「適当」の意味や語源とは?類語・対義語や「適切」との使い分けも

「適当」という言葉は、異なる2つの意味で使われていることを知っていますか?たとえば「適当にやっておいて」といえば「ほどよくやっておいて」の意味、「適当にやるな」は「いい加減にやるな」とニュアンスが変わってきます。

今回は「適当」の持つ2つの意味を解説するとともに、使い方の例文や類語・言い換え表現、対義語を紹介します。また英語訳についても触れています。

「適当」の意味や語源とは?

「適当」の意味は”程よく当てはまること・ほどよいこと”

「適当」の意味は、“(状態・目的などに)程よく当てはまること・(分量や程度などが)程よいこと・程よい様”です。「適当」の”適”が持つ「ふさわしい・よくあてはまる」という意味に由来します。

たとえば、条件に当てはまること、程よいさじ加減であることを表すのが「適当」です。

「いい加減」という意味も間違いではない

「適当」にはもうひとつ“いい加減”という意味もあります。ここでいう「いい加減」とは、先述した「程よいこと」という意味ではなく、「雑な様」や「手抜き」といった悪いニュアンスです。「曖昧」や「要領よく」といったニュアンスで使われるのも「いい加減」という意味に由来します。

「適当」の語源には諸説あり

「適当」の語源には様々な説があります。ひとつは、軍用語として「程よい様」を意味していたのが、段々と不備をごまかす言葉へと変化し、「いい加減」の意味でも使われるようになった、というものです。他にも、「適当」の持つ「ちょうどよいさじ加減」という意味が次第に「好きな具合に」と解釈が変化していき、結果として「いい加減」の意味となった、という説もあります。

いずれも、「程よい」という意味から「雑・いい加減」という意味へと比重が傾いていったとする説が多いようです。

「適当」の使い方と例文とは?

「適当な大きさ」「適当な量」は”ほどよい量”の意味

「適当」を分量や程度に対して使う場合は、「程よい量」の意味で使われることが多いでしょう。たとえば、「塩を適当に加えてください」というと「程よい量の塩を加えてください」という意味になります。

例文
  • 体重増加を抑えるためにも適当な運動をした方がいい
  • 適当な時間にお昼にしましょう
  • 手土産はこのくらいが適当でしょう

ただし、分量に対して使う場合も、「調味料の量が分からず、適当に入れてしまった」のように「いい加減な量」という意味で使われることもあります。

「適当な人材」は”程よく当てはまる人”の意味に

「人」に対して「適当」と使う場合にはどういった使用があるのでしょう。たとえば、「新規のプロジェクトに適当な人材がいないか探している」というと、「程よく当てはまる人材」という意味になります。同じく、「程よく当てはまる人・もの・こと」の意味では次のような使用が挙げられます。

例文
  • 次のプロジェクトリーダーには彼が適当だろう
  • 失恋した彼女にかける適当な言葉が見当たらない
  • 適当な事例を挙げて説明したほうが分かりやすい
  • パーティに行くのに適当な服を探している

一方で、「彼は適当な人だ」と、人の性質について言及する場合の「適当」は「いい加減・雑・無責任」のニュアンスになります。

「適当にやる」「適当に済ます」は”雑”の意味

「適当にやる」「適当に済ます」という表現もよく見聞きしますが、これらはどちらかというと「雑・いい加減」の意味で使われることの多い表現です。

例文
  • 残業で遅くなったので夕飯は適当に済ませた
  • すっかりマンネリ化してしまい、プレゼントも適当に済ませがちだ
  • 適当にやるつもりが、結局あれこれと世話を焼いてしまった
  • 適当にやってばかりいると、後で泣きを見るぞ

「適当にやっておいて」と言われたら”正しい方法”で

一方、「適当にやっておいて」と仕事を頼まれたら、「(その内容に)ふさわしい方法・正しい方法」で対応します。この場合、依頼主の意図をくみ取り、求められた質のものを提出する必要があります。同時に、「適当にやっておいて」と頼まれた際は、自分なりに「正しい方法」を模索することも求められていると言えるでしょう。

