「エンゲルス」とその思想とは?著書やマルクス『資本論』も紹介

マルクスとともにマルクス主義を生み出した「フリードリヒ・エンゲルス(1820年~1895年)」とはどのような人物なのでしょうか?この記事では、エンゲルスとその思想について解説します。あわせて『資本論』や、マルクスとエンゲルス共著の著書についても紹介します。

「フリードリヒ・エンゲルス」とその思想とは?

「エンゲルス」とはドイツの社会・政治思想家で革命家

エンゲルスとは、ドイツの社会・政治思想家で革命家です。エンゲルスは、盟友カール・マルクス(1818年~1883年)とともに、社会主義体制の理念を構築し、革命運動や社会主義運動の指導的な役割を果たしました。

エンゲルスは公私ともにマルクスを支え、マルクスと並ぶマルクス主義の創立者とされています。

「マルクス主義」はマルクスとエンゲルスの協力から生まれた思想

「マルクス主義」とは、弁証法的唯物論や階級闘争論などからなる社会主義思想体系のひとつです。社会主義は科学であるとの立場から「科学的社会主義」とも称されます。

マルクスとエンゲルスの密接な協力の中で時間をかけて諸思想や理論が構築されました。資本主義の矛盾から社会主義へ移行せざるをえないとし、階級闘争を通じて労働者の解放が実現されると説きました。

マルクス主義は、弁証法的唯物論の思想の上に展開されます。マルクス主義における歴史観も弁証法的唯物論に従い、資本家と労働者階級の間における闘争の歴史と解釈されました。

「弁証法的唯物論」とは、マルクスとエンゲルスが、ヘーゲルの”弁証法”・フォイエルバッハの”唯物論”を解釈しなおして創始した説で、社会や歴史の発展過程を、固有の法則に従って弁証法的に発展する物質の機能であるとするものです。この説は革命の哲学とされ、のちにレーニン、スターリンや毛沢東などによって発展してゆきました。

『資本論』におけるエンゲルスの役割とは?

マルクス経済学最大の古典『資本論』はエンゲルスの支援によって生まれた

エンゲルスは家業の紡績工場を経営しながら、困窮していたカール・マルクスとその家族の生活を支えました。さらにマルクスの死後に遺稿を整理し、マルクスが生前に刊行できなかった『資本論』の第2巻と第3巻を完成させました。

エンゲルスは公私ともにマルクスを支え、マルクスの『資本論』の執筆にも協力しました。『資本論』は実質的にはマルクスとエンゲルスの共著でした。

「マルクスとエンゲルスの共著」と「エンゲルスの著書」を紹介

マルクスとエンゲルスは1842年に出会い、それ以後生涯を通じて協力関係にありました。共著も多くあり、それらの著書は『マルクス=エンゲルス全集』として刊行されています。

共著『ドイツ・イデオロギー』(1845年)

マルクスとエンゲルスは、唯物論の視点から資本主義社会を検討しました。過去の歴史では、ひとつの時代の経済的状況によって動機を与えられた多数の個人が、法律やイデオロギーなどを形成したと主張しました。

本書により、歴史を唯物論から把握する「唯物史観論」が明示されました。

共著『共産主義者宣言(共産党宣言)』(1848年)

『共産主義者宣言』(または『共産党宣言』)は、マルクス主義の基本文献です。有名な句「今日までのあらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である」に始まり、それまでの歴史観を根本的に覆した革命的宣言を行いました。

労働者が団結することで搾取してきた資本家を打倒できることや、共産主義の基本的な考え方が説かれ、これ以降のあらゆるプロレタリア運動の指針となりました。

『共産主義者宣言』から始まるマルクス主義の思想は、後の時代にレーニンやスターリンが都合良く作り変え、ロシア革命の指導理念となりました。

結びに記された「万国の労働者、団結せよ!」の言葉は共産主義の最も有名なスローガンとなり、ソビエト連邦の国是ともなりました。

エンゲルスの代表的な著書『空想から科学へ』(1880年)

『空想から科学へ』は、社会主義の入門書として一般の人々に向けてエンゲルスが書いたもので、エンゲルスのベストセラーとなりました。当時から広く読まれており、難解な『資本論』の世界観も本書により理解することができます。『空想から科学への社会主義の発展』が正式名称です。

具体的には、「空想的社会主義」の意義と限界について考察し、空想的社会主義を「科学」に変えるうえで、ヘーゲルの弁証法が与えた影響について述べられています。空想的社会主義とはユートピア社会主義ともいい、初期の社会主義思想を指します。

また、1867年に刊行された『資本論』第1巻の内容を引用し、生産が社会化しても利益取得は私的なままであるという「資本主義の基本矛盾」を説明しました。結論として、資本主義は社会主義に移行せざるを得ないと主張しました。

まとめ

エンゲルスとマルクスが生きた19世紀のヨーロッパは、産業革命によって社会が大きく変革し、資本金を手にしたブルジョワ階級が台頭し、極度の貧富の格差が生まれた時代でした。

マルクスとエンゲルスは、人間の意思を離れて絶えず拡大しようとする資本に問題の原因を見て、資本主義批判と社会改革を主張しました。

マルクス生誕200年にあたる2017年に、フランス、ドイツ、ベルギー合作の映画『マルクスとエンゲルス』(原題:The Young Karl Marx)が公開されました。二人が19世紀半ばに出会い、その数年後に共著の『共産党宣言』を発表する時期をめぐる二人の友情と、のちに妻となる女性たちとの恋愛を描いています。