「啓発」の意味は?「啓蒙」との違いや類語をまとめて解説

ビジネス書でもよく目にすることのある「啓発」という言葉。つい読み過ごしがちですが、この「啓発」という言葉にはどんな意味があるのでしょう。今回は、使い方の一例として、啓発活動や自己啓発など、「啓発」のつく言葉の意味もまとめて解説します。

「啓発」の意味とは?

「啓発」は「けいはつ」と読みます。実は、「啓発」の語源は孔子の論語にあるとされていて、歴史ある言葉のひとつです。

「啓発」の意味は「認識や理解を広げること」

「啓発」には、人が気づかないこと(気づいていないこと)を教え示し、より高い認識や理解に導く、という意味があります。ただ新しい知識を得るだけでなく、知識を深めたり、理解を高めたりという意味が含まれている言葉です。

「今まで気づいていなかったことを知る」ことで、立ち止まっていたところから前進する、成長するというようなポジティブなニュアンスを含むのが特徴です。また、成長を促すような意味で使われることもあります。

「啓発」と「啓蒙」は意味が異なる

「啓発」と似た言葉に「啓蒙(けいもう)」があります。

「啓蒙」とは、新しい知識を与え、教え導くという意味の言葉です。知識や認識をより深めるという点では「啓発」と似ていますが、「啓蒙」はより限定的な使い方がされます。

たとえば、「啓蒙」には、偉い人が無知の人に教えるという意味があり、立場が上の人が下の人に向けて行うものです。「啓蒙セミナー」というと、専門家がその分野の知識のない人に向けて行うセミナーを差します。

一方の「啓発」は、「誰に」と限定されておらず、立場を問わず広く使うことができる言葉です。使い方にも差が出るので、「啓発」と「啓蒙」の違いはぜひ覚えておきたいポイントです。

「啓発」の使い方とそれぞれの言葉の意味

「啓発」は、「この本には大変啓発された」や「スタッフを啓発するためにセミナーを用意する」という風に使うことができます。

他にも「啓発」は、自己啓発や啓発活動など単語として用いられることが多いのも特徴です。「啓発」のつく言葉をいくつかピックアップして解説します。

「自己啓発」は自分の能力を高めること

「啓発」を含む単語で一番よく見聞きする「自己啓発」という言葉。「自己啓発」は、自分の知らない物事に対して、もっと知識を得たいという思いで自ら行動し、自分の知識や能力を高めることを言います。

「自己啓発本」や「自己啓発セミナー」というように、本を読んだり、セミナーに参加したりすることが一般的です。もちろん、ビジネスに関してだけでなく、分野を問わず知識や認識を深め、「一歩前進」できるようなものは、自己啓発に当たります。

「啓発活動」とは人に気づかせるための活動

「啓発活動」とは、文字通り啓発のための活動のことです。ある事柄(分野)に対して、認識を高めてもらうことを目的とした活動を言います。

認識や理解を深めてもらうことはもちろん、「気づいてもらう」ことに重きを置いた活動が多いのも特徴です。たとえば、「人権啓発活動」というと、人権に関する理解を深めることはもちろん、人権そのものを見直す・気づくという目的もあります。

「意識啓発」は人々の意識を高めること

ただ気づいてもらうだけでなく、「意識」をより高めるために行われるものには、「意識啓発」という言い方が使われることもあります。たとえば、「特許庁による知的財産に関する意識啓発」というと、知的財産制度について知り、さらに知的財産権への配慮を促すための施策や活動のことです。

「相互啓発」とはお互いに高めあうこと

自分の能力を高めようとすることを自己啓発と言いますが、複数の人が集まってお互いに啓発しあうことは「相互啓発」と呼ばれています。有志を募った勉強会は、相互啓発の良い例です。お互いが持つ知識が共有できるだけでなく、やる気にも相乗効果が期待できるとして「相互啓発」の場も増えているようです。

「周知啓発」は、周知+啓発の意味

広く知ってもらうという「周知」に重きを置いた啓発活動の場合には、「周知啓発」という言い方をします。「環境保護の周知啓発」というと、環境保護に関して広く周知をし、多くの人に認識を深めてもらうことです。

単なる周知活動というよりは、さらに一歩考えたり、意識したりしてほしいという意図がある場合に、「周知啓発」という言葉が用いられることが多いようです。

言い換えるなら?「啓発」の類語

 

「啓発」という言葉は、どこか堅苦しいイメージを与えることがあります。別のフレーズで言い換えたいという場合には、類語が便利です。

類語①「教育・開発」

気づきを与え、結果として良い方向へと導くという意味を持つ「啓発」は、教育や開発といった言葉に通ずるものがあります。文脈や使用シーンにもよりますが、学校など教育現場での「啓発」は、教育・開発といった言葉へ置き換えられるケースも多いものです。たとえば、「人権啓発」は「人権教育」と言い換えることが可能です。

類語②「成長」

「自己啓発」という言葉に表れているように、啓発は成長のプロセスです。気づいていなかったことを知り、認識を深め一歩前進することは、大きな成長につながります。

「啓発」の言い換えとして「成長」という言葉が使えるシーンは限られますが、その意味をイメージする際に役立つキーワードです。

類語③「感化・インスパイア」

何かの影響を受け、気持ちや考えが変化させられたことを「感化された」と言いますが、これもまた「啓発」の類語のひとつです。

「インスパイア(inspire)」には、「感化」と似た意味があります。本来、インスパイアには思想を吹き込むといった意味があり、転じて、影響を受けたという意味で使われています。最近では、カタカナ英語として「インスパイアされた」という言い方がされることがありますが、「啓発された」の言い換えとして使うことも可能です。

まとめ

「啓発」とは、今まで気づいていなかったことを知り、認識や知識を深めることを意味します。ただ知識が深まるだけでなく、結果として、良い方向へと前進したという意味合いのある、ポジティブな表現として使われます。「自己啓発」だけでなく、官公庁や企業のCSRなど、様々なシーンで活用されているので、ぜひ覚えておきたい言葉です。