「キュレーター」の意味とは?美術界やネットでの仕事内容も紹介

ネットで「キュレーター」という言葉をよく見かけます。もともとは美術専門職の呼称である「キュレーター」ですが、業界によって意味の違いはあるのでしょうか?

この記事では、「キュレーター」の意味や、資格の有無、業界別の仕事内容について解説します。フリーランスのキュレーターになるにはどうすればいいのかに関しても触れています。

「キュレーター」の意味とは?

「キュレーター」は英語「curator」を由来とする美術専門職の呼称

「キュレーター」とは、英語「curator」を由来とする外来語です。「curator」とは、欧米の美術館や文化施設における専門職の呼称です。学術的な専門知識によって美術資料の収集や保管、展覧会の企画や構成、運営などを行います。施設に属さないフリーランスのキュレーターもいます。

欧米では高度な専門職として社会的評価が高く、有名美術館のキュレーターや、有名な展示会を手掛けるキュレーターは美術界でも一目を置かれる存在です。

「キュレーター」は日本語で「学芸員」と訳すが仕事内容は異なる

日本では90年代から「キュレーター」の呼称が使われ始めました。キュレーターを日本語では「学芸員」と訳しますが、厳密には日本の学芸員とキュレーターは定義が異なります。

「学芸員」は国家資格であるため、学芸員として勤務するためには資格の取得が必要です。学芸員は、博物館や美術館における、作品と来館者をつなぐ役割です。資料の収集、保管、展示および博物館事業における専門的事項の多くを担います。

また、展示の企画や情報を発信する仕事も行います。この業務の部分について、さらに専門性を深めたのがキュレーターの仕事であるといえます。

学芸員の訳語としてのキュレーターではなく、一般的にキュレーターと称する場合は、展覧会の企画や運営などに特化した仕事を指します。また、最近ではWeb業界でもキュレーターの呼称が使われています。

フリーランスの「キュレーター」になるには?

フリーランスの「キュレーター」になるための資格は不要

学芸員として博物館や美術館に雇用されてキュレーターの仕事をするには、国家資格が必要です。その一方で、フリーランスのキュレーターとして活動する場合は、資格は不要です。

しかし美術のキュレーターとして独立するためには、美術の専門的、学術的な知識のみならず、優れた企画力や管理能力、テーマに沿った作品の選択力、さらに語学力など総合的な力が求められます。

また、美術界のキュレーターに限らず、インターネットにおけるキュレーターにおいても、キュレーションを通じて独自の解釈を行い、社会に対しての提言や批評、新しい思想の提案などを行うのがキュレーターに求められる役割です。

「キュレーター」の仕事内容とは?【分野別】

美術界で重要な役割を持つ「現代美術のキュレーター」

1895年から始まり、2年に一度開催される「ヴェネツィア・ビエンナーレ」や、1955年から始まったドイツ・カッセルで5年に一度開催される「ドクメンタ」など、現代美術の大規模な展覧会が伝統的に行われています。

これらの展覧会では、参加国は自国のキュレーターや美術家の中から企画者を選出し、企画者が設定したテーマにしたがってアーティストを紹介します。優れたキュレーターの手腕がなくては、大規模な展覧会は成立しません。

また、90年代からはフリーランスのキュレーターが企画する展覧会が世界各地で盛んになり、美術館以外の場所でも現代美術の展覧会が行われるようになりました。フリーランスの草分けとして、ハラルド・ゼーマン、セス・ジーゲローブなどが有名です。現代美術の興隆においては、個性的なキュレーターの企画力や実行力が重要な役割を持っています。

ネット(Web)でキュレーションを行う「キュレーター」

インターネットの世界でキュレーションを行う人をキュレーターと呼ぶことが定着してきました。インターネットのコンテンツを収集し、再編成して公開するキュレーションメディアは、ニュース、ファッションやライフスタイル情報など、さまざまな分野で制作されています。

音楽を選曲する「音楽(選曲)キュレーター」

選曲を行うキュレーターがおすすめの音楽について記事を書くキュレーションメディアも増えてきています。インターネットでの音楽ストリーミングサービスの普及にともなって、特定のテーマに添って選曲されたプレイリストを制作する仕事が注目されています。プレイリストを作る人はキュレーターと呼ばれます。

アパレル業界の「ファッションキュレーター」

服飾博物館や、ファッションを扱う美術館などにおいて、ファッションを歴史的、学術的に研究し、展覧会の企画などを行う人をファッションキュレーターと呼びます。

近年はファッションブランドの有名デザイナーの回顧展やブランドの展覧会が美術館で開催されることが多くなり、美術館の展覧会の範囲が広がっています。

関連語「キュレーション」とは何か?

「キュレーション(curation)」とはキュレーターの仕事

キュレーターの仕事を「キュレーション(curation)」と呼びます。キュレーションとは、特定のテーマに沿って情報を選んで整理し、そこに新たな価値を付加して発信する作業のことをいいます。美術業界での専門職「キュレーター」に由来する言葉です。

まとめサイトを「キュレーションサイト」と呼ぶ

近年は、インターネットの情報をまとめたサイトを「キュレーションサイト」呼ぶようになりました。また、「キュレーション」の作業を「キュレートする」と表現する独自のカタカナ語も使われています。

まとめ

「キュレーター」とは、欧米における専門職の呼称です。美術館や博物館に所属、あるいはフリーランスの立場で、美術資料の収集や研究を行い、展示企画やそれに付随する職務にあたります。欧米では、著名なキュレーターは社会的な立場が高く認められています。

近年はインターネットにおけるコンテンツや音楽のキュレーションの仕事を行う人をキュレーターと呼ぶようになりました。キュレーターが記事を書くキュレーションサイトも盛んです。

また美術業界では、日本の「マンガ」が注目されています。イギリスの大英博物館で2019年に行われた大規模な「マンガ展」も好評を博しました。今後は日本のマンガが現代美術に位置づけされ、キュレーターによって世界規模での展覧会が企画される時代になるのではないでしょうか。