「悉く」の意味とは?「尽く」との違いや使い方の例文・類語も解説

「悉くうまくいかない」というと絶望的なニュアンスを感じますが、「悉く(ことごとく)」とは本来どういった意味の言葉なのでしょう。

意味や語源を解説しながら、使い方を例文で紹介します。同じ読みを持つ「尽く(ことごとく)」との違いや類語・英語表現についても触れています。

「悉く」とは?

「悉く」の意味は”残らずすべて”

「悉く」の意味は、“残らず・すべて・全部”です。「悉く~だった」というと、”例外なくすべてが~だった”という意味になります。

「悉く」の読み方は”ことごとく”、音読みでは「シツ」

「悉く」の読み方は、“ことごとく”です。

なお、「悉く」の「悉」は、音読みでは“シツ”とも読みます。「悉」の字を使った例では「悉皆(しっかい)」があり、これは、残らず・すべてという意味の言葉です。「悉皆調査」などと使われます。

「悉く」の語源は象形文字を組み合わせた”会意文字”

「悉く」の読み「ことごと」とは、「事事」つまり「物事のすべて」を意味します。ではなぜ、「悉く」の漢字が使用されているのかというと、それは「悉」の漢字の成り立ちに由来します。

「悉」は、獣の「爪」と心臓の「心」の二つの象形文字を組み合わせた「会意文字」です。獣が爪でほかの獣の心臓を残さずえぐり取る様を表した感じで、「残らずとる」「すべて取る」といった意味が与えられました。「悉」と「事事」は「すべて」という同じ意味があったことから、「ことごとく」の表現に「悉く」の漢字が使用されたというわけです。

「悉く」と「尽く」の違いとは?

「尽く」と意味・使い方に違いはない

「ことごとく」は、「悉く」よりも「尽く」の表記がなじみがあるという人も多いことでしょう。「尽」という漢字には、つくす・出し切るという意味があります。

「尽く(ことごとく)」もまた、「悉く」と同じように、「すべて」のニュアンスで使用することができ、使い方に違いはありません。どちらを使っても問題ないでしょう。

「悉く」の使い方と例文とは?

「悉く」は好ましくないことに対してよく使う

「悉く」という表現は、「すべて」の意味で、ネガティブな結果に対して使われることが多いのが特徴です。たとえば、

例文
  • 企画を提案したが、悉く否定されている
  • 上司の依頼は、悉く引き受けざるを得ない

といった使い方ができます。一方で、物事がうまくいったときや肯定する際に使うこともあります。たとえば、

例文
  • 今週の運勢は最悪だったが、今のところ悉く外れてほっとしている

といった使用も可能です。

「残らずすべて」のニュアンスで使うことも

「悉く」は「残らずすべて」の意味で、空っぽの状態を表す際にも使用することができます。たとえば、

例文
  • コツコツためていた500円玉貯金を悉く使ってしまった

というと、「空っぽになるまで残らずすべて使った」というニュアンスの表現になります。

「悉く」の類語とは?

「悉く」の言い換えは”余すところなく”や”すっかり”など

「悉く」の言い換えも使える類語には、「余すところなく」「すっかり」が挙げられます。

「余すところなく」とは「残りがないこと」を意味し、転じて「すべて」の意味を持つ表現です。たとえば、「練習の成果を余すところなく発揮します」などといった表現ができます。「すっかり」もまた、「残らずすべて」という意味の表現で、「すっかりなくなる」「すっかり変わった」などと使います。この「すっかり」は、「すっかりと」と使うことで、「驚くほどの変化」を表す表現としても用いられます。

「あらゆる」も言い換えに使えるが、”残らず”の意味はない

「あらゆる」は「すべて」「ある限りの」という意味の表現で、「悉く」の言い換えとしても使える言葉です。たとえば「あらゆる問いを発した」というと、考えられる限りの問いを発した、という意味になります。

ただし、「あらゆる」には、「悉く」のような「残らず」というニュアンスはないため、使用には注意が必要です。

「つぶさに」は”詳細に”を意味する類語

「悉く」の類語では、「つぶさに」という言葉も挙げられます。「つぶさに」とは、「すべてもれなく」「詳細に」という意味の言葉で、たとえば、「つぶさに報告する」というと、「すべて報告する」という意味になります。

「つぶさに」は、「具に」「備に」という漢字表記のほか、「悉に」と書くことも可能です。

「悉く」の英語表現とは?

「悉く」は英語で”all”や”every”など

「すべて」を意味する「悉く」は、英語では“all”“every”を用いて表現します。たとえば、「all」を使った例文では、「I spent all the money I had.(私は有り金を悉く使った)」などといった使い方が可能です。

「every」には、「どの~もみな」「すべての」「ことごとくの」といった意味があり、「check every important point(重要ポイントは悉く確認する)」という風に使います。また、「悉くへまをする」という意味で「botch up everything」という慣用表現もあります。

まとめ

「悉く(ことごとく)」は、「すべて」「残らず」といった意味の言葉で、「尽く」の漢字表記でもよく用いられます。どちらの表記でも、意味・使用方法に違いはありませんが、「尽く」の方が広く知られていると言えるでしょう。「すべて」という意味の言葉を類語としてもいくつか紹介しましたが、レパートリーとして併せて覚えておくと表現の幅が広がるのでおすすめです。