かつて、ドラマのタイトルとしても使われたことのある「張子の虎(はりこのとら)」とは、元々は首が動く虎のおもちゃですが、ことわざとして使われる場合はどのような意味を持つのでしょう。その詳しい意味と使い方を紹介します。「張子の虎」の類語や英語訳についても触れていますので、あわせて参考にしてみてください。
「張子の虎」とは?
「張子の虎」の意味は”ただ頷いている人のたとえ”
「張子の虎」の意味は、“ただ頷いている人のたとえ”です。首を動かす癖を持つ人の例えとして用いられることわざです。さらに、そこから派生して、「頷いてばかりで主体性のない人」という意味を持つ慣用表現として定着しています。
「張子の虎」には”見掛け倒しの人”という意味も
「張子」は、紙を貼った後に中の「型」を抜き去るため、その中が空洞であるのが特徴です。そのため、「張子の虎」も見かけは立派な虎ですが、その中は空っぽで中身はありません。そこから、「張子の虎」は、「見かけ倒しの人」「弱いくせに虚勢を張っている人」の例えとして使われることもあります。
「張子の虎」は香川の名産、首が動く虎の工芸品
「張子の虎(はりこのとら)」とは、本来は香川県の伝統工芸品で、首の動く虎のおもちゃのことです。「張子(張り子)」は、木の型に紙を貼り、乾いたところでその型を抜き、色を付けて作られる工芸品を指します。「張子の虎」は、頭と胴体が分けて作られ、首振りができるというのが特徴です。
「張子」は「虎」以外にだるまや赤べこも有名
ことわざとして定着しているのは「張子の虎」ですが、全国にはほかにも「張子」を郷土玩具とする地が多数存在します。たとえば、犬・だるま・赤べこなどはその代表的な例です。ほかにも郷土品に多い「起き上がりこぼし」なども、よく見かける「張子」のひとつです。
「張子の虎」の使い方とは?
「張子の虎」は実際にはどのような使われ方をしているのでしょう。その使用例を紹介します。
「張り子の虎」はネガティブな意味合いで使われる
「張り子の虎」は「主体性がない」「見掛け倒し」といったネガティブな意味合いを持つ表現です。そのため、批判したり嘲笑したりする際に使われます。たとえば、以下のような表現が可能です。
- 張り子の虎のような彼には、いくら意見を求めても無駄だ
- 威勢があるのはいいが、張り子の虎にならないよう実績が必要だ
- いつもは偉そうな上司だが、自分より偉い人の前ではすぐに張り子の虎になる
このように、好意的なニュアンスで使用されることはまずないといえるでしょう。
大阪など関西では端午の節句に縁起物として飾ることも
ことわざとしての「張子の虎」にはあまり良い意味合いはありませんが、「張子の虎」そのものには縁起物としての役割もあります。特に、関西地方では、端午の節句に鎧や兜飾りのそばに、「虎のように強く、たくましく育ってほしい」との願いを込めて、「張子の虎」を飾る風習があるようです。
ことわざとしての「張子の虎」とは意味が異なりますが、縁起物としての意味・役割も持ち合わせていることは覚えておきたいポイントです。
「張子の虎」の類語とは?
ことわざ「張子の虎」にはどのような類語があるのでしょう。似た意味の言葉や言い換えに使える表現を紹介します。
「見掛け倒し」や「張りぼて」などが張子の虎の類語
「張子の虎」を分かりやすい言葉に置き換えると、“見掛け倒し”や“張りぼて”となります。「見掛け倒し」とは、”見た目(外見)はよいが、中身が悪いこと”という意味です。
「張りぼて」は”張り子”のことで、「見かけは立派だが、中身や実力が伴わないこと」の例えとしても用いられます。「張り子の虎」の言い換えとしても使える表現です。
四字熟語では「羊頭狗肉」や「大言壮語」が類語に
「張子の虎」と同じ慣用表現では、“羊頭狗肉”や“大言壮語”が似た意味の表現として挙げられます。
「羊頭狗肉(ようとうくにく)」とは、直訳すると「羊の頭を掲げながら狗(犬)の肉を売る」という意味で、転じて「見かけと実質がそぐわないこと」の例えとして用いられる表現です。「羊頭を掲げて狗肉を売る」という言い方もあります。
「大言壮語(たいげんそうご)」とは、「できもしないことなど威勢のいいことを言うこと」という意味の四字熟語で、自分の能力を超えた発言などを指して使います。「威勢はよいが実力や能力が備わっていない」という意味で「張子の虎」と似た意味の表現と言えるでしょう。
「張子の虎」の英語表現とは?
「張子の虎」の英訳を紹介します。英語では次のような表現が一般的です。
英語で「張子の虎」は”paper tiger”と表現する
「張子の虎」は英語で“paper tiger”と書きます。「張子」は紙を貼りつけて作りますが、英語では「紙製の虎」と表現するようです。たとえば、「He is just a paper tiger(彼はただの張子の虎だ[見掛け倒しだ])」という風に使います。
他にも、「paper tiger」は「見掛け倒し」「こけおどし(見かけは立派だが中身のないこと)」と日本語訳されることもあります。
まとめ
「張子の虎」は元々は香川県の有名な伝統工芸品で、関西では端午の節句の縁起物としても知られていますが、ことわざとして使う場合にはネガティブなニュアンスになるのがポイントです。「頷いてばかりで主体性のない人」「見掛け倒し」の例えとして用いられ、良いニュアンスで「張子の虎」ということはまずありません。ことわざ・慣用表現として使う場合は、使用シーンに気を付けたいものです。