting gift」とすることもあります。

また、旅行に出かける人に渡す「餞別」は、「別れ」というよりは、旅先での「お小遣い」のようなニュアンスです。その意味では、「bon voyage gift」という表現がベターです。

まとめ

「別れ際に贈る金品」という意味の「餞別」は、旅に出る人に渡すこともありますが、ビジネスではもっぱら、転退職に伴う慣習のひとつとなっています。価格帯の相場やのしの書き方など一般的なマナーの他にも、会社独自のならわしもあります。あらかじめ確認しておくことをおすすめします。