「シノワズリ」の意味とは?歴史・絵画や「ジャポニスム」も解説

「シノワズリ」とは、かつてヨーロッパで流行した中国趣味の意味のフランス語です。現在でも、中国風の絵柄の食器や、中国風のテイストが加わったヨーロッパのファッションデザインなどを目にすることがあります。

この記事では、シノワズリとは何かについて、その歴史や具体的な文化現象について解説します。あわせてシノワズリのあとに流行したジャポニズムとの違いについても紹介しています。



「シノワズリ」とは何か?

フリードリヒ1世の磁器戸棚(シャルロッテンブルク宮殿・ベルリン)
(出典:Wikimedia Commons User:JoJan)

「シノワズリ」とは「中国趣味」という意味の文化現象

「シノワズリ」(仏: chinoiserie)とは、フランス語で「中国趣味」という意味です。17世紀のヨーロッパでは中国風の美術工芸品をはじめとして、服飾、インテリア、絵画など幅広い分野において、貴族たちが中国風の題材を好んで生活に取り入れました。

18世紀にはヨーロッパのバロック、ロココ様式と融合し、シノワズリ流行のピークとなりました。

「シノワズリ」はヨーロッパ人が創造した幻想の異国趣味

ヨーロッパで流行した「中国趣味」の中国とは、実際の中国文化を受容するものではなく、イメージで構成された幻想の世界でした。インド、東南アジア、日本も含んだヨーロッパから見た東方全般に対する異国趣味がシノワズリとして受容されたのです。

ヨーロッパ貴族は中国風の工芸品を収集し、画家は中国風のエッセンスを取り入れた作品を描き、職人は中国風の家具を製作するなどの現象が起こりました。

シノワズリの研究家はその定義を、さまざまなオリエント世界の様式と、ヨーロッパ様式との混合をヨーロッパ的に表現したものとしています。

中国風の陶磁器が注目され「有田焼」もシノワズリの磁器を輸出

シノワズリはヨーロッパと東方の交易からもたらされました。特に陶磁器が注目され、中国または中国風の陶磁器は珍しい宝物として中世の王族や貴族がコレクションしました。宮殿には磁器を壁一面に飾った「磁器の間」が設けられ、床から天井までが磁器で埋め尽くされるほどでした。

17世紀~18世紀には中国から陶磁器が大量に輸入され、日本の有田焼もシノワズリ様式の磁器を製造しヨーロッパに輸出しました。古伊万里に中国風の図柄が見られるのはそのためです。東洋の磁器の魅力は、ドイツの名窯「マイセン」にマイセン磁器を生み出す刺激を与えました。

「シノワズリ」の絵画や家具とは?

シノワズリの絵画を描いた「フランソワ・ブーシェ」

フランソワ・ブーシェ『化粧』
(出典:Wikimedia Commons)

ロココを代表する画家フランソワ・ブーシェ(1703年~1770年)は、上流貴族の肖像画や日常などを多く描きました。1742年に描かれた『化粧』には、中国趣味の屏風が描かれています。

同じ年に『踊る中国人たち』という作品では、中国風の衣装を身に着け、宴の席で踊る人々の様子を描いていますが、その衣装はどこかアラビア風で、南国のヤシの木のようなものも描かれています。

シノワズリの家具をデザインした「トーマス・チッペンデール」

チッペンデールの作した椅子 (メトロポリタン美術館)
(出典:Wikimedia Commons User:Pharos)

トーマス・チッペンデール(1718年~1779年)は、シノワズリとロココ様式を融合させた家具をデザインしたイギリスの家具デザイナーです。中国趣味がヨーロッパの文化の中に部分的に取り入れられたことがシノワズリの特徴です。

「シノワズリ」と「ジャポニスム」の違いとは?

マネ『エミール・ゾラの肖像』
(出典:Wikimedia Commons)

19世紀後半には、シノワズリにかわってジャポニスムが流行しました。ジャポニスム(仏: Japonisme)とは日本主義という意味です。英語でジャポニズム(Japonism)と表記されることもあります。シノワズリとジャポニスムは受容のされ方に違いがあります。

ジャポニスムは美術的価値が評価されヨーロッパ絵画に影響を与えた

とくにフランスでジャポニスムが急速に広まった原因として、極東趣味の店が浮世絵版画を扱って人気となったことや、1867年に開催されたパリ万国博覧会などに日本の美術品が出品され、その水準の高さが大きな話題になったことなどがあります。

また、19世紀のフランス絵画界では、マネやドガなど前衛的な美術家が新しい表現方法を日本美術に求め、伝統的な様式を革新し、ジャポニズムが広がってゆきました。

シノワズリは異国趣味のロマンに留まりましたが、ジャポニスムは西欧美術の様式に大きな影響を与え、近代美術への改革に重要な役割を持ちました。

まとめ

シノワズリは17世紀、18世紀のヨーロッパにおける、中国趣味の文化現象です。特に東洋の磁器への憧憬は強く、ヨーロッパで最初の磁器であるマイセン磁器が生み出される原動力となりました。

1860年代のジャポニスムの流行によってシノワズリは終焉します。シノワズリはヨーロッパ人が考える幻想の異国趣味に留まりましたが、ジャポニスムはヨーロッパ美術に深く重要な影響を与えました。

しかし現在でも、ヨーロッパの装飾やファッションにおいて、中国風の意匠を取り入れたシノワズリスタイルをしばしば見ることができます。

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趣味は読書とヨーロッパ旅行です。ドイツには5年余り滞在経験があります。某大学の人間科学部とデザイン学部を卒業。人生が豊かになる知識の探索を人生の糧にしています。