「知る」の謙譲語は?尊敬語・丁寧語の表現も例文つきで解説

ビジネスシーンで適切な敬語を使うことは最低限のマナーですが、「知る」を遜って(へりくだって)言う場合にはどう表現すればよいのでしょう。「知る」の謙譲語をはじめ、尊敬語から丁寧語まで、「知る」の敬語表現について例文を用いて詳しく解説します。

「知る」の謙譲語とは?

「知る」の謙譲語は”存じる・存じ上げる”

「知る」の謙譲語は、“存じる(ぞんじる)・存じ上げる(ぞんじあげる)”です。謙譲語は、相手に対して自分を遜って(へりくだって)いう場合、控えめな態度をとる場合に使う表現なので、自分の「知る」という動作に対して「存じる」「存じ上げる」を使用します。

「存じ上げる」は、「存じる」という謙譲語に、同じく謙譲の意味を持つ「上げる」を加えた表現で、「存じる」<「存じ上げる」の順に敬意の強い表現となります。

「知る」の謙譲語には”承知する・承知している”も

「知る」の謙譲語には、“承知する”という表現もあります。例えば、「(物事を)知っている」という場合には「存じる」を使いますが、「事情を知っている」という場合に「承知する(承知している)」を使用します。

「知る」の謙譲語の使い方・例文とは?

「存じております」がよく使う謙譲表現

「知る」の謙譲語としてよく使用される「存じております」は、目上の人に対して「知っています」と言う場合に使う表現です。「存じています」というよりも、「おります」を使った方が丁寧な印象を与えます。

例文
  • その件に関しては、存じております
  • A社の〇〇さんについてはよく存じております

「存じ上げております」はより丁寧な表現

「存じております」に対し、さらに丁寧な言い回しをする場合には、「存じ上げております」という表現を使います。特に、「存じ上げております(存じ上げる)」という表現は、「Aさんを知っている」という風に、対象を「人物」に限定して使うのも特徴です。

例文
  • 山田部長のことは、かねてより存じ上げております。
  • 佐藤様のお名前は存じ上げております。
  • 御社のご要望は存じ上げております。

「存じ上げる」は本来は人物に対して使う表現ですが、実際のビジネスシーンでは例文のように、強い敬意を示すために、しばしば「人物以外」に対しても用いられているようです。

状況や事情には「承知しております」を使う

人物に対し、状況や事情などを「知っている」と表現する場合の謙譲語は、「承知しております」を使います。「承知しておりました」とすると「知っていました」という意味になります。

例文
  • A社からの要望については、承知しております
  • お忙しいことは重々承知しておりますが、何卒ご協力の程お願いいたします
  • (「変更点について聞いたか?」という問いに)「はい、承知しております」

否定形は「存じません」「存じ上げません」

「存じる」「存じ上げる」の否定形は、「存じません」「存じ上げません」を使用します。「存じ上げます」が主に人物について使うように、「存じ上げません」もまた、主に人物に対して用いられる表現です。たとえば、「Aさんについてご存じですか?」と聞かれたら、「存じ上げません」と返答します。

例文
  • 申し訳ございませんが、その件については存じません
  • 〇〇様については、存じ上げません。
  • お名前を存じ上げず、大変失礼いたしました

また、「知らない」というニュアンスの敬語表現では、「わかりかねます」という言い回しもビジネスシーンではよく用いられます。「しようとしたくてもできない」というニュアンスを含む表現で、たとえば、「申し訳ございませんが、その件についてはわかりかねます」というと、「知らない」「わからない」という意味の丁寧な表現となります。

「存じる」は「思う」の謙譲語として使われることも

「存じる」は「知る」だけでなく「思う」の謙譲語としても使用されます。メールの結びなどで何気なく使っている「お忙しいこととは存じますが~」というフレーズも、「思う」の意味で「存じる」を使う代表的な例です。

例文
  • 皆様、お元気ににお過ごしのことと存じます
  • 既にご確認のこととは存じますが、改めてご案内申し上げます
  • お褒めの言葉を賜り、恐悦至極に存じます

このように、「知る」の謙譲語として使用する場合同様に、「自分が~と思う」と言う場合に使用します。

「知る」の尊敬語とは?

「知る」の尊敬語は「ご存じ」

「謙譲語」は、相手に対して自らを遜って言う場合に使う表現ですが、「尊敬語」は相手を敬う意味で相手の動作をたてる場合に使います。「知る」の尊敬語は、「ご存じ」「お知りになる」が挙げられます。中でも最も使用されるのが「ご存じ」という表現です。「~についてご存じですか?」のように、ビジネスシーンではよく用いられる表現です。

例文
  • 先方も、この件に関してはすでにご存じです
  • 既に皆さまご存じかもしれませんが、再度ご案内申し上げます
  • 新規出店の件については、すでにご存じでいらっしゃいますでしょうか
  • 近年の離職率について、ご存じでしょうか

一方、「お知りになる」のように「お~になる」という表現も尊敬語として広く用いられますが、「お知りになる」というと、口語表現では特に「お尻」を連想させる語感となるため、あまり使用されません。また、「知られる」も文法上は尊敬語として使用できますが、「広く知れ渡っている」の意味にもとれることから使用されないのが通例です。

「知る」の丁寧語とは?

丁寧語は「知ります」「知っています」

「知る」の丁寧語は、「知ります」です。「知ります」と現在形で使うよりも、「知りました」と過去形で使うことが多いでしょう。また、「知っています」もよく使用される丁寧語です。「知っています」は、厳密には、「知る」(動作)ではなく、「知っている」(状態)を表す際に用いられる丁寧語です。

例文
  • 申し訳ございません、その件については今はじめて知りました
  • 過去の売上管理ファイルの保管場所を知りませんか?
  • 部長がよく使うお店を知りませんか?
  • A社の担当者なら知っています、田中さんです。
  • 携帯電話の連絡先を知っていますか?

まとめ

「知る」の謙譲語は、「存じる」「存じ上げる」「承知する」が挙げられます。特に、「存じ上げる」は人物に対して使う表現で、初めて会う人に対して「かねてよりお名前は存じ上げておりました」という表現でもよく用いられます。「知らない」と言う場合でも「存じません」や「存じ上げません」を使うことで、語感をやわらげたり、無礼を避けたりすることができます。よく使う敬語表現ですので、ぜひ覚えておきたいものです。