「スフィンクス」とは?エジプトのピラミッドとの関係や謎解きも

「スフィンクス」といえばエジプト・ギザの大スフィンクスが有名ですが、スフィンクスとはどのような意味を持つ存在なのでしょうか?また、ギリシャ神話に登場するスフィンクスは、女性の姿で謎かけをすることでも有名です。

この記事では、エジプトのスフィンクスと、ギリシャ神話のスフィンクスについて、それぞれの意味や姿を紹介します。あわせてスフィンクスをモチーフとした絵画も紹介します。

「スフィンクス」とは?

「スフィンクス」は猫ではなく”顔が人間、体がライオン”の怪物

「スフィンクス」とは、ライオンの体と人間の顔を持つ怪物のことです。その起源は古代オリエントのライオンへの信仰思想にあります。古代エジプト語の「シュセプ・アンク(生ける像・復活の像)」に由来するギリシャ語”スピンクス(Sphinx)”の英語読みです。

姿かたちが猫に似ていますが、体はライオンですので間違えないように覚えておきましょう。

古代オリエント世界ではライオンは「聖獣」だった

オリエントの古代世界では、百獣の王であるライオンを聖獣として畏敬していました。王はライオンの霊力や威を持つという思想があり、玉座にあしらったり墓所の守護としました。

古代エジプトにおいては、ライオンはスフィンクスとなり、ファラオの守護神の役割を持ちました。

18世紀後半のヨーロッパでは「芸術のモチーフ」にも好まれる

18世紀後半から19世紀初頭のヨーロッパでは、古代ギリシャなどの古典様式を模範とした新古典主義の芸術様式が流行し、そのモチーフとしてギリシャ神話のスフィンクスの姿も好まれました。女性の上半身を持つスフィンクスが、絵画のモチーフや調度品の装飾として用いられました。

ギリシャ神話のスフィンクスは、下半身がライオンで胸から上が女性となり、翼を持つ姿で表現されます。

エジプトの「スフィンクス」とは?場所はどこ?

「エジプト」のスフィンクスはファラオの守護や権力の象徴

エジプトのスフィンクスは、ファラオの守護や権力の象徴として、神殿や墳墓の入り口などに石像として置かれました。

その姿は体がライオンで頭部が人間の半身半獣ですが、ファラオ(王)の顔を模したり、動物の顔、女性の顔などバリエーションがあります。

エジプト・ギザのピラミッドを守る「ギザの大スフィンクス」

エジプト・ギザの三大ピラミッドであるカフラー王のピラミッドのそばに「ギザの大スフィンクス」があります。

全長73メートル、高さ20メートルの巨大像は、王の偉大さを示すシンボルとして、紀元前2500年頃、あるいはさらなる古代に作られたとされます。

エジプト・ルクソール神殿の「スフィンクス参道」

スフィンクス参道
(出典:Wikimedia Commons User:MJJR)

エジプトのルクソール東岸にある古代エジプトの神殿群にルクソール神殿があります。ルクソール神殿から2メートルほど離れたところにアメン神殿があり、2つの神殿をつなぐ参道の両脇には、たくさんのスフィンクスが並んでいます。

古代オリエントではライオンが聖なるもの、守護神とされ、大スフィンクスの他にも小さなスフィンクス像も数多く作られました。

ギリシャ神話の「スフィンクス」とはどんな怪物?

「ギリシャ神話」のスフィンクスは”人間に謎をかける怪物”

エジプトで権力の象徴とされたスフィンクスは、ギリシャ神話においては意味合いが変化します。古くは子供をさらう怪物となり、魔除けにもされました。次には妖しい性格を持つ怪物として登場します。

スフィンクスの謎かけ・なぞなぞの内容と答えとは?

オイディプスの神話によれば、オイディプスは旅の途中、道をふさぐスフィンクスに出会い、謎かけをされます。スフィンクスは、謎が解けない者を殺しては食べていました。

「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足となる生き物は何か」というなぞなぞです。

「それは人間だ。赤ん坊の時は四足、成長すると二足で歩き、老年になると杖をつくから三足になる」とオイディプスが答えると、スフィンクスは谷底に身を投げて死にます。

ギリシャ神話の「スフィンクス」をモチーフにした絵画

ドミニク・アングル『スフィンクスの謎を解くオイディプス』

『スフィンクスの謎を解くオイディプス』 ルーヴル美術館
(出典:Wikimedia Commons User:Lewenstein)

新古典主義のフランスの画家ドミニク・アングル (1780年~1867年)は、『スフィンクスの謎を解くオイディプス』( 1808年)において、ギリシャ神話のスフィンクスを、強く妖艶な「女性」として描きました。

ギュスターヴ・モロー『オイディプスとスフィンクス』

『オイディプスとスフィンクス』メトロポリタン美術館
(出典:Wikimedia Commons User:Pharos)

フランス象徴主義の画家ギュスターヴ・モロー(1826年~1898年)は、聖書や神話をテーマとした幻想的な絵画を描きました。『オイディプスとスフィンクス』(1864年)は、謎かけをするスフィンクスを若い女性の顔で描き、男女の葛藤として表現しました。

まとめ

頭が人間で体がライオンの「スフィンクス」は、古代エジプトの聖なる存在として、神殿やファラオの墳墓の近くに置かれました。ギリシャ神話に伝わったスフィンクスは、上半身が女性の妖しい魔物として絵画などに描かれました。

百獣の王であるライオンは、力と聖なるものの象徴として古代世界では特別な存在でした。古代オリエントの聖なるライオン像は、インドにおいて仏教と習合し、シルクロードを通じて中国に入って唐獅子となり、日本にやってきて狛犬となりました。

ライオンがいない日本においては犬に分類された狛犬も、エジプトのスフィンクスと同じように、聖獣として神社仏閣を守護しています。