「ガーゴイル」の意味とは?由来・神話や見られる場所も紹介

ヨーロッパの大聖堂の壁から人々を見下ろす怪物「ガーゴイル」は、一度見たら忘れられない印象的な姿をしています。ガーゴイルにはどのような意味があるのでしょうか?

この記事では、ガーゴイルの意味や神話を紹介します。あわせてパリのノートル・ダム大聖堂など、ガーゴイルが見られる場所についても紹介します。



「ガーゴイル」(英語:gargoyle)とその意味とは?

ケルン大聖堂のガーゴイル

「ガーゴイル」とは「怪物の形をした雨どい」のこと

「ガーゴイル」は、教会の壁部に体を突き出した形で取り付けられた、訪問者を威嚇するような「怪物の装飾」というイメージが一般的だと思われます。

しかし「ガーゴイル」とは、「喉」を意味するラテン語を由来とする言葉で、その定義は怪物の形をした「雨どい(排水口)」です。建物の壁やステンドグラスを雨水から守るために、水を遠くに排出する構造となっています。そのため、排水口である怪物の口が建物から突出する形になっています。

フランス語では「ガルグイユ」(gargouille)と書きます。

「ガーゴイル」には「魔除け」の意味がある

ガーゴイルは、雨水を排出する実際的な機能のほかに、人々に恐怖心を与えながら、悪霊を外へ吐き出す役割と、悪霊の侵入を守る役割を持ちます。つまり「魔除け」としての意味があるのです。

特別な力を持った怪物のイメージの起源は、さまざまな説がありますが、古代ケルト信仰の名残であるとの説が有力です。ケルト信仰とは、ヨーロッパ文明の基層となったケルト文明を作ったケルト人の行っていた自然信仰です。

ケルト人の信仰は、動物や樹木、岩などあらゆる自然が対象でした。ケルトの神であった動物神は、キリスト教の布教にともなって異教の神である「魔物」に変身したのです。

「ガーゴイル」には「奇怪な人間の姿」のものもある

聖ヴィート大聖堂(プラハ)のガーゴイル

ガーゴイルの形態には、奇怪な動物に加えて奇怪な人間の姿もあります。奇怪な動物は、大聖堂を悪霊から守護する役割があり、奇怪な人間は、自らの罪を大聖堂の外に吐き出すとともに、人間に堕落への警告を与えていると考えられています。

人間の形をしたガーゴイルは、アカンベーをしていたり、中には排便する姿など、根拠の見えない悪趣味なものも存在します。これらが何を意味しているのかは解明されていません。

「ガーゴイル」は「ゴシック様式の大きな聖堂」に取り付けられた

ガーゴイルは、12世紀後半からヨーロッパの都市で盛んに作られた、ゴシック様式の大聖堂に取り付けられました。ゴシック様式の大聖堂は、建築技術の発達に伴って高さを競うようになたため、壁面を守る必要性が生まれました。そこで高い屋根から雨水を集めて、壁から離して水を落とす雨どいが必要となったのです。

ゴシック以前の、ロマネスク様式の聖堂では、怪物の彫刻が柱頭などに彫られていましたが、高さが低い建築様式には雨どいは必要なかったため、ガーゴイルはまだ現れていませんでした。

また、雨どいに動物などをかたどった装飾をつける様式は、古代エジプトや古代ギリシャの建造物にも存在しましたが、それらはライオンなどであり、奇怪性はありませんでした。

ケルトの自然崇拝は、ロマネスク聖堂の彫刻に引き継がれ、その後のゴシック建築におけるガーゴイルにその名残を留めたと考えられます。

「ガーゴイル」の神話とは?

ガーゴイルの名前の由来と言われる神話がありますので紹介します。

フランスに伝わる「ガーゴイル」の名を持つ竜の神話

「ガーゴイル」の名の由来となったともされる、竜の神話がフランスにあります。その昔、セーヌ川に近い洞穴にガーゴイル(フランス語ではガルグイユ)と呼ばれる竜が棲んでいました。ガルグイユは蛇のような長い首を持ち、羽を生やした怪獣でした。

ガルグイユは火を噴いて火事を起こしたり、水を吹き出して洪水を起こしたりするなど悪事を働いていました。600年頃にやってきた、ルーアン大司教が竜を退治し、火あぶりの刑に処しました。しかし竜の首は焼け残ったため、その首を聖堂に祭ったことが、ガーゴイルの姿のモデルとなったともされています。

「ガーゴイル」が見られる場所は?

最後に、ガーゴイルを見ることができる場所を紹介します。

パリ「ノートル・ダム大聖堂」のガーゴイルとキマイラ

ノートル・ダム大聖堂(パリ)のガーゴイル

パリのノートル・ダム大聖堂は、12世紀初めから13世紀にかけて建てられたフランスを代表する壮麗な大聖堂です。内部の天井までの高さは32メートルにも達します。聖堂の壁面には、雨どいとしての機能を持つガーゴイルが、突き出すような形でいくつも取り付けられているのを見ることができます。

ノートル・ダム大聖堂(パリ)のキマイラ

また、パリのノートル・ダム大聖堂のシンボルの一つともなっている、鐘塔基部の上に据えられた小悪魔の像は、ガーゴイルと紹介されることがありますが、正しくは美術用語で「グロテスク」と呼ばれるものです。一般的には「キマイラ」と呼ばれます。

これらは19世紀に行われた修復の際に装飾として取り付けられたもので、雨どいの機能は持たないため、正確にはガーゴイルではありませんが、ガーゴイルから派生して生まれた彫刻であることは確かだといえます。

「ミラノ大聖堂」「ケルン大聖堂」などゴシック建築の大聖堂

ミラノ大聖堂のガーゴイル

ミラノ大聖堂やケルン大聖堂など、ヨーロッパの各都市に作られた、ゴシック建築の大聖堂の壁面にガーゴイルを見ることができます。ゴシック様式の聖堂は12世紀から16世紀にかけて建てられました。また、大聖堂の他にも、ヨーロッパの一般建築の古い大きな建物に、ガーゴイルが取り付けられていることがあります。

まとめ

ヨーロッパのゴシック大聖堂を訪れた人は、大聖堂の壮麗な彫刻群の中で異彩を放つ、ガーゴイルの異様で多彩な姿に目を奪われたことがあるのではないでしょうか。あるいは、ガーゴイルの口から吹き出される雨水の洗礼を受けた人もいるかもしれません。

キリスト教はそれ以前に人々が信仰していた土着的な宗教を異教として弾圧しましたが、教会建築や風俗の中に形を変えて異教の文化を取り入れてきました。キリスト教が自然崇拝を認めなかったにもかかわらず、怪物ガーゴイルに魔除けの意味が認められることも、その流れの一つだといえます。

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趣味は読書とヨーロッパ旅行です。ドイツには5年余り滞在経験があります。某大学の人間科学部とデザイン学部を卒業。人生が豊かになる知識の探索を人生の糧にしています。