「本日棚卸しのため午後6時に閉店とさせていただきます」という貼紙を目にしたことのある人は多いことでしょう。この「棚卸し(棚卸)」の意味を知っていますか?「棚卸し」は何をするのか?その目的や方法は?といった「棚卸し」の疑問を解消します。
「棚卸し」とは?
「棚卸し」の意味は”在庫を調査し資産評価をすること”
「棚卸し」とは、”在庫の数量を調査し、資産評価をすること”です。
「棚から商品をおろして数を調査する」というのが由来で、数を調べるだけでなく、品質を調べ、その価額を査定するという作業も「棚卸し」には含まれます。
「棚卸し」には”欠点を数えあげる”という意味も
「棚卸し」は、「在庫を調査し、資産を評価する」という意味で使われることの多い言葉ですが、一方で、「欠点を一つずつ数え上げ、言い立てる」という意味もあります。
ややネガティブなニュアンスで使用されることもあると覚えておきましょう。
「棚卸し」は英語で”stocktaking”
英語で「棚卸し」を意味する単語は”stocktaking”です。「棚卸しをする」は「take stock of~」と表現することもあります。
「stock」と同じく、「在庫」という意味を持つ単語には、「inventory」も挙げられます。たとえば、
- make an inventory of(棚卸しする)
- Closed for Inventory(棚卸のため閉店)
- an inventory(棚卸資産)
などといった表現が可能です。
「棚卸し」の目的とは?
「棚卸し」は在庫管理を目的としたものであることは先述しましたが、その目的について、もう少し詳しく見ていきましょう。
「棚卸し」は在庫をもとに、正確な利益を計算するため
「棚卸し」の目的は、まず、在庫数の確認です。これには、単に在庫の数を知るだけでなく、売り上げに対する原価を正しく計算するという目的があります。
企業の利益を単純に表すと「売上ー原価」です。この「原価」とは、仕入れにかかった費用(仕入額)をそのまま当てはめるのではなく、「売上となった商品に対する仕入れ額」を使用します。
売れ残った商品の「仕入額」は「原価」には含まれないため、どれだけの在庫があるかは、正しい原価・正しい利益の計算のためにも重要なのです。
「棚卸し」は帳簿とのすり合わせも目的
「棚卸し」は帳簿上の在庫と実在庫数の差異がないかを確認し、もし相違がある場合には帳簿を修正するというのも目的の一つです。
在庫の管理は、日々手書きの管理表やソフトウェアを使用して行っているはずですが、人の手でやる以上、どうしても記入漏れ・入力ミスなどが生じることがあります。そのため、「棚卸し」によって在庫数を確認するとともに帳簿との差異を確認することも大きな目的なのです。
あわせて、「滞留在庫(売れ残り・使用しなかったなどの理由で残っている在庫)」や「不良在庫(不人気などの理由による売れ残り)」を把握し、在庫を最小限にできる環境を整えるのも「棚卸し」の大きな目的です。
「棚卸し」のやり方とは?
実際の「棚卸し」はどのように進めればよいのでしょうか。「棚卸し」には企業それぞれのやり方がありますが、ここでは、「実地棚卸し」の基本的なやり方にポイントを絞って紹介します。
「棚卸し」の時期は”期首”と”期末”が一般的
「棚卸し」のタイミングは、年度の頭「期首」と年度の終わり「期末」が一般的です。
まず、期首の「棚卸し」で現在の在庫状況を明らかにします。そして、年度末(期末)に「期首との差」を明確にすることで、正確な利益の計算に役立てることができます。
「期首」「期末」以外でも、四半期・半期のタイミングで定期的に「棚卸し」を行う企業も少なくありません。帳簿上の残高と実在庫を適宜照らし合わせておくことで、ミスの早期発見にもつながります。
「棚卸し」の対象は製品・商品以外に事務用品なども
「棚卸し」で確認する「在庫」とは、自社が販売する商品・製品以外にも様々なものが含まれます。
たとえば、製品の製造に関わる原料や材料、販売を目的として製造中の製品ももちろん、「棚卸し」の対象です。また、未使用の文房具や切手・印紙といった事務用品も「在庫」として確認します。こうした在庫品はまとめて「棚卸資産」と呼ばれます。
「棚卸し」の作業はチームを組んでやることが多い
「棚卸し」の実際の作業は、複数人でチームを組んで行うのが一般的で、よくあるのが1人が数え、1人が書き留めるというペア体制です。数え間違いなどを防ぐためにも、複数人でともに作業するのが望ましいでしょう。
なお、カウント方法や記入用紙のフォーマット、記入方法などは会社によって異なります。
状態を確認し「評価損」を計上する
「棚卸し」の作業は、単に数を確認しておしまいではありません。在庫の状態を確認し、その評価も行います。破損品や汚損品がないか確認し、異変を発見したら必ず担当者に報告するようにしましょう。
「棚卸し」での評価によって通常販売が行えないと判断された商品は、評価損として、「損金」に算入することができます。同様に、型落ち品やトレンドから外れた商品など、今後通常価額での販売が難しいと判断された場合にも「損金」にできる場合があるのです。気になる点は適宜報告、相談することが大切です。
「棚卸表」は7年間は保存
「棚卸し」の結果が記載された「棚卸表」は、最低でも7年間(平成30年4月1日以後の欠損金の生ずる事業年度の場合は10年間)の保存が義務付けられている書類です。誤って廃棄することのないよう注意しましょう。
まとめ
「棚卸し」という言葉には、「人の欠点を一つ一つ数え上げ、言い立てる」という意味もありますが、一般には「在庫を調査し、資産を評価すること」という意味で用いられます。「棚卸し」の対象となる「棚卸資産」には製品・商品だけでなく、未使用の文具や切手なども含まれます。そのため、「モノ」を売る仕事に限らず必要とされる業務です。