「適当に生きる」は複数の意味にとれる表現

「適当に生きる」と言うと、まず思い浮かぶのが「いい加減に生きる」というやや投げやりなニュアンスでしょう。

例文
  • 何もかも面倒になり、適当に生きることにした
  • どうせいいことなんてないから適当に生きてやる

一方、同じような意味でも「その場に併せて要領よくやる」という意味に解釈することもできます。

例文
  • 肩肘張らずに適当に生きていこう

このように、前後の文脈に合った読み取りが求められます。

「テキトー」の表記は”いい加減”の意味のみ

「適当」は、漫画やコラムなどで「テキトー」とカタカナで用いられることがあります。このカタカナ表記の「テキトー」は、「いい加減」というニュアンスで使われています。語尾を伸ばしたフランクな話し方をそのまま文字にしたもので、その「緩さ・いい加減さ」を視覚的にも反映した表記です。たとえば、「テキトーに対応する」というと「いい加減に対応する」というニュアンスになります。

「適当」の類語とは?

類語「適切」との違いは”ぴったり”かどうか

「適当」と似た意味の単語に“適切”があります。「適切」とは、”よく適合している・ぴったりと当てはまる様”を意味する単語です。この「ぴったり」というニュアンスを含むのが、「適当」と「適切」の一番の違いです。

「適当な量」という場合はある程度の誤差を含む表現になりますが、「適切な量」というと「ちょうどよいぴったりの量」という意味になります。そのため、「ちょうどよい」「ふさわしい」というニュアンスを出したい場合には、「適切」の方が誤解が生まれにくいでしょう。

ビジネスの言い換えには「妥当」や「ぞんざい」が使える

「適当」と似た意味の単語には、“妥当”も挙げられます。「妥当(だとう)」とは、”よく当てはまっていること・適切であること”という意味の単語で、「適当」の言い換えとしても使える単語です。「この判断は妥当だ」のように、「正しく当てはまっている様」を表す際などに用いられます。似た意味の単語には「相応(そうおう)」などもあります。

また、「適当」を”いい加減・雑”の意味で使う場合には、「ぞんざい」と言い換えることができます。「ぞんざい」とは、”いい加減な様・投げやりな様”を表す単語です。「ぞんざいな扱いを受けた」などの表現が可能です。

「適当」の対義語とは?

「適当」の対義語は”不適当”

「適当」を反対の意味にする場合には、打ち消し・否定の”不”をつけて、「不適当」と表します。また、適度を超えたことを表す「過当」や適度に満たないことを意味する「過小」も、対義的な表現として挙げられます。

他にも、「不適(意味:適さないこと)」も「適当」とは反対の意味を持つ単語のひとつです。

「適当」の英語訳とは?

「適当」の英語訳は”fit”や”suitable”を使う

「程よく当てはまる」という意味の「適当」は、英語では“fit”“suitable”を用いて表現します。例えば、「He is not fit for the position.」は”彼はそのポジションには適当ではない”という意味です。また、「He should select a suitable person.」とすると”彼は適当な人材をえらぶべきだ”という意味になります。

「適当に・適切に」という意味の副詞”appropriately”を使い、「adjust the schedule appropriately(スケジュールと適当に調整する)」といった表現も可能です。

「いい加減」の意味を持つ英単語

一方、「いい加減」という意味で使われている「適当」は、次のような単語に英訳することができます。

  • random(でたらめな)
  • irresponsible(無責任な)
  • vague(曖昧な)

たとえば、「an irresponsible father」は「適当な父(無責任な父)」という意味で、「make a vague answer」は「いい加減な返事(曖昧な回答)をする」という意味となります。また、慣用表現として「This is going well(これは適当すぎる)」という表現もあります。

まとめ

「適当」とは、「程よく当てはまる様」「ほどよいこと」という意味と「雑・いい加減」という意味の主に2通りの意味を持つ単語です。会話では後者の「いい加減」というニュアンスでよく用いられますが、ビジネスシーンでは「程よい様」を意味する言葉としてもよく使われる単語です。前後の単語や文脈で意味を適切に読み取ることが求められます。