「シュール」の意味とは?解釈間違いや誤用の原因のスペルも解説

非現実的なことを「シュールな〇〇」と表現することがあります。その意味は「シュルレアリスム」の略語であると説明されることが多いのですが、「シュール」と「シュルレアリスム」は反対の意味だということを知っていますか?

この記事では、和製カタカナ語の「シュール」と、フランス語の「シュルレアリスム」の意味、ならびに解釈の間違いや、誤用の原因について解説します。あわせてシュールの使い方についても紹介します。

「シュール」とは?

「シュール」の意味は”非現実的な・不条理な様子”

「シュール」の意味は、“非現実的な・不条理な様子”です。「シュールな映画」「シュールな小説」などと作品を評するときは、現実には起こりえないような物語や、日常的な感覚から外れた出来事が起こる小説などに対して用いられます。

また、ブラックジョークについて「理解できないほどばかばかしい」といった意味で「シュール」と表現されることがあり、使われているうちに別の意味も加わってきたことがうかがえます。

なお、「シュール」とは、和製のカタカナ語です。

「シュール」と「シュルレアリスム」の違いとは?

「シュール」が「シュルレアリスム」の略語というのは間違い

「シュール」の語が説明されるとき、フランス語のシュルレアリスム「surréalisme」の略語であるとの解説がされることが多いようです。シュルレアリスムとは、「超現実主義」という意味の、1920年代にヨーロッパで興った芸術運動のことをいいます。

しかし、「シュルレアリスム」の意味は、超現実と訳されるとおり、現実を否定するのではなく、「現実を超えた現実」への追求です。

「シュール」の意味は「非現実なさま」であるため、現実を超えた現実を追求した「シュルレアリスム」の略語であるという解釈は適切ではなく、むしろ逆の意味です。

「シュルレアリスム」の絵画から受ける印象が「シュール」の語を生んだ

シュルレアリスム絵画として、ダリやマグリットの絵が有名です。シュルレアリストの画家は、理念としては「非現実」ではなく「超現実」を描いているのですが、その絵を見て受ける印象は、「奇怪で理解できない」「非現実的」であることが一般的です。

その意味では、「シュール」に付与された意味は、シュルレアリスムの芸術理論ではなく、受ける印象が影響しているといえます。

「シュール」な「リアリズム」という解釈が誤用のもと

「シュルレアリスム」は「surréalisme」というフランス語の一つの単語ですが、英語では「surrealism(シュルリアリズム)」と書きます。

おそらくその英語から、「シュルリアリスム」とは、「シュル」な「リアリズム」であるとの解釈が生まれ、「シュル」が言いやすいように「シュール」と伸びて、非現実的な様子を「シュールな〇〇」と表すようになったのではないかと考えられます。

「シュルレアリスム」が「シュールリアリズム」や「シュール・リアリズム」と書かれる間違いは、このことから発生しているようです。「シュルレアリスム」は芸術運動につけられた一つの固有名詞であり、「シュールなリアリズム」という意味ではないということを前提として整理しておく必要があります。

実際には「シュール」という言葉は、「シュルレアリスム」の意味とは違う意味で定着して使われているため、辞書の説明による「シュルレアリスムの略語である」という部分を切り離すという方向で解決をはかりたいところです。

「シュール」の使い方と例文とは?

「現実ではありえない」ことを「シュールな」「シュールすぎる」と表現する

「シュール」は、「シュールな〇〇」「シュールすぎる」というように形容動詞的に用いたり、「この作品はシュールだ」というように名詞として用いたりします。

目の前の状況や、映画や画像などを評するときに使われます。その対象や状況によって、さまざまなニュアンスで用いられ、「理不尽な」「受け入れがたい」というようなさまざまなニュアンスでも使われますが、「現実ではありえない」という様子を表すことは共通しています。

「シュール」を使う日常的な場面での例文

「シュール」を使った日常的な場面での例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 彼のブラックジョークはシュールすぎて、いつも周りの人に引かれてしまう
  • シュールな映画が好きだと言うと、変わった人だと思われてしまう
  • ピンクや紫色の鮮やかなアメリカのケーキは、シュールだと思う
  • 夢の世界のような不思議な絵画を鑑賞してシュールな気分に浸りたい

「シュール」の対義語・反対語とは?

「シュール」の反対語は「平凡な」「ありきたりな」

「シュール」とは、説明したとおり、シュルレアリスムの意味とは離れて、その絵画から受ける印象から生まれたと推測される和製の造語です。その印象とは、「非現実的」や「奇妙」、さらに「ばかばかしい」というような意味も、言葉が使われる過程で付与されてきました。

「シュール」の意味は、「シュルレアリスム」の意味とは異なるということと、それに加えてシュールには、さまざまな意味が含まれている言葉だということを前提に、反対の意味をあえて挙げるなら、「平凡な」「ありきたりな」などの言葉が適当ではないかと考えられます。

まとめ

「シュール」は、「非現実的な、不条理な様子」という意味のほかに、「奇怪な、理解できない」という意味も持つ、和製のカタカナ語です。

芸術運動の「シュルレアリスム」の略語として生まれた言葉とされますが、「シュルレアリスム」の定義からすると、異なる意味として実際は使われています。

結論として、「シュール」は「シュルレアリスム」の略語という解釈が間違いであり、混乱の原因であるといえます。「シュルレアリスム」の意味とは離れて、「シュール」を独自の和製カタカナ語として使ってゆくことで、誤用問題を解決できるのではないでしょうか。

■参考記事
「シュルレアリスム」の意味とは?代表的な画家や文学も紹介