「時節」の意味とは?「時節に合う」など使い方の例文や類義語も解説

「時節柄、ご自愛ください」とは、相手の健康や無事を気遣うフレーズです。他にも、「時節に合う」や四字熟語「時節到来」などにも使われる「時節」という言葉について、その意味・使い方を解説します。戸惑いやすい読み方や「時節の候」「時節の折」など陥りやすい誤用、便利な類義語や英語訳についても紹介します。

「時節」とは?

「時節」の意味は”季節・情勢・時期”

「時節」の意味は、「自然の移り変わり・季節」「社会情勢・世の中の情勢」「何かを行動を起こすのによい時期・機会」です。

単なる「季節の移り変わり」を意味するだけでなく、”タイミング”や”チャンス”といった意味も持つ言葉です。

「時節」の読み方は”じせつ”

「時節」の読み方は“じせつ”です。

挨拶に沿えて「気候」「季節」の意味で使う

「時節」という言葉は、「季節」や「気候」の意味で挨拶文の中で使われることがよくあります。たとえば、次のように「季節」という言葉の言い換えとして使うことができます。

例文
薄寒く感じる時節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今年も桜の時節が近づいてまいりました。恒例のお花見のご案内です。

ただし、「時節」「挨拶」というキーワードでは、しばしば二十四節気に基づいた季節の挨拶「時候の挨拶」と混同しやすいので注意が必要です。

「時候の挨拶」では、4月上旬は「春陽の候」という風に、二十四節気に基づいた挨拶語が定められています。メールや文書、手紙などで用いられる表現ですが、この「~の候」という一連のフレーズは、「時候の挨拶」です。「時節の挨拶」とは呼びませんので注意が必要です。

「時節」の使い方と例文とは?

「時節柄」は配慮を付け加える際に用いる表現

「時節」という言葉は、メールや手紙の末尾で「時節柄、ご自愛ください」などという表現でもよく使用されます。「時節柄(じせつがら)」とは、「このような季節ですので」といった意味で使われる表現で、たとえば、「時節柄、ご自愛ください」は、肌寒く風邪をひきやすい季節に「体調に気を付けてください」といったニュアンスでよく使われます。

「時節柄」は、気候や季節だけでなく、社会情勢や職場環境などを指しても使うことができます。たとえば、「時節柄お忙しいこととは存じますが、よろしくご確認の程お願いいたします」とすると、「時期的な忙しさ」「急な体制変更などの社内事情」などを理由とした「忙しさ」を指しています。

「時節に合う」は”状況・情勢”の意味

「時節」という言葉を「時節に合う」と使うと、世の中の情勢や環境に「合っている」という意味になります。たとえば、

例文
気持ちの良い身だしなみとは、まず時節に合うことが前提である
この不況の真っただ中に新車購入とは時節に合わないことをするもんだ

といった使い方が可能です。

「時節を待つ・時節をわきまえる」は”機会”の意味

「時節」を「待つ」や「わきまえる」とともに使う場合は、「機会」「チャンス」「時期」といった意味になります。

例文
成功のためには、時節を待つことも大切だ
気難しい部長を説得するには、時節をわきまえる必要がある
時節をいかにわきまえるかが、投資の最重要ポイントだ

四字熟語「時節到来」は待ちに待ったチャンス

「時節」を使った四字熟語に「時節到来」があります。「時節到来」とは文字通り、「時節がやってくる」という意味、つまり「よい機会がやってくる」「チャンスがきた」という意味になります。

似た意味の四字熟語には、「好機到来」や「時期到来」などが挙げられます。

「時節の折」「時節の候」とは使わない

「時節」を使った表現でよくある誤りが「時節の折」や「時節の候」です。似たような表記をする言い回しはありますが、「時節」にそのような使い方はありません。

そもそも、「折(おり)」「候(こう)」は、どちらも「季節」という意味の言葉です。そのため、「時候の折」「時候の候」は直訳すると「季節の季節」となり、意味を成しません。「新緑の折」や「新緑の候」という風に、時候の挨拶などで使用されるのが一般的です。

「時節」の類義語とは?

「時節」の類義語は”季節・時候・~の折”

「時節」の類語は、「季節」や「時候(じこう)」「~の折」などが挙げられます。いずれも、四季折々の「季節」を表す言葉です。

特に、「時節」と「時候」は一字違いの似た言葉ですが、「時節」が「季節」「情勢」「時期」など複数の意味があるのに対し、「時候」は基本的には「季節」の意味のみです。

また、「~の折」という表現は、「時節柄」と同じ意味になります。「暑さ厳しき折、お体ご自愛下さい」は「時節柄、ご自愛ください」と言い換えることができます。「今ちょうどその時」を表す場合に「~の折」と使います。

「時節」は”時期”や”機会”と言い換えられる場合も

「時節」の類語には、「季節」以外にも「時期」「機会」も挙げられます。「時期」は「季節」に近いニュアンスの表現で、「その時」「そのことを行うための期間」といった意味の言葉です。たとえば、「雨の時節」は「雨の時期」とも言い換えることができます。

また、「機会」とは、いわゆる「チャンス」のことで、「そのことをするのに最もちょうどよい時期」という意味の言葉です。似た意味の言葉には、「好機(こうき)」もあります。

「時節」の英語表現とは?

「時節」の英語訳は意味・文脈で異なる

先述したように、「時節」には複数の意味があるため、英語訳も意味・文脈によって異なります。「季節」の意味で使われている場合は、「season」や「times」と訳すことができます。

例文
It is so warm for the cherry blossom season.(桜の時節にしてはとても暖かい)

また、「時節柄、ご自愛ください」という表現は、しばしば「Please take good care for yourself.」と訳され、「時節柄」の英語訳は記載されないこともあります。

「時節」を「機会」や「時期」といった意味で使う場合には、「opportunity(機会)」や「chance(チャンス・機会)」を用いり、次のような表現が可能です。

例文
Watch for a chance(時節を待ちなさい)
I shall wait for an opportunity(時節を待っている)

まとめ

「時節」とは、「季節」「機会」「時期」の主に3つの意味を持つ単語です。「新緑の時節」のように「季節」の意味で使うほか、「時節を待つ」のように「好機・チャンスを待つ」といったニュアンスでも使用できます。中でも、「時節柄ご自愛ください」は、メールや文書の末尾で相手を気遣う定型句となっています。ただし、「時節の候」や「時節の折」という表現は、「季節」の意味を重ねた誤用です。類語との使い分けがポイントです。