「立て板に水」とは、水が流れるように「すらすらと話す」ことを意味することわざです。しかし、誤用している人が多いことも知っていますか?
この記事では、「立て板に水」の意味や語源、使い方と類語・反対語も紹介します。「焼け石に水」との違いや例文・英語表現も参考にしてください。
「立て板に水」の意味とは?
「立て板に水」の意味は「すらすらと話す」
「立て板に水」とは、「よどみなく、流暢にすらすらと話す」を意味することわざです。例えば「立て板に水のように話す」と使います。
また、「立て板に水」自体には悪い意味はありません。「人の話を聞かない」「うんざりするほど喋る」という意味は含んでいないため、良い意味で使うこともできます。
語源は「水が流れる様子」
「立て板に水」ということわざは、「水が流れる様子」からできています。壁に立てかけてある板に水を流すと、重力でさらさらとスムーズに流れます。何にも邪魔されず流れる様子を、すらすらと話す様子に例えてできたことわざです。
上方(京都)いろはかるたの「た」の札でもある
「立て板に水」は、上方(京都)いろはかるたの「た」の札になっています。いろはかるたは地方により札が異なっていて、江戸(東京)かるたでは「旅は道連れ世は情け」が「た」の札です。
「立て板に水」は関西ではかるたにも選ばれているほどに、親しみのあることわざだと言えるかもしれません。
「立て板に水」と「焼け石に水」の違い
「焼け石に水」は「わずかな努力・援助は役に立たない」を意味する
「焼け石に水」は、焼けた石にいくら水をかけてもすぐに蒸発してしまうことから、「努力や援助がわずかでは、役に立たない」という意味を持ちます。たとえば、「この程度のアピールでは、焼け石に水だ」と、少ない努力・援助では効果が弱いことを指す言葉で、「立板に水」とは意味が異なります。
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「立て板に水」を「無意味なもの」と思い込まないように
「立て板に水」のそのままのイメージから、「板の上を水が抵抗なく流れていく」様子を指して「無意味」を連想する方もいます。こちらも誤用ですので注意しましょう。
「立て板に水」の使い方
「立て板に水」はすらすらと話す様子に使う
「立て板に水」は、「すらすらと話す様子」を意味することわざです。例えば、スピーチや会見などで不特定多数に向けて流暢に喋る場面にも使えますし、1対1の会話で「立て板に水のように話す(喋る)人だな」とも表現できます。
「立て板に水」を使った例文
- 彼は趣味の話となると、ものすごいスピードで話し出す。まるで立て板に水のようだ
- 普段は寡黙な上司だが、お酒の席となると立て板に水のように喋りだす
- 立て板に水のごとく話を始めた社長を見て、会社への思いが強いことを感じた
「立て板に水」の類語
「戸板に豆」は「早口ですらすら話す様子」の意味
「立て板に水」の類語には、「早口ですらすらと話す様子」を意味する「戸板に豆」が当てはまります。読み方は「といたにまめ」です。「早口で話す様子」以外にも、「物事がテンポよく順調に進展していく様子」も表しており、良い意味として使用されます。
ただ、戸板の上にある豆はコロコロと転がり扱いにくいことから、「男女の仲が思い通りにいかない様子」を意味することわざでもあるため、状況に応じては悪い意味として使用されます。
「弁舌にすぐれる」も類語
熟語「弁舌」を使った、「弁舌にすぐれる」という言葉も、「立て板に水」の類語です。「弁舌」とは、「ものの言い方」や「話しぶり」を意味する熟語です。「弁舌」に「すぐれる」を加えることで、「話しぶりが一般よりも勝っている」という意味になり、「立て板に水」の類語となります。
「立て板に水」の反対語
「立て板に水」の反対語は「横板に雨垂れ」
「立て板に水」の反対語には、「詰まりながら話す」を意味する「横板に雨垂れ」が当てはまります。読み方は「よこいたにあまだれ」です。立て板とは反対に、横板に水を流しても勢いよく流れないことから、「横板に雨垂れ」ということわざができたとされています。
「立て板に水」の英語表現
英語では「flowing eloquence」
「立て板に水」を英語で表現する場合、「flowing eloquence」が適しています。「flowing」が「流れ」を、「eloquence」が「雄弁さ」を意味しています。英語のことわざでは、「1度に9語話す」を意味する「To speak nine words at once」というものがあるため、状況に応じて使用してください。
まとめ
「すらすらと話すこと」を意味する、「立て板に水」ということわざ。「無意味」を表すことわざというのは誤用であり、良い意味で使われるため注意してください。類語には「早口で話す」を意味する「戸板に豆」や、熟語を使った「弁舌にすぐれる」が当てはまります。状況によっては、類語で言い換えてみてください。