「ワークシェアリング」とは?定義と目的やメリット・デメリット

「ワークシェアリング」とは、直訳すると「仕事の分かち合い」となり、社会全体の雇用を増やす方法や対策を意味する言葉として使われています。働き方改革とも関連する「ワークシェアリング」の定義とそのメリット・デメリットについて紹介します。



「ワークシェアリング」とは

「ワークシェアリング」は「社会全体の雇用者数を増やす方法」のひとつ

「ワークシェアリング」とは、「全体の仕事量を分散することで、社会全体の雇用を増やす方法」のことです。たとえば、ひとりあたりの労働時間を短縮し、その分、ひとりでも多くの人を雇用する、というのは「ワークシェアリング」の典型的な例です。

日本では、「ワークシェアリング」という言葉のほかにも「ワーキングシェア」という呼び方をされることもあります。

「ワークシェアリング」は雇用問題改善が目的

「ワークシェアリング」は、労働時間を減らす・雇用者数を増やす・過労死の予防などといった雇用問題の改善を目的とします。仕事を分かちあうことで、雇用が創出され、さらには雇用の安定化・経済全体の安定化を図るのが目的です。

「ワークシェアリング」の4つの類型

「ワークシェアリング」は、その目的に応じて分類することができます。ここでは、厚生労働省が定める「ワークシェアリング」の4つの類型について紹介します。

雇用維持型(緊急避難型)

雇用維持を目的として行なわれる「ワークシェアリング」で、解雇を防止するために従業員間で仕事を分かち合う手法です。個人の労働時間を短縮し、社内で仕事を分け合うことで、雇用を維持することが可能になります。

たとえば、「賃金カットにはなるものの、労働時間を短縮する従業員はリストラの対象とはしない」というのも、「雇用維持型ワークシェアリング」に該当します。このように、不況時に、緊急対応策として用いられることから、「緊急避難型」の名前がついています。

雇用維持型(中高年対策型)

「雇用維持型」の中でも特に、中高年層の雇用を確保することを目的とした「ワークシェアリング」です。従業員の年齢層を限定し、ひとり当たりの労働時間を短縮することで、組織内でより多くの中高年の雇用を維持することが可能になります。

たとえば、定年延長・再雇用など60代の雇用維持・雇用延長の方法として用いられる手法です。

雇用創出型

社会全体の失業者に対し、より多くの人に雇用の機会を与えるために行われる「ワークシェアリング」です。高い失業率が続いた場合などに用いられる手法で、たとえば、高齢者の労働時間を短縮し、その余剰分で若年層の積極的な採用を行う、という方法などが挙げられます。

多様就業型

勤務形態を多様にし、より多くの人材に雇用機会を与えることを目的とした「ワークシェアリング」です。たとえば、正社員の短時間勤務や、一つの業務を複数の労働者が分担し、その責任・成果も分かち合うという手法(ジョブシェアリング)も「多様就業型」に該当します。

多様就業型の「ワークシェアリング」は、育児や介護との両立を望む人にも働きやすい環境づくりにつながるとして、期待値の高い「ワークシェアリング」のひとつです。

「ワークシェアリング」のメリット

働けなかった人が働けるようになる

「ワークシェアリング」の一番のメリットは、「これまで働けなかった人が働けるようになる」という点です。たとえば、失業者の再就職先が見つかるだけでなく、介護のために短時間勤務を希望する人にも合う雇用が見つかる、ワークライフバランスに合う働き方ができるという点は大きなメリットとなっています。

スタッフのモチベーションの向上

「ワークシェアリング」では、労働時間が短縮されることで、従業員の意欲・モチベーションが向上する可能性が指摘されています。無駄な残業がなくなることで、必然的に限られた労働時間で集中するようになり、生産性やそれに伴う業績の向上がみられることもあるようです。

ストレスの軽減・プライベート充実

慢性的な長時間労働は、体だけでなく、心に重くのしかかることもあります。「ワークシェアリング」では、労働時間が短縮されることで、ストレスも軽減され、プライベートの時間も十分に保つことができます。その結果、リフレッシュして仕事に集中できるため、意欲・生産性の向上にもつながり、好循環が生まれるのです。

ストレスが軽減されることで、離職率の低下が期待できるのもメリットといえるでしょう。

「ワークシェアリング」のデメリット

給与が下がる可能性がある

「ワークシェアリング」では、労働時間が短縮されることで、給与に影響が出ることもあります。「本来はもっと長時間働いて稼ぎたい」という人が不満を抱える懸念があるのです。

そのため、「ワークシェアリング」では、従業員からの反発がないような給与施策が同時進行でとられることも珍しくはありません。

生産性の低下につながる懸念も

労働時間を減らし、多くの従業員で業務を分担して行う場合は、従業員間の引継ぎが必要です。この引継ぎがうまく機能しないと、タイムロスや生産性の低下・質の低下につながります。従業員自身も「やりにくさ」を感じるため、モチベーションの低下につながることもあるようです。

企業側の支出が増えることもある

「ワークシェアリング」によって雇用が増大した場合、それに伴って賃金や社会保障に関する費用が増加する懸念もデメリットとして挙げられます。雇用を創出し、社会貢献したものの、結果として企業が苦しい状態に陥らないよう計画性が重要です。

「ワークシェアリング」の諸外国の事例

「ワークシェアリング」は、イギリスやドイツ、オランダなど各国で導入されています。たとえば、早期退職制度導入による雇用機会創出や法定労働時間の短縮などがその例です。

オランダは「ワークシェアリング」に成功した国

「ワークシェアリング」の成功例としてしばしば紹介されるのがオランダです。

オランダでは、1980年代前半に起こった大不況を機に「ワークシェアリング」が大きく広まりました。中でも、1996年に取られた「同一労働条件」の施策は有名です。オランダでは、フルタイム労働者とパートタイム労働者間において、時給や福利厚生などの条件に差をつけることが禁じられました。これにより、労働者が、自らの労働時間が決められるようになったのです。

日本との違いは、雇用機会創出を重視

諸外国と日本の「ワークシェアリング」の大きな違いは、その目的です。諸外国は「雇用機会の創出」が大きな目的となっていて、短時間労働勤務などによって雇用を生み出しています。

一方の日本はというと、「長時間労働の是正」のために行われることが多いのが特徴です。そのため、労働時間を短縮して新たに人員を雇う場合に、雇用保険や社会保険といったコストがかかってしまうというのが、「ワークシェアリング」の導入が進まない原因ともいわれています。

まとめ

仕事をシェアするという意味の「ワークシェアリング」は、労働時間を短縮し、総業務量を分け合うことを意味します。この「ワークシェアリング」は、雇用の維持・雇用の創出・長時間労働の是正などといった労働問題を改善することを目的として行われます。時短勤務で新たな雇用を生み出したり、短時間労働による多様な働き方を提案したりするのも「ワークシェアリング」のひとつです